▼y=0.75xを飛び越える
算式で表わせば、
的中率×的中オッズ=0.75(回収率)
というのが、一般的な競馬投票の収支であると思う。
多くの馬券投票者はこの算式か、この算式の描く曲線付近にいる。
的中率と的中オッズの関係を示したものに出会うと、こういう式になっている。
的中率をx(ただし、x>0)、的中オッズをyとおくと、y=0.75/xという反比例(でいいんだっけ)である。
0.75は0.8でも0.7でもいいけれど、貴方の馬券術がこの算式の曲線上にいる限り、黒字収支になることはできない。
試行回数が充分な数になれば、この曲線に乗る。
ここで、y=1/xの曲線をy=0.75/xと一緒に描いてみる。
馬券術は、この新しいほうの曲線に乗せるものでなければならない。
aすなわち回収率を引き上げたいところだが、競馬予想の難しい点は、少々馬券術を補強したところでaの値はあまり変わらないことである。
まるで、重力に縛られた人類が、地球を周回する軌道に衛星を打ち上げるさまに似ている。
最初に描いた曲線は、オッズという強い重力場にある。
ここからy=1/xに乗せることは簡単ではない。
馬券術の抜本的な変更が必要なのである。
この方法を見つけたなら、これを必勝法という。
(図表388-1)
x(1) | y(1) | a(1) | x(2) | y(2) | a(2) |
0.7 | 1.07 | 0.75 | 0.7 | 1.43 | 1 |
0.6 | 1.25 | 0.75 | 0.6 | 1.67 | 1 |
0.5 | 1.5 | 0.75 | 0.5 | 2 | 1 |
0.4 | 1.88 | 0.75 | 0.4 | 2.5 | 1 |
0.35 | 2.14 | 0.75 | 0.35 | 2.86 | 1 |
0.3 | 2.5 | 0.75 | 0.3 | 3.33 | 1 |
0.25 | 3 | 0.75 | 0.25 | 4 | 1 |
0.2 | 3.75 | 0.75 | 0.2 | 5 | 1 |
0.15 | 5 | 0.75 | 0.15 | 6.67 | 1 |
0.1 | 7.5 | 0.75 | 0.1 | 10 | 1 |
▼サイン馬券
単独或いは複数のファクターの組み合わせをルールにして予想することを予想法、または馬券術という。
必勝法が「オッズという重力場から脱出したもの」であれば、オッズと相関性の高いファクターを捨て、相関性の低いファクターを探し出すことになろう。
どのようなファクターが当てはまるのか。
わたしは回帰分析、重回帰分析などの手法で相関性を検証するが、もっと簡便に判定する方法はある。
本命の勝率を見るとしよう。
貴方の選んだ本命がどのくらいの勝率か調べてみる。
これまでわたしが調べた経験から、一般には本命の単勝勝率が20%から25%未満というのが平均的な馬券術だろうと推測する。
オッズとの相関性を検証するなら、今度は本命の「単勝1番人気率」を調べてみてほしい。
オッズとの相関性が高い場合、勝率より高い「単勝1番人気率」になるだろう。
例えば、「今走2着の馬を次走で本命として狙う馬券術」があるとしよう。
本命の勝率は20%強である。
他方、本命の1番人気率は、驚くべきことに37%くらいになる。
これを、オッズとの相関性が高いという。
前走2着を本命とする馬券術或いはファクターは、勝率20%以上あり、魅力的なのだが、オッズの重力場に囚われているファクターである、と判断できる。
つまり、黒字収支になることはないのである(ちなみに、この単勝回収率は73.9%)。
貴方は、このファクターを捨てられるだろうか。
(図表388-2)今走2着だった馬の次走着順と次走人気(2011-2021年中央競馬平地競走)。この馬券術では予想(次走着順)よりもオッズ(次走人気)のほうが相関性は高い。
次走着順 | 頭数 | 次走人気 | 頭数 |
1 | 7,220 | 1 | 13,231 |
2 | 5,617 | 2 | 7,613 |
3 | 4,503 | 3 | 4,731 |
4 | 3,539 | 4 | 3,220 |
5 | 2,979 | 5 | 2,154 |
6 | 2,337 | 6 | 1,509 |
7 | 1,999 | 7 | 1,011 |
8 | 1,688 | 8 | 719 |
9 | 1,293 | 9 | 475 |
10 | 1,075 | 10 | 333 |
11 | 935 | 11 | 242 |
12 | 728 | 12 | 127 |
13 | 541 | 13 | 99 |
14 | 462 | 14 | 74 |
15 | 361 | 15 | 42 |
16 | 225 | 16 | 20 |
17 | 61 | 17 | 7 |
18 | 49 | 18 | 5 |
合計 | 35,612 | 合計 | 35,612 |
勝率 | 20.3% | 1番人気率 | 37.2% |
解答(正答)ではないが、ひとつのソリューションとしてサイン馬券術を真面目に取り上げてみよう。
サイン馬券術には美点がある。
オッズとの相関性が低い(無い)のだ。
サッカー日本代表が勝てば青がくると言い、4枠の馬に賭ける。
そういう馬券術である。
オッズを見なければ、人気薄さえ平気で買える。
惜しむらくは、オッズとの相関性が低いだけでなく、馬の実力とも相関性が低いことである。
お陰で的中率も低い。
サイン馬券術は、だから採用できないのだが、相関性の低さでは、下手な馬券術より優れている。
わたしたちは、オッズとの相関性が低く、かつ、ソコソコの的中率のあるファクターを考えればいいのだ。
もちろん、それが、難しい。
そういうファクターはあるかないか、で言えば、ある。
但し、「オッズと相関性が低く、かつ、着順(少なくとも上位入線)と相関性が高い」となれば、それほどあるまい。
だが、発走前オッズは論外としても、着順ほか前走実績、適性その他、オッズと相関性の高いものだけを幾つ組み合わせても、黒字収支には辿り着かない。
オッズの世界=回収率0.75に帰着する世界、を小さく再現しているに過ぎないからだ。
(SiriusA+B)