2019年2月24日日曜日

第231夜 ダートコースの馬場適性というのはほんとうにあるのか(2)


馬体
前夜からダートレースの馬場適性をマクロ的に調べている。
その続きである。
不良馬場にもなると、先行馬有利のバイアスがやや強めになるというのが前夜の要点である。
湿った馬場状態を得意とする馬場適性は見つかっていない。
「マクロ的に」というのは、出走馬全体から条件に合うものを抽出して傾向を調べる方式をいう。

ところで、馬体を切り口にすれば馬場状態別に特徴が表れるかも集計してみた。
馬場状態別に勝馬全馬分データを掴めるのは馬体重くらいしかないのだが、これには少々驚いた。
どの馬場状態の勝馬でも、平均馬体重はあまり変わらないのである。
稍重と不良馬場で479kg、良馬場と重馬場で481kg
2006-2014
年の9年分で、良馬場以外のサンプル数は決して多くないとはいえ、「大差なし」という調査結果は、「湿った馬場状態では軽量馬が活躍する」という一般的な概念を打ち破るものだ。
確かに2kgほど違うと見る手もあるけれど、重馬場481kgの説明ができなくなるため、やはり「大差なし」という結論に至るのである。
馬場適性の視点では、ここでも特徴的なものは見つからなかった。

能力或いは実力という点では差が
馬体重を調べたついでに、勝馬の生涯(正確にはデータの期間中)での平均獲得賞金額に差異が出ないかも確認した。
馬場状態別に集計すると、これには明確な傾向がみられた。
下表のように、良、稍重、重、不良の順に1走あたりの平均獲得賞金は下がっていく。
生涯平均勝利数も生涯平均出走数もほぼ同じであることから、「不良馬場の勝馬の実力は、良馬場の勝馬よりやや下」とみる手もある。
わたしは「それぞれの馬に得意の馬場状態があって、その出現率の差が反映されているのではないか」と仮定してみた。
ところがもうひとつの表、各馬場状態別勝利馬が生涯で挙げた勝利を馬場状態別に分けてみたところ、ほぼ同じようになった。
不良馬場勝馬の、不良馬場での生涯勝利割合が一番低いのには苦笑した。
不良馬場で勝ったからといって必ずしも不良馬場が得意なわけではないようである。
このことや生涯勝利数との結果から、不良馬場での勝馬は多分に運の良さが含まれていると思うに至った。

他の馬場状態での勝利実績
良 割合 稍 割合 重 割合 不 割合
6,614 1,624 1,049 669 66% 16% 11% 7%
1,624 376 258 155 67% 16% 11% 6%
1,049 258 178 111 66% 16% 11% 7%
669 155 111 52 68% 16% 11% 5%
合計 9,956 2,413 1,596 987 67% 16% 11% 7%

マクロ的なアプローチでの分析まとめ
前夜から2回にわたりダート競馬の馬場状態をマクロ的なアプローチで調べてみたが、馬場適性を見つけ出すことはできなかった。
まとめてみると、
1)
全体としては馬場適性というものはなさそう
2)
レースはやや先行有利が強まるが、人気馬の勝率への影響は僅か
3)
馬体重からみた馬場適性としては思ったほど見出せない
4)
不良馬場では多少レースのアヤで勝つ馬がいるようだが、必ずしも不良馬場が得意というわけではなさそう
となる。
わたしは、「馬場適性はあまり気にするほどではない」という調査前の考えを改めることはないと思っているが、馬場適性の正体を明らかにできないのも悔しい。
そこで改めて湿った馬場で良績のある馬の属性から再調査を試みることにした。
実際に、湿った馬場を得意とする馬は実在する。
ふだん個々の馬を分析したりしないのだが、血統上の特徴など見落としがないか、わたしなりに点検したい。
今、その調査を開始したところである。
次の夜の報告は番外編のつもりだったが、意外な結果が待っていた(煽ってどうする笑)
(SiriusA+B)

2019年2月17日日曜日

第230夜 ダートコースの馬場適性というのはほんとうにあるのか(1)

▼ダート良馬場は全レースの3分の2に過ぎない
ふだんのわたしは馬場状態を気にしていないけれど、予想の要素として重用する向きもあるので、少し綴っておきたいと思う。
サンプルの少ない芝コースについては今後の課題とし、今夜はダートコースに絞って調べることにする。

馬場状態とは馬場の含水率により区分されるものである。
中央競馬では、良、稍重、重、不良の4区分で、芝の場合は時計がかかるようになり、ダートでは時計が速くなることが広く知られている。
4区分は主催者により「総合的に判断」されるもので含水率は参考にすぎないようである。

芝コースでは競馬場ごとに基準も若干異なるらしく、厳密なものというより目分量に近いとみてよいだろう(厳密だったらすみません)

そもそも論で申し訳ないが、馬場状態別割合をご存知だろうか。
わたしは、良馬場以外の馬場状態など少ないものと思っていたけれど、調べてみると意外にあった。
こうした思い込みは厳に慎むべきであるが、この記事を書くまで調べたことがなかった。

下表のように、2000年から2018年までの19年間という膨大な期間で調べてみた。
芝コースは31,366レース、ダートコースは31,743レースに及ぶ。
このうち良馬場で行なわれたのは全体の75%だった。
4分の3は良馬場だったのである。

さらに、芝とダートに分けて調べてみると、芝コースでは83%が良馬場である一方、ダートコースでは66%に過ぎないことがわかる。
ダートコースでは湿り気のある馬場状態がそれほど珍しくないのだ。
いや、珍しくないどころか、普通のことと言っても良い。
1 馬場状態別割合


コース区分 レース総数
31,366 26,090 3,470 1,312 494
100% 83% 11% 4% 2%
ダート 31,743 21,007 5,319 3,232 2,185
100% 66% 17% 10% 7%
平地競走計 63,109 47,097 8,789 4,544 2,679
100% 75% 14% 7% 4%
▼馬場適性
極度に過敏な反応は必要ないと思うが、良馬場でないことが「ふつう」であるから、馬の向き不向きを論じる人が多いのもわかるような気がする。
馬場適性(いつも言うけど「適正」は違うと思う)というが、適性の理由を血統や体格、馬の根性などに求めるネット記事をよく見かける。
わたしは、馬場適性ってほんとうにあるのか、少し懐疑的である。
天候の前に出走するレースを決めるので、適性をもとに戦略を立てているわけではないだろう。
ならば、生産者も調教師も「不良馬場専門」みたいな馬を作る必要はないと思うのである。
今夜はその裏付けとなる(ならないかもしれないが)データを作成してみた。
データ2006-2014年の期間にダート競走14,944レース、同着馬10頭を含めた延べ14,954頭の勝馬から、ダート競走完走回数20走以上の延べ7,158頭をその対象にした。
1頭ずつではなく、マクロ的なアプローチであるが、見事に「馬場適性」が見つからなかった。

僅かな差異はあるけれど、馬場適性は決定的な要素には見えなかったのである。
調査結果を次項以下に示す。

▼人気に応えているか
まず、ダート完走20走以上のダートレース勝馬(以下対象馬という)延べ7,158頭が、人気に応えているか、馬場状態別に調べたのが下表である。
分かりやすいが、上位人気の勝率は馬場が悪化していってもそれほど変わらない。
いや、不良馬場では約1ポイントとはいえ下がっている、と反論されるかもしれない。
実際そのとおりだが、もうひとつの表を見てほしい。
馬番別の勝利数と割合を集計したもので、内枠がどれだけ有利かを示す。
この表によれば、不良馬場では他の馬場状態に比べて内枠有利が顕著である。
馬番によるバイアスがやや強めになっていると思われ、このあたりが人気馬の勝率に影響を及ぼしているのだろう。

2 人気別勝率

3 馬番別勝利数・割合

馬場状態 1番人気 2番人気 3番人気 4番人気以下 合計 1番人気 2番人気 3番人気 4番人気以下
1,538 879 643 1,632 4,692 33% 19% 14% 35%
391 210 167 411 1,179 33% 18% 14% 35%
252 141 105 270 768 33% 18% 14% 35%
165 98 83 173 519 32% 19% 16% 33%
合計 2,346 1,328 998 2,486 7,158 33% 19% 14% 35%

馬場状態 馬番01 馬番02 馬番03 馬番04 馬番05 馬番06 馬番07 馬番08 馬番09 馬番10 馬番11 馬番12 馬番13 馬番14 馬番15 馬番16 合計
313 336 290 336 332 353 331 333 328 339 292 287 243 197 230 152 4,692
74 88 61 85 72 75 91 105 85 88 70 69 72 62 45 37 1,179
42 43 56 53 58 50 52 49 46 66 52 47 40 46 39 29 768
45 41 38 41 27 37 42 33 46 28 26 34 26 19 19 17 519
合計 474 508 445 515 489 515 516 520 505 521 440 437 381 324 333 235 7,158
馬場状態 馬番01 馬番02 馬番03 馬番04 馬番05 馬番06 馬番07 馬番08 馬番09 馬番10 馬番11 馬番12 馬番13 馬番14 馬番15 馬番16
7% 14% 20% 27% 34% 42% 49% 56% 63% 70% 76% 82% 88% 92% 97% 100%
6% 14% 19% 26% 32% 39% 46% 55% 62% 70% 76% 82% 88% 93% 97% 100%
5% 11% 18% 25% 33% 39% 46% 52% 58% 67% 74% 80% 85% 91% 96% 100%
9% 17% 24% 32% 37% 44% 52% 59% 67% 73% 78% 84% 89% 93% 97% 100%
合計 7% 14% 20% 27% 34% 41% 48% 56% 63% 70% 76% 82% 88% 92% 97% 100%

▼先行有利
馬番別のデータでも裏付けられるが、内枠有利、先行馬有利は他のデータにも表れている。
4,5は対になるデータで、勝馬の、上がり3ハロン(600m)の速さとゴール手前600mの通過順位別割合を集計している。
どう解釈してもらってもいいが、「不良馬場では逃げや先行が通常以上に有利」ということだけは一致した見解になるだろうと思う。
この時点では「馬場適性」を匂わせるデータにはぶつかっていない。

4 ゴールから600m手前の通過順位別勝馬の割合

5 上がり3ハロンの速さ別勝馬の割合


馬場状態 前半1位 前半2位 前半3位 前半4位以下 合計 前半1位割合 前半2位割合 前半3位割合 前半4位以下割合
1,118 698 595 2,281 4,692 24% 15% 13% 49%
294 159 140 586 1,179 25% 13% 12% 50%
164 114 107 383 768 21% 15% 14% 50%
150 76 72 221 519 29% 15% 14% 43%
合計 1,726 1,047 914 3,471 7,158 24% 15% 13% 48%

馬場状態 後半1位 後半2位 後半3位 後半4位以下 合計 後半1位割合 後半2位割合 後半3位割合 後半4位以下割合
2,001 1,022 636 1,033 4,692 43% 22% 14% 22%
526 266 155 232 1,179 45% 23% 13% 20%
325 174 98 171 768 42% 23% 13% 22%
219 101 79 120 519 42% 19% 15% 23%
合計 3,071 1,563 968 1,556 7,158 43% 22% 14% 22%

(SiriusA+B)

2019年2月10日日曜日

第229夜 人気薄でも完全に盲点の馬とは限らない

▼単勝オッズから人気薄の馬を分析する
前夜には単勝オッズを題材に記事を書いたが、ついでにもうひとつ話題を提供したい。
競馬はギャンブルであり、いつも能力通りの結果になるわけではない。
だからこそギャンブルなのだが、理不尽な結果ばかりだと人心も離れる。
人気薄の馬でも、競馬解説者が「後付け」でいいから理由をつけられなければ困るのである。
そう考えると、「勝ってもおかしくない馬」と「あり得ない馬」はいる。
そこで単勝オッズをもとに、「勝ってもおかしくない馬」とはどういう馬か考えてみたいと思う。
見どころはどんなものかを追求するのはとても難しい作業だと思うのだけれど、見どころがあるかどうかという投票者の期待の量だけなら、何となくわかると思う。

わたしは目安用として完走頭数別の「単勝人気別標準オッズ」を整理している。
完走馬のみで出走馬数ではないため、多少のイレギュラーがある不完全なデータだが、意外に重宝している。
この表だけ見れば「何の役に立つのか」と思う方もいるだろうが、これを使って人気の偏りを調べるのである。
特に面白い事実は、1番人気・2番人気は頭数が増加するに伴い、オッズも高くなっていくが、3番人気・4番人気はほぼ横ばい、5番人気以降となるとむしろ倍率が下がっていくということである。
▼頭数別標準オッズ
人気 10頭 11頭 12頭 13頭 14頭 15頭 16頭 17頭 18頭
1 2.3 2.4 2.5 2.5 2.6 2.7 2.8 2.9 3.0
2 4.2 4.3 4.3 4.4 4.6 4.6 4.7 4.8 4.9
3 6.4 6.4 6.4 6.5 6.6 6.6 6.7 6.9 6.8
4 9.6 9.6 9.5 9.3 9.3 9.4 9.3 9.3 9.4
5 14.1 13.7 13.5 13.1 12.9 12.9 12.6 12.4 12.5
6 21.7 19.9 18.9 17.9 17.3 17.3 16.9 16.2 16.3
7 33.2 29.2 27.1 25.1 23.9 23.5 22.7 21.6 20.8
8 52.8 45.0 39.4 36.1 33.2 31.7 30.4 28.4 27.1
9 84.4 69.9 58.6 52.4 46.5 43.6 40.9 37.4 34.9
10 140.8 107.6 85.9 75.0 65.7 60.1 55.6 47.7 45.6
11 173.8 130.1 106.6 92.5 82.3 75.0 63.6 59.2
12 203.5 155.8 128.5 111.6 100.1 83.4 76.9
13 230.6 181.0 151.7 132.0 108.1 99.0
14 263.5 206.0 173.8 139.1 126.1
15 287.9 229.7 180.6 160.8
16 316.6 233.0 203.2
17 315.8 256.8
18 341.2

この表をもとに、勝利した馬たちの単勝オッズと完走頭数別人気別で示された標準オッズとを比較してみた。
その結果、勝利した馬たちの3分の2が標準オッズよりも低い、すなわち人気が高かった。
勝馬の標準オッズ比 頭数 比率
標準より人気が高かった馬 20,032 66.9%
標準より人気薄だった馬 8,398 28.1%
さらに詳細に分析してみると、人気薄になるほどその傾向が高まり、9番人気以降ともなれば8割以上の「穴馬」たちは標準オッズより高い人気であった。
もしも、人気薄の馬を選別して穴馬探しをしようとするなら、ヒントにしてもらえればと思う。
勝馬の人気 標準より人気馬 標準より人気薄馬 合計 人気馬の比率
1 5,775 3,190 8,965 64%
2 3,670 1,654 5,324 69%
3 2,678 1,095 3,773 71%
4 1,947 741 2,688 72%
5 1,501 541 2,042 74%
6 1,227 398 1,625 76%
7 898 268 1,166 77%
8 675 184 859 79%
9 516 118 634 81%
10 372 71 443 84%
11 304 47 351 87%
12 190 28 218 87%
13 131 28 159 82%
14 67 20 87 77%
15 46 9 55 84%
16 27 4 31 87%
17 6 1 7 86%
18 2 1 3 67%
(SiriusA+B)

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