▼外厩
外厩について、このブログで正面から記事にしたことがない。
記事にする充分な資料がないから先送りしていたのだが、インパクトのある話ではあるので、外厩による影響くらいは綴っておこうと思う。
読者の皆さんが参考になる程度にとどまるので、詳しくはご自身で研究いただきたいのだが、軽く考えていた人には衝撃的かもしれない。
ただ、ノーザンファームの「天栄」「しがらき」が脚光を浴びたが、これ以外の外厩も数多くあり、いずれほとんどの馬が外厩を組み込んだ競走馬人生(馬生)になりそうなので、外厩を当然のものとして予想を組み立てる考えで臨んだ方がいいかもしれない。
予想ファクターの視点では、大きな影響を与えていると思われるのが、出走間隔である。
障害競走も出走取消も、何でも入った「ざっくりデータ」で申し訳ないのだが、この10年ほどの期間にも、競走馬の出走間隔がのびているのである。
それどころか、昭和や平成半ばくらいまでは「休み明けの鉄砲掛け」とか「叩き2走目」といった、競走間隔のあいた馬の取捨選択があったことすら、過去の遺物になった。
もちろん、「出走の渋滞」という原因はある。
いずれにせよ、出走間隔がのびた馬が、連闘、中2週や中3週の馬たちと遜色ない、或いはそれ以上の成績を修め始めている。
具体的には、下表をご覧いただきたい。
外厩滞在期間はそれぞれだし、詳しい情報は知らないが、順調であるとして6週から15週くらいとみて、1週から5週と見比べたものである。
短い間隔で続けて出走する馬が、以前より減少している。
これは全体的な傾向である。
さらに、ノーザンファーム生産馬だけピックアップしたものと比べてみるのも参考になるかと思う。
傾向がより顕著だからだ。
下表がすべてを物語るので、説明するより数字を眺めてもらった方がいいかもしれない。
勝率、出走数の推移いずれにも注目いただけると幸いである。
▼「外厩普及後」の世界
外厩は、「先行者利益」の点で栗東坂路に似ている。
栗東坂路に、早くから注目し、これを採り入れた調教師や馬券購入者が「先行者利益」を得た。
外厩も同様で、この仕組みを採り入れた生産者など競馬関係者や馬券購入者は先行者利益を得ただろうと推察される。
先見の明が利益に直結した好例である。
残念ながら、祭りは終盤か、もう終わるところだ。
馬券で外厩帰りを狙うだけで儲かる時期は過ぎようとしている。
データを見る限り、外厩は今や広く普及し、当然の仕組みになりつつある。
馬券購入者も予想に織り込み始めている。
先行者利益を掴みそびれた人は残念だが、これからは外厩普及後の競馬予想を考えていくことになろう。
予想ファクターとして、「競走間隔」は改めて見直す必要があろう。
以前は競走間隔が長くなるほど成績が低下する傾向にあったが、競走間隔を横軸、成績を縦軸にプロットすると、曲線の形が変化し、以前より長い期間まで成績が低下しなくなっていることが分かる。
これは、競走間隔の短い馬たちの成績が、相対的に下がったということでもある。
競走間隔の短い馬の調子が悪くなったのではない。
少し間隔をあけて出てきた馬が、コンディションの立て直しではなく、トレセンにいたかのように調教されて出走してきたため、いきなり勝ち負けにつながるようになったのだ。
「中間」という要素は、体を緩めるという事実上「一択」だった。
今後は、「臨戦態勢で外厩から戻ってきたかどうかの確認」が必要になる。
けがや疾病(しっぺい)の療養だったのか、猛特訓のための合宿に出かけていたのか。
さらに、調教師、馬主、生産者の役割分担に変化が生じているので、これらをファクターとして利用している人は、影響度合いを見直ししたほうがいいだろう。
(SiriusA+B)
(図表387-1)平均出走間隔と間隔別出走数・勝率の推移(2012-2021年中央競馬。障害競走含む。除外・取消等も含む。週は出走日から前走出走日を引き算し、1日以上7日以下を1週とする)
出走間隔(週) | 2012年 | 2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 |
平均出走間隔 | 7.4 | 7.6 | 7.7 | 7.6 | 7.7 | 7.9 | 8.0 | 8.2 | 8.3 | 8.3 |
1から5週出走数 | 27,840 | 27,374 | 26,862 | 26,759 | 25,933 | 25,147 | 24,032 | 22,832 | 22,740 | 22,275 |
1から5週勝率 | 7.7% | 7.6% | 7.7% | 7.4% | 7.4% | 7.6% | 7.5% | 7.6% | 7.4% | 7.6% |
6から15週出走数 | 12,279 | 13,155 | 13,904 | 13,848 | 14,754 | 14,546 | 14,808 | 14,812 | 15,502 | 15,848 |
6から15週勝率 | 6.0% | 6.4% | 6.1% | 6.5% | 6.6% | 6.7% | 7.0% | 7.4% | 7.4% | 7.3% |
(図表387-2)図表387-1のうち、生産者がノーザンファームの競走馬
2012年 | 2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | |
平均出走間隔 | 8.4 | 8.5 | 8.8 | 8.5 | 8.6 | 9.2 | 9.4 | 9.8 | 10.1 | 9.7 |
1から5週出走数 | 1,780 | 1,799 | 1,905 | 2,056 | 2,037 | 1,927 | 1,817 | 1,674 | 1,652 | 1,780 |
1から5週勝率 | 11.2% | 9.9% | 11.5% | 11.4% | 11.0% | 11.1% | 12.1% | 10.6% | 10.4% | 9.4% |
6から15週出走数 | 1,048 | 1,248 | 1,473 | 1,615 | 1,895 | 1,956 | 2,176 | 2,216 | 2,343 | 2,555 |
6から15週勝率 | 10.7% | 8.8% | 10.4% | 12.0% | 13.1% | 12.4% | 13.1% | 12.1% | 12.4% | 12.0% |
NF勝率全体 | 10.6% | 9.2% | 10.4% | 11.5% | 11.6% | 11.5% | 12.5% | 11.7% | 11.5% | 11.1% |