▼多過ぎるとだめなのか
馬券を獲るには幾つものファクターが必要だが、多過ぎてもだめ、という主張がある。
では、どれくらいが適正なファクターの数なのか、と言いたくなるが、これに対する回答が無いのもこの問いの難解さを示している。
適正なファクター数とは。
わたしには「数」に関する回答は持ち合わせていないが、多過ぎても駄目とされる理由とファクターの組み合わせ方についてはソリューションというか、持論がある。
今夜はそのあたりを綴りたい。
「何々だけで馬券が獲れる」というキャッチフレーズは、今も昔も変わらない。
昔の馬券攻略本のタイトルたちを見てもそうだし、ネット上の指南でもそうだ。
これを、仮に「シングルファクター」と呼ぶことにしよう。
シングルファクターには、スピード指数やその派生指数をはじめ、馬、血統、騎手、調教師といった要素から、展開のポイントを捉えたもの、パドックの相馬眼、調教、オッズ理論などがある。
試してみれば分かるが、シングルファクターだけでは的中率も回収率も満足できる水準に至らないというのがほとんどだ。
そこで、複数のファクターを組み合わせようとするのだが、任意のふたつのファクターを組み合わせると、的中率が何ポイントか改善するものの、回収率はそれほど変わらないという経験はあるかと思う。
例えば、馬の能力指数で単勝勝率20%のファクターに加え、種牡馬理論で単勝勝率15%のファクターを用意したとする。
このとき、単純な合算方法(足し算・掛け算など)して新たな合成ファクターを作成したとき、貴方の予想は単勝勝率22%と改善するかもしれない。
ところが、回収率の側面で見ると、馬の能力指数で77%だったものが、78%になったり、76%と下がったりする。
「回収率が思ったほど改善しないなあ」
と呟く経験である。
そこで、もうひとつファクターを加えたり、別のファクターに取り換えたり、といった行動に移る。
ところが、的中率は「微速前進」する一方、回収率は「停滞」するのだ。
的中率は改善するので、ファクターの数を増やすのは間違っていない、と考えながら試行錯誤を繰り返すのである。
いずれ的中率も頭打ちになり、ファクターが多い割には的中率が寂しく思えるようになって、ファクターの追加を諦めるようになる。
的中率が「微速前進」、回収率が「停滞」するのには、わたしなりに考えると、次のようになる。
競馬は複雑系で決定的要因が無く、多くの説明変数(ファクター)があるほど説明ができる。
他方、多くの説明変数を調合していくと、1番人気に近づく「集合知」の状態になる。
実際に、自分の予想で検証してみると理解しやすいかもしれない。
ファクターが多過ぎるのもだめ、というのが「手間暇の問題」でなければ、1番人気に近づくから、というのが理由なのである。
▼調合(ブレンド)より選択(チョイス)
では、ファクターの数は幾つが適正、或いは適当なのか。
マクロ経済或いは市況を予測するのに似て、決定的な説明変数がなければ多いほうが説明しやすいのは確かだ。
競馬で言えば、レース結果を数多く説明できる説明変数(ファクター)があるようなら、それひとつでかまわないと思う。
だが、そのようなファクターはない。
わたしは、個々の出走馬を分析するやり方であれば、比較的相関性の低いファクター群が5乃至6種類くらいは必要だと思っている。
そのファクターの作成にはさらにいくつものファクターが必要で、それこそ100個はないけれどそれなりの数に上る。
ひとつ提案がある。
この手法でオリジナルの予想をするのなら、足し算や掛け算でひとつのファクターに仕上げるのではない方法を選んでみてはいかがだろうか。
合算する行為は、皆が馬券を買う行動と同じだからだ。
さまざまな予想手法が馬券購入という行為に変換され、主催者のコンピューターに投票が積み上げられていく。
主催者のコンピューターなのか、貴方のパソコンや頭の中なのか、その違いだけで、やっていることは人気投票で1番人気を選ぶ行為に近づくのである。
競馬予想の要諦(ようたい)は、1番人気との乖離である。
誰しも予想する限り1番人気と本命が被ることはある。
優れた予想ならば、本命とした馬の半分以上が1番人気だったりする。
それでも、できるだけ1番人気馬と被らないようにしないと、回収率は上がってこない。
では、どうするか。
幾つものファクターを総合するのがあまり得策でないとしたら、レースごとにファクターを選択(チョイス)するという手がある。
思い出してほしい。
「実力通りで決まった」
「騎手の巧拙で決まった」
「展開が向かなかった」
レース結果でいろいろと言い訳が出てくる。
実は、この言い訳こそが、予想のヒントなのである。
実力通りに決まるレース、騎手の巧拙で決まるレース、展開で決まったレース、といったレースごとの「決定的ファクター」はある。
決定的ファクターがひとつなのかふたつあるのか、それはレース次第だけれど、「総合的にこのようなレース結果になった」というものは少ない。
予想もそのようにしてみればどうか。
拝見させてもらっているブログに「繰り返しの謎解き競馬」というのがある。
著者「たけたけっ」様とは一度、メールを交換させていただいたことがあるのだが、最近のブログに「足し算」ということばがあったので、ちょっと違う話かもしれないが書いてみることにした。
筆が乗ってかなり突っ込んで書いてしまったけれど、今夜はここまでにする。
関心があれば、端折ったところを補いながら読み返していただければと思う。
(SiriusA+B)