2020年1月26日日曜日

第264夜 競走馬のピークは思いの外早く訪れる、のか⁈


競走馬のピークが早まる
競走馬の競走能力はいつピークを迎えるのか。
学術的な研究や、その受け売りまで、わたしの印象では数多く論じられているように思う。
研究ソースの問題かもしれないが、競走能力のピークは、概ね、
(1)4
歳春から5歳春
(2)4
5
(3)4
56
(4)4.5

(5)4
歳秋
あたりに集約されるようだ。

わたしは未だ集計していないけれど、この議論のためには降級制度が廃止になった2019年を観察しないといけないと思っている。
実は以前から、「4歳秋」説には競馬番組の編成による影響があるのではないか、と考えていた。
3
歳馬が古馬戦に突入して冬には先輩を負かし始める。
一定数の古馬は降級しているために勝ちやすくなっているのだが、それでも通用しなくなる時期が冬であり、実際にはもっと早く3歳馬に負けているのでは、と感じていたのだ。
すなわち、「3歳馬に比べて未だ優勢な」4歳秋をピークとしているのは競馬番組の影響であり、馬のピークは4歳春またはそれ以前の可能性が捨てきれない、と思うのである。

そもそも降級制度は古馬に勝つチャンスを与え、引退を先延ばしにすることが目的である(と思う。主催者に聞いたわけではないけれど)
ワンランク下で対戦させて勝てる機会を作ろうということである。
引退を先延ばしすることで競走馬の数を確保することが必要だったのではないか。
したがって、降級制度の廃止は古馬の退場時期を早め、競走馬の入れ替えを促進する効果があると予想されるのだ。
ここでは競走馬のピークをテーマにしているが、古馬戦対策を再検討しなければならないほどの制度変更である。

▼古馬戦施行月別に集計した勝馬の年齢(2006-2018年平地競走)
勝馬年齢 3歳 4歳 5歳 6歳 7歳以上 月合計 3歳 4歳 5歳 6歳 7歳以上
1月 0 786 660 217 76 1,739 0.0% 45.2% 38.0% 12.5% 4.4%
2月 0 727 598 186 69 1,580 0.0% 46.0% 37.8% 11.8% 4.4%
3月 0 873 626 206 65 1,770 0.0% 49.3% 35.4% 11.6% 3.7%
4月 0 808 612 178 54 1,652 0.0% 48.9% 37.0% 10.8% 3.3%
5月 0 886 559 164 49 1,658 0.0% 53.4% 33.7% 9.9% 3.0%
6月 317 846 320 105 27 1,615 19.6% 52.4% 19.8% 6.5% 1.7%
7月 564 918 296 112 30 1,920 29.4% 47.8% 15.4% 5.8% 1.6%
8月 656 771 280 80 35 1,822 36.0% 42.3% 15.4% 4.4% 1.9%
9月 671 677 235 61 23 1,667 40.3% 40.6% 14.1% 3.7% 1.4%
10月 949 838 296 69 17 2,169 43.8% 38.6% 13.6% 3.2% 0.8%
11月 846 768 260 59 23 1,956 43.3% 39.3% 13.3% 3.0% 1.2%
12月 820 645 256 77 21 1,819 45.1% 35.5% 14.1% 4.2% 1.2%
合計 4,823 9,543 4,998 1,514 489 21,367 22.6% 44.7% 23.4% 7.1% 2.3%

古馬は降級制度によって下駄を履いていた、裏返せば古馬は基本的に若い馬たちに勝つのが難しいということなのだと考えている。
そうであれば、3歳馬が本格的に先輩を負かし始める冬よりも前に競走能力の完成があるのではないかと思うのである。

プレーヤーが退場していくゲーム
速度にせよ、賞金、勝率にせよ、能力を測る要素はレースからデータを得るため、2018年までの、ルール改正前のデータでは仮説を検証することが難しいように思う。
2019
年の成績データを研究するのが適切だろうが、勉強にもなるので一度2018年までのデータで仮説の検証を試みてみる。

正直なところ、この仮説に至る考えには別の、集計上の疑問があった。
例えば騎手の能力を年齢別に判定しようとした場合、30歳くらいまで急激に成長し、その後緩やかな成長曲線を描く。
だが、この計算には早々に引退する騎手も含まれている。
少なくとも40歳代半ばまで現役の騎手に絞れば成長曲線は変わってくるのである。
比較的上位の騎手が長く現役を続けるので、年齢が上がっても成績が向上してしまう。
したがって、実際のピークよりもずっと先にピークがあるように見えるのである。
馬も同様ではないか。

もう少し集計方法を工夫して、能力のピークを再検証するベきと思い、成長曲線を上下させる要因について考える。

先ず、未勝利のまま数戦で中央競馬平地競走を退場する馬は多い。
さらに3歳未勝利戦が終わる頃には大量の退場馬が発生する。
若い馬の成長は若竹のように著しいとは思う。
それに加えて「平均未満」の競走馬たちが集計から外れていけば平均点、ここでは「成長指数」はさらに上がっていることだろう。
一方、古馬戦で4歳以上との勝負ではワンランク上を含む馬との対戦であり、同じくらいの実力馬と対戦すれば冬か冬前には完全に凌駕している可能性がある。
ほかに斤量なども考えられるが、以上列挙した内容の影響を除外して集計できないか模索する。

馬体重
とりあえず、少なくとも8歳まで走る馬だけで集計することにした。
しかも牡馬だけに限る(騸馬は含む)
このブログ用のデータベースは、2006年から2018年までのデータセットで、2004年生まれ以降、2010年生まれまでの競走馬で少なくとも8歳まで平地競走を走った経験のある牡馬を抽出する。
地方に転厩後、或いは障害競走に転向後、8歳のときに再び中央競馬平地競走に走った馬も含む。
海外厩舎所属馬は除いた。
結果は僅か600余頭だった。
年齢は誕生日からカウントする「日齢」を30日で割った「月齢」を用いる。
この集計では25月齢から144月齢までで、107月齢以降件数が少ないために纏めることが多くある。

月齢 馬体重合計 件数 馬体重平均
25か月 2,672 6 445
26か月 11,848 26 456
27か月 22,618 49 462
28か月 52,116 111 470
29か月 72,712 155 469
30か月 85,232 182 468
31か月 113,200 239 474
32か月 121,018 256 473
33か月 144,088 304 474
34か月 167,446 354 473
35か月 186,686 395 473
36か月 189,210 400 473
37か月 195,492 415 471
38か月 181,076 384 472
39か月 154,980 328 473
40か月 130,484 276 473
41か月 145,340 306 475
42か月 153,596 323 476
43か月 159,714 335 477
44か月 170,466 357 477
45か月 168,322 351 480
46か月 164,126 341 481
47か月 158,304 330 480
48か月 157,170 328 479
49か月 159,744 333 480
50か月 182,586 380 480
51か月 162,576 338 481
52か月 142,404 297 479
53か月 143,384 299 480
54か月 163,804 341 480
55か月 167,960 347 484
56か月 184,248 380 485
57か月 191,814 394 487
58か月 172,312 356 484
59か月 167,580 345 486
60か月 171,620 354 485
61か月 165,524 343 483
62か月 169,924 353 481
63か月 160,142 332 482
64か月 155,876 323 483
65か月 131,992 274 482
66か月 125,652 261 481
67か月 167,290 345 485
68か月 164,606 339 486
69か月 174,974 358 489
70か月 173,790 355 490
71か月 175,896 359 490
72か月 168,256 345 488
73か月 163,982 338 485
74か月 139,474 288 484
75か月 147,928 305 485
76か月 132,456 274 483
77か月 136,484 281 486
78か月 140,452 289 486
79か月 153,900 318 484
80か月 174,358 357 488
81か月 172,148 352 489
82か月 175,654 358 491
83か月 146,712 299 491
84か月 156,130 318 491
85か月 145,188 296 491
86か月 137,214 281 488
87か月 134,646 276 488
88か月 127,366 261 488
89か月 124,026 255 486
90か月 123,048 252 488
91か月 116,846 241 485
92か月 133,828 273 490
93か月 141,420 288 491
94か月 155,220 317 490
95か月 147,908 299 495
96か月 140,980 287 491
97か月 141,428 288 491
98か月 117,500 240 490
99か月 96,860 198 489
100か月 80,858 166 487
101か月 61,030 126 484
102か月 66,376 136 488
103か月 57,828 119 486
104か月 54,110 111 487
105か月 55,718 114 489
106か月 49,354 101 489
107か月以上 0 0 0

何を集計するか、だが、手始めに馬体重を調べた。
出走時馬体重の平均は483kgだった。
全体の出走時馬体重の平均は470kgだから、「少しばかり重い」と言えるが、抽出馬が牡馬のみであることを考えるとほぼ平均並みと考えて差し支えない。
つまり、馬格と競走生命の長さには相関関係があまりというかほとんどないということだ。
(つづく)
(SiriusA+B)

2020年1月15日水曜日

第263夜 検証量の目安



▼ダイエット理論と予想理論
10人いれば10通りの予想理論がある、といわれる。

この話、真実のようで真実ではない。
正解が見つかっていないので(或いは存在しないので)、それぞれ独自に予想しているに過ぎない。

自信度には大きな差はあれど、他人の予想理論には批判的な人もいる。
これが五十歩百歩、目くそ鼻くそを笑う、といった状況なのだが、ふと、身近な「ダイエット理論」がたいへんよく似ていることに気がついた。
何とかダイエット法、というものが毎年いくつも登場し、流行してはやがて消え去ってゆく。
念のため申し上げておくが、流行させたいがために過激な理論になり、中には健康を害するものまであるから注意してほしい。

ダイエット法は競馬予想理論と異なり、正解が存在していて「運動量や代謝量など消費するエネルギー量に見合った食事量に抑えれば良い」とされる。

だが、少なくない人たちは、運動を嫌がり、食事制限を嫌がり、どうしてもラクをしたいので、目新しく「誰でも簡単に痩せられる」というダイエット法を試すのである。
ベテランの競馬ファンでも、予想作業を嫌がり、簡単に儲かるとされる方法に飛びついている人をよく見かけるだろう。
問題は、ダイエット法の運動量増加と食事制限の均衡と異なり、(少なくとも巷間には)正解が見つかっていないことである。
ただ、正攻法は見つかっていなくても「ラクをして儲かる」というのはあり得ないことくらいは分かるだろう。
競馬で儲けることは不労所得とも言えるが、長期的にはまったく何もしないで儲けることはできない。
むしろ、不労どころか相当な時間とエネルギーが必要だとさえ思え、その時間を仕事に割いた方がいいと思うくらいである。
「大儲けしたら競馬から足を洗うんだ」という人もいるけれど、わたしの周囲にいて豪語した者は1名の例外もなく、儲けられずに消えたか、未だ細々と競馬を続けているかどちらかだ。
射倖心に煽られて、偶然に期待するほど愚かな戦略はない。

努力は苦手なんだよな、という感想を持った人はいるだろう。
安心してほしい。
競馬予想の世界で、努力する人は非常に少ない。
少し努力しただけでも他者と差がつく。

▼発想と検証
大雑把に見て、努力不足の工程は「検証」であることが大きいと思う。
発想・着想はレベル差があるけれど、誰でもやっている。
発想力を磨いていくには、その発想が正しい(的中率が高い、回収率が高い、という意味で)かどうか検証する工程を必要としている。
次週以降のレースで実戦に使ってみるというのも間違いではないけれど、多大な出費と時間がかかるためあまりお勧めできない。
では過去のレースで検証しようとすると、なぜか面倒になる人が多いようだ。
まあ、そりゃそうだ、とは思う。
わたしだって面倒くさいもの。
したがってこの段階で脱落者が続出する。
それをやるのかやらないのか、が成功への第一の関門である。

検証量だが、1年分から数年分は必要だと思う。
ただし、「16か月分」といった中途半端な期間の取り方は推奨できないので、1年、2年、3年、4年、5(或いはそれ以上)という期間から選ぶことになる。
中央競馬では障害競走を含めて年間3,456からひとつふたつ少ないレース数があり(288日×12レース/)、平地競走は3,000レース以上ある。
わたしなら1万レース以上で検証したいと思うが、1年分の検証でもある程度結論は出る。

年単位にこだわるのは、シーズンを通して「必勝法」が変化しないか確認しておかなければならないからである。
日本ダービーが終わったら2歳戦が始まり、3歳馬は古馬戦に合流していく。
競馬番組と季節による変動もある。
G1馬が夏競馬に参戦しないように、出走馬の水準も時期によって違う。

「未勝利戦」も2歳の頃とクラシックが始まる時期では内容がまるで違う。
春を中心に騎手の新陳代謝もある。

残念なことに、こうした検証作業で多くのアイデアは、思ったほど素晴らしい発想でないことが分かる。
さらに次に進む人はグッと減る。
的中・不的中のレースにはどのような特徴・傾向があるのか、探っていくのが次の作業だ。
蛇足かもしれないが、次のことを参考にしてもらえれば幸いである。
ある予想法を試したとき、新馬・未勝利戦、1勝クラス、2勝クラスと上位条件戦になるほど的中率が下がるのは自然なことである。
上位条件戦になるほど、出走馬の実力差が小さくなる。
ちょっとした体調、得手不得手、レースのアヤなどで順位が入れ替わりやすくなるのだ。
そこがギャンブルたる所以である。
能力評価ができているかどうかは未勝利戦をよく当てられるようになれば分かるとも思う。
(SiriusA+B)

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