▼ダイエット理論と予想理論
10人いれば10通りの予想理論がある、といわれる。
この話、真実のようで真実ではない。
正解が見つかっていないので(或いは存在しないので)、それぞれ独自に予想しているに過ぎない。
自信度には大きな差はあれど、他人の予想理論には批判的な人もいる。
これが五十歩百歩、目くそ鼻くそを笑う、といった状況なのだが、ふと、身近な「ダイエット理論」がたいへんよく似ていることに気がついた。
何とかダイエット法、というものが毎年いくつも登場し、流行してはやがて消え去ってゆく。
念のため申し上げておくが、流行させたいがために過激な理論になり、中には健康を害するものまであるから注意してほしい。
ダイエット法は競馬予想理論と異なり、正解が存在していて「運動量や代謝量など消費するエネルギー量に見合った食事量に抑えれば良い」とされる。
だが、少なくない人たちは、運動を嫌がり、食事制限を嫌がり、どうしてもラクをしたいので、目新しく「誰でも簡単に痩せられる」というダイエット法を試すのである。
ベテランの競馬ファンでも、予想作業を嫌がり、簡単に儲かるとされる方法に飛びついている人をよく見かけるだろう。
問題は、ダイエット法の運動量増加と食事制限の均衡と異なり、(少なくとも巷間には)正解が見つかっていないことである。
ただ、正攻法は見つかっていなくても「ラクをして儲かる」というのはあり得ないことくらいは分かるだろう。
競馬で儲けることは不労所得とも言えるが、長期的にはまったく何もしないで儲けることはできない。
むしろ、不労どころか相当な時間とエネルギーが必要だとさえ思え、その時間を仕事に割いた方がいいと思うくらいである。
「大儲けしたら競馬から足を洗うんだ」という人もいるけれど、わたしの周囲にいて豪語した者は1名の例外もなく、儲けられずに消えたか、未だ細々と競馬を続けているかどちらかだ。
射倖心に煽られて、偶然に期待するほど愚かな戦略はない。
努力は苦手なんだよな、という感想を持った人はいるだろう。
安心してほしい。
競馬予想の世界で、努力する人は非常に少ない。
少し努力しただけでも他者と差がつく。
▼発想と検証
大雑把に見て、努力不足の工程は「検証」であることが大きいと思う。
発想・着想はレベル差があるけれど、誰でもやっている。
発想力を磨いていくには、その発想が正しい(的中率が高い、回収率が高い、という意味で)かどうか検証する工程を必要としている。
次週以降のレースで実戦に使ってみるというのも間違いではないけれど、多大な出費と時間がかかるためあまりお勧めできない。
では過去のレースで検証しようとすると、なぜか面倒になる人が多いようだ。
まあ、そりゃそうだ、とは思う。
わたしだって面倒くさいもの。
したがってこの段階で脱落者が続出する。
それをやるのかやらないのか、が成功への第一の関門である。
検証量だが、1年分から数年分は必要だと思う。
ただし、「1年6か月分」といった中途半端な期間の取り方は推奨できないので、1年、2年、3年、4年、5年(或いはそれ以上)という期間から選ぶことになる。
中央競馬では障害競走を含めて年間3,456からひとつふたつ少ないレース数があり(288日×12レース/日)、平地競走は3,000レース以上ある。
わたしなら1万レース以上で検証したいと思うが、1年分の検証でもある程度結論は出る。
年単位にこだわるのは、シーズンを通して「必勝法」が変化しないか確認しておかなければならないからである。
日本ダービーが終わったら2歳戦が始まり、3歳馬は古馬戦に合流していく。
競馬番組と季節による変動もある。
G1馬が夏競馬に参戦しないように、出走馬の水準も時期によって違う。
「未勝利戦」も2歳の頃とクラシックが始まる時期では内容がまるで違う。
春を中心に騎手の新陳代謝もある。
残念なことに、こうした検証作業で多くのアイデアは、思ったほど素晴らしい発想でないことが分かる。
さらに次に進む人はグッと減る。
的中・不的中のレースにはどのような特徴・傾向があるのか、探っていくのが次の作業だ。
蛇足かもしれないが、次のことを参考にしてもらえれば幸いである。
ある予想法を試したとき、新馬・未勝利戦、1勝クラス、2勝クラスと上位条件戦になるほど的中率が下がるのは自然なことである。
上位条件戦になるほど、出走馬の実力差が小さくなる。
ちょっとした体調、得手不得手、レースのアヤなどで順位が入れ替わりやすくなるのだ。
そこがギャンブルたる所以である。
能力評価ができているかどうかは未勝利戦をよく当てられるようになれば分かるとも思う。
(SiriusA+B)