2021年4月4日日曜日

第323夜 ひと口馬主募集価格


▼馬の値段
モヤモヤしている案件がある。
かなり多くの競走馬について、わたしたちは取引価格を知ることができない。
市場取引は全体に占める比率が低い。
ひと口馬主募集価格も同様に、全体の1割にも満たない。
馬の値段は出走前の見立てであるからできればこれを競馬予想に利用したいのだが、わたし自身は未だ採り入れる方法を模索している。

ひと口馬主募集価格総額に絞っていうと、個体の差異はあるものの、概ね募集価格総額は競走馬の成績と正の相関関係がある。
具体的に相関を確認したいと思い、このブログには書けないほどの調査をした。
1頭ずつ丹念に調べ上げていくのにはずいぶん時間をかけた。

参考情報だが、価格は需給(需要と供給)で決まるから、もし貴方が精緻な分析を試みられるなら価格の評価にあたってはこれを考慮することが望ましいと思われる。

すなわち、募集価格総額が同じ2,000万円でも、2017年産と2019年産では価値が違う。
ここでは、生年ごとに出走にこぎつけた馬の価格を平均し、その平均比を用いた。
2017年の平均が1,500万円、2019年が1,600万円とすれば、2,000万円の馬は2017年産が1.33(2,000/1,500)2019年産が1.25となる。

今回の分析だとここまで細かくしないので、両馬は1.3或いは1だが参考のため申し上げた。

▼図表323-1年度別平均募集価格

生年 頭数 平均募集価格
2003年 469 23,104,350
2004年 539 20,549,109
2005年 570 21,001,053
2006年 532 21,845,508
2007年 497 21,797,867
2008年 468 21,101,389
2009年 502 21,649,522
2010年 489 22,249,652
2011年 486 22,155,453
2012年 455 24,385,231
2013年 443 25,638,781
2014年 378 26,824,444
2015年 427 30,806,651
2016年 323 28,312,322
合計 6,578

さて、各馬で平均価格との比を算出して、一定の期間(2006-2018)の獲得賞金平均を一覧にしたのが下表である。
母集団の厚いところは細分化した。
小数点以下を四捨五入して、平均価格比7倍以上、6倍、5倍…2倍とし、1倍台は0.2刻みに5分割した。
表をグラフにしていただければ一目瞭然で、獲得賞金は馬の値段どおりである。
当たり外れはそれぞれあるけれども、概ね募集価格は正当と言えよう。

▼図表323-2 募集価格比別平均獲得賞金及びその平均比

平均募集価格比 該当頭数 平均獲得賞金 獲得賞金平均比
7 7 8,080,092 5.02
6 5 7,026,660 4.37
5 27 6,476,808 4.03
4 50 5,362,226 3.33
3 148 4,297,657 2.67
2 710 2,989,051 1.86
1.4 189 2,419,887 1.5
1.2 462 1,947,052 1.21
1 653 1,559,152 0.97
0.8 1,001 1,532,150 0.95
0.6 1,586 1,193,790 0.74
0.4 747 1,021,957 0.64
0 993 731,048 0.45
合計/平均 6,578 1,609,053

▼実戦投入には課題山積
ひと口馬主募集価格総額は能力の予測に適しているのだけれど、競馬予想に取り込むのは簡単ではない。
1に、データ不足である。
全体出走件数の1割に満たない。
そのほかの馬にも比定したいのだが、数が少な過ぎて難しいのだ。
すべてのレースに1頭は出走してくれるくらいでないと比定の作業は仮定に仮定を重ねざるを得ず、精度の低いものになってしまう。
さらに第2の問題が頭を擡(もた)げる。
個体差が大き過ぎるのである。
ご存知のとおり、話題の高額馬がさっぱり、ということは少なくない。
高額馬は満遍なく良績をあげるわけではなく、G1を勝つ馬も入着もままならない馬もソコソコいる。
体質の弱い馬、怪我の可能性の発生確率は、馬の値段とあまり関係がない。
ただ、こうした課題を乗り越えられるようなら有力な武器になり得るので早々に諦めるのは惜しい。
(SoriusA+B)

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