2023年8月27日日曜日

第430夜 彼女は突然に


▼アイビスサマーダッシュの勝ち馬
2023
730日の新潟メイン競走アイビスサマーダッシュでは、オールアットワンス号が勝利した。
オールアットワンス号は前々年の2021年にも同レースを制しており、有馬記念のトウカイテイオー号になぞらえる人もいた。
前走が1年前のアイビスサマーダッシュで6着、以後休養し、1年振りの復帰がこのレースであった。
鞍上の石川由紀人騎手は前年、前々年もコンビを組んでおり、今回は急遽乗り替わりも好騎乗を見せて、このレースをドラマチックに仕立てた。
レースは18頭フルゲートで、単勝は9番人気39.2倍、複勝は12番人気9.7倍と、前々年に勝っている割には穴馬評価と言っても言い過ぎではなかった。
1
番人気が3.9倍、上位6頭が10倍未満の混戦ではあった。

このレース、レース映像とパトロールフィルム、インタビューのほか、JRAYouTubeに石川騎手ではない3人のジョッキーカメラ映像を公開しているので、競馬の研究にもおススメである。
ここでは、前々年覇者にも関わらず、9番人気となった要素を考えていきたい。

▼そもそも実力馬
ネット上にある、買った、買えた、買えなかったというコメントを拾い出していくと、次のようなものが挙げられていた。
(1)
内枠
2
3番と内枠で、アイビスサマーダッシュ(新潟芝直線1000)では外枠有利である。
(2)
斤量
2021
年が51kgで優勝、2022年が54kg6着、2023年は55kg
(3)
休養明け
2022
年の同レース出走後、長期休養し、今回が久々の復帰戦である。
(4)
馬体重
18kg
増であった。
他馬の評価はともかく、この4点がマイナス材料のようである。
牝馬で5歳、ピークを過ぎた、というのも、これに加えてもいいだろう。
最終的に勝ったのだから、これらマイナス要因を一蹴したと言えるのだが、結果論ではあるけれどマイナス要因としては少々弱い根拠だったかもしれない。
レースの内枠外枠の有利不利は微々たるもので、馬の取捨選択材料になるか、わたしには懐疑的である。
斤量(負担重量)2023年からルール改正により増えた(これについては今後記事にしたい)
2021
年の51kg2022年の54kg2023年の55kgとも、レースで最も軽い斤量である。
オールアットワンス号はデビュー当初430kgの軽量馬だった。
少しずつ増え、今回は18kg増の476kgと牝馬にしては平均程度の馬体重になった。
いわゆる「カンカン負け」がなさそうであれば、斤量55kgでも問題ないと考えてもよかった。
馬体重も1年前との比較であり、短期的な増減ではなく、また増加していることから、成長分として割引材料にする必要はなかった。
休養明けについては、確かに1年振りだから不安材料として挙げるのは無理もない。
同馬は軽い故障で休養入りしていた。
今回は上手くいった、だけとも考えられる。
ただ、下馬評で、調教の動きが良かったことは評価されていた。
同馬は新馬戦を1番人気で優勝し、2戦目のオープン特別を連勝した実力馬である。
前年の故障にも関わらず、繁殖のために引退もせず、地方転厩もせずに復活を待った。
ノーザンファーム生産の馬で、復帰に向けて乗り込まれてきたことも間違いなく、鉄砲駆けする可能性は高かった。
単体で検討すれば、わたしから見て大きなマイナス材料はなさそうである。

▼他馬との比較
では、他の出走馬と比較してみよう。
初っ端から身もふたもないことを言うが、賞金総額を出走回数で除した平均賞金で、オールアットワンス号は、出走馬中、第2位であった。
1位の馬(後ほど出てくる)が力上位であることは間違いなかったものの、初の新潟、初の芝1000m、初騎乗、最高斤量58kg(さらに言えば平均よりやや軽量馬)で、割引材料の多い出走条件になっていた。
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年ぶり出走のオールアットワンス号も不安とみるか、勝ち敗けになるとみるか、判断次第で狙える馬券であった。
ここでは、それ以外の要素で狙えるかどうか、考えたい。

最初に性別と馬齢、斤量を見る。
別定戦だったが、トップハンデの格上実績馬以外は、牡馬が57kg、牝馬が55kgであった。
別定戦というのはハンデ戦ほどではない、「軽いハンデ戦」で、このレースでは斤量面で1頭だけ実力上位とみなされたということである。
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歳馬の出走はなく、7歳以上のベテラン馬は2頭に過ぎず、牝馬が10頭いるのが特徴だった。
(
図表430-1)出走馬の性別・馬齢・斤量
馬番 馬名 性別馬齢 斤量
6 ジャングロ 牡4歳 58
5 バンデルオーラ 牡4歳 57
11 メディーヴァル 牡5歳 57
13 ヴァガボンド 牡5歳 57
2 ロードベイリーフ 牡6歳 57
7 チェアリングソング 牡6歳 57
1 スワーヴシャルル 牡7歳 57
8 ライオンボス 牡8歳 57
4 ロサロッサーナ 牝4歳 55
12 ヤマトコウセイ 牝4歳 55
3 オールアットワンス 牝5歳 55
14 スティクス 牝5歳 55
15 マウンテンムスメ 牝5歳 55
16 ファイアダンサー 牝5歳 55
9 サトノファビュラス 牝6歳 55
10 トキメキ 牝6歳 55
17 シンシティ 牝6歳 55
18 レジェーロ 牝6歳 55
牡4歳 2
牝4歳 2
牡5歳 2
牝5歳 4
牡6歳 2
牝6歳 4
牡7歳 1
牡8歳 1

馬体重に注目すると、前走時点でも構わないが、重量順では8歳馬が最も大きく、次いで3頭の牝馬が続く。
(
図表430-2)出走馬の馬体重、前走馬体重
馬番 馬名 馬体重 降順 前走馬体重 降順
8 ライオンボス 538 1 548 1
10 トキメキ 514 2 516 2
4 ロサロッサーナ 512 3 512 3
14 スティクス 504 4 504 4
13 ヴァガボンド 490 5 488 5
1 スワーヴシャルル 476 8 480 6
17 シンシティ 482 6 478 7
2 ロードベイリーフ 480 7 478 7
7 チェアリングソング 474 9 472 9
5 バンデルオーラ 470 11 472 9
11 メディーヴァル 470 11 470 11
12 ヤマトコウセイ 464 14 466 12
6 ジャングロ 468 13 464 13
16 ファイアダンサー 462 15 458 14
3 オールアットワンス 474 9 456 15
15 マウンテンムスメ 456 16 454 16
9 サトノファビュラス 438 17 446 17
18 レジェーロ 428 18 424 18

ここで、新潟芝直線1000mの実績を比較する。
ここでも8歳馬が4勝と実績を挙げているが、同馬を含めて当該条件で勝鞍を挙げた馬は6頭だった。
参考として、冒頭に触れた「平均賞金額」を併載する。
結局のところ、オールアットワンス号の買い材料は、平均賞金という側面からの実績上位と競走条件の勝利実績くらいであった。
(
図表430-3)競走条件実績と、平均賞金額
馬番 馬名 当該条件 賞金総額 出走回数 平均賞金
8 ライオンボス [4-3-0-5] 162,087,000 28 5,788,821
4 ロサロッサーナ [2-0-0-2] 20,200,000 15 1,346,667
15 マウンテンムスメ [1-1-0-3] 82,738,000 26 3,182,231
10 トキメキ [1-0-1-3] 91,506,000 30 3,050,200
3 オールアットワンス [1-0-0-2] 78,428,000 10 7,842,800
11 メディーヴァル [1-0-0-0] 80,031,000 26 3,078,115
17 シンシティ [0-1-1-2] 78,305,000 17 4,606,176
2 ロードベイリーフ [0-1-1-1] 100,252,000 35 2,864,343
16 ファイアダンサー [0-1-0-2] 66,515,000 24 2,771,458
1 スワーヴシャルル [0-0-1-1] 111,261,000 27 4,120,778
12 ヤマトコウセイ [0-0-1-0] 47,298,000 14 3,378,429
14 スティクス [0-0-0-3] 54,236,000 18 3,013,111
18 レジェーロ [0-0-0-3] 78,331,000 25 3,133,240
7 チェアリングソング [0-0-0-1] 87,132,000 31 2,810,710
13 ヴァガボンド [0-0-0-0] 48,906,000 14 3,493,286
5 バンデルオーラ [0-0-0-0] 39,563,000 11 3,596,636
6 ジャングロ [0-0-0-0] 102,174,000 9 11,352,667
9 サトノファビュラス [0-0-0-0] 68,761,000 22 3,125,500

▼適性、というか実績
買い材料とされたもののうち、にわかに信用できないものがあった。
「芝直線1000のスペシャリスト」とか、「過去に同じレースを制している」といった点である。
いずれも実績があり事実だが、過去3勝のうち1勝だけが新潟芝直線で、このレースであっただけである。
前年は6着に敗れていることも事実で、この点を不問にして買い材料というのはいかがか、と多くの予想者が考えただろう。
実際、買い材料が弱くて9番人気に落ち着いた、と考えられる。
しかし、同一レースというのは置いておき、新潟芝直線で勝利した経験があるというのは、当該競走条件の勝率、つまり敗けを含む実績を除外しても良いときがある。
当該競走条件のレースが少ない場合には、良績を重視するのも悪くはないのである。
この点は、オッズの評価以上に勝つ可能性、すなわち、多くの予想者が過小評価した可能性があった。
今夜のポイントはまさに上の3文で集約できるのに、延々と遠回りしてしまった。
数の少ないレース、特に古馬戦では、意外に重宝する戦術だ。
憶えていて損はない。

と忘れていた。
オールアットワンス号は突然に躍り出たわけではなく、比較的可能性の高い必然だった、というオチで締めくくるつもりだったのだった。
要するに、話が逸れた。

(SiriusA+B)

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