2022年10月16日日曜日

第390夜 馬は経験を積んで強くなる


▼経験値の積み上げを考慮しないと説明できない
人間と同様に、競走馬もレース経験を積む。
予想ファクターを固定して観察すると、それが浮き彫りになる。
図表390-1は、わたしの血統グループファクターのみで予想した場合の、単勝すなわち本命馬の勝率を時期別にまとめたものである。
戦歴の少ない新馬戦と未勝利戦のみを対象とした。
血統グループファクターは、いわゆる「固定的なデータ」ではない。
これまでこのブログで記事にしたとおり、父・母・母父3系統の成績を使って作成したもので、ここでは詳細を省略するが、簡単に言えば3系統の勝率の移動平均を合成したものである。

「ダービーに始まり、ダービーで終わる」シーズン構成になっているので、2歳の6月から新しい世代がデビューする。
表をご覧いただければ一目瞭然だが、シーズン開始当初は、血統グループファクター単体で勝率約15%を叩き出すが、1年経過すると10%くらいに下がってくる。血統ばかりが「天賦の才」ではないけれど、経験値が蓄積されるに従い、「天賦の才」の勝因に占める割合が相対的に減少することを、このデータは示唆している、とわたしは見ている。
表にはないが、未勝利戦を除いた、このファクターによる2歳新馬戦の勝率は16%3歳新馬戦は15%ほどだから、この示唆を裏付けている。
もちろん、1-3戦で天賦の才がある馬たちが勝ち抜けていき、「天賦の才がふつうの馬」たちによる混戦に移り、相対的に勝因に占める血統の割合が減少するという見方もできよう。
そうだとしても、混戦から頭ひとつ抜け出すのは、やはり経験値の付加があるのではないだろうか。
参考までに図表390-2を用意した。
種牡馬3頭の月別戦績の推移である。
いずれも、勝率のグラフを描けば右肩下がりになるが、勝利回数(新馬・未勝利戦だから勝利頭数と同じ)や出走回数も併せて見てほしい。
読み取り方は人それぞれだが、シーズン半ば以降は天賦の才だけで勝因の説明をするのは無理がある、とわたしは思う。

(
図表390-1)新馬戦、未勝利戦の血統グループファクターによる予想の勝率変化(2016-2021)。凹凸を減らすため、前後のデータを合わせて算出した数値が「円滑化」の数字

時期 勝利件数 出走件数 勝率 円滑化
2歳戦6月 39 278 0.140 0.144
2歳戦7月 76 523 0.145 0.152
2歳戦8月 100 616 0.162 0.156
2歳戦9月 104 654 0.159 0.156
2歳戦10月 144 958 0.150 0.156
2歳戦11月 164 1,032 0.159 0.147
2歳戦12月 133 1,000 0.133 0.143
3歳戦1月 138 1,010 0.137 0.129
3歳戦2月 112 954 0.117 0.121
3歳戦3月 117 1,069 0.109 0.103
3歳戦4月 82 1,001 0.082 0.094
3歳戦5月 89 984 0.090 0.087
3歳戦6月 79 883 0.089 0.090


(図表390-2)父馬3頭の月別新馬・未勝利戦戦績(図表390-1の集計データから抽出したもの)

父馬 ディープインパクト キングカメハメハ ロードカナロア
項目 勝利 出走 勝率 勝利 出走 勝率 勝利 出走 勝率
2歳戦6月 22 56 0.393 3 38 0.079 8 49 0.163
2歳戦7月 17 74 0.230 10 81 0.123 14 84 0.167
2歳戦8月 32 142 0.225 17 96 0.177 14 89 0.157
2歳戦9月 39 138 0.283 14 119 0.118 11 106 0.104
2歳戦10月 70 269 0.260 36 215 0.167 26 188 0.138
2歳戦11月 86 359 0.240 36 275 0.131 24 195 0.123
2歳戦12月 65 328 0.198 26 288 0.090 31 233 0.133
3歳戦1月 67 326 0.206 40 340 0.118 17 188 0.090
3歳戦2月 66 378 0.175 34 312 0.109 20 208 0.096
3歳戦3月 42 355 0.118 35 350 0.100 17 217 0.078
3歳戦4月 48 334 0.144 32 317 0.101 21 195 0.108
3歳戦5月 56 401 0.140 40 381 0.105 20 229 0.087
3歳戦6月 37 328 0.113 25 341 0.073 17 196 0.087


▼努力も才能
人間もそうだが、先天的な天賦の才というものは少なからずある。
だが、それだけではないということも、一方ではある。
これを「努力」という。
努力も才能である。
努力できる能力が、より高みに近づけていく推進力になる。
成功した人が、他の分野であってもやはり成功するだろうと思うのは、この後天的な才能である。
競走馬でも、生産の次に、育成がある。
馴致、調教などで、競走馬自身の意欲は無くても、如何にうまく努力させるか、生産者や厩舎の力がモノを言ってくる。
調教師のファクターなんて要るのか、という人は、外形的に捉えているだけかもしれない。
馬は勝手に走らないし、飼い葉を食べて過ごしているわけではない。
時代が変わってきたけれども、調教師の成績の差は、単に能力ある馬を連れてくるだけではないのだ。
調教師については、いずれ綴るつもりである。
(SiriusA+B)


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