2022年9月4日日曜日

第384夜 ファクターのウェートは柔軟に設計されているか


▼予想の柔軟性

障害競走はともかく、すべての平地競走に通用する馬券術というのは、そうそう見つけられるようなものではない。

競馬は(わたしたちにとっては)、賭け事なのだ。
馬産の目的は置いておくとして、主催者は人気を分散させるために、競馬場を均質にしない、競走距離にバリエーションを持たせる、斤量を調整する、といった施策を打っている。
どの馬が勝つのか、主催者でも分からないような拮抗した状態を作るのである(主催者ならわかるというのがサイン馬券派の考え方である)
当然のことだけに、わたしたちはふだん意識しないが、競走条件の意図を考えていくと、競馬予想に役立つと考えてよい。
そのように考えたら、ひとつの馬券術で闘うようでは勝てないだろうと思ってしまう。
その意味で、「ダート戦専用馬券術」とか「ローカル専用馬券術」とかいった、限定的な予想手法は、実は理に適っているとわたしは思う。
先日のブログ記事で、「予想上手な人は購入レースを絞っている」という推察に疑問を呈したのだが、「自分の馬券術」に合わないレースの見送り自体はおかしなことではない。
だが、今夜のテーマからすると、「二刀流以上の馬券師ではない」ことが「プロの馬券師」ではないことの証明ではないか、ということになる。
二刀流以上でなくとも、予想法に柔軟性はあるのか、立ち止まって考えてみることもよいと思う。

「馬七人三」ということばは古くからある。
この割合が正しいかどうかは分からないが、こうも言う。
「馬七人三」ではなく、「馬五人五」或いは「馬六人四」ということもある、と。
馬と人というファクターでも、レースによってその割合が変わるということを語ったことばだ。
今の時代に置き換えて、例えば血統というファクターを見てみよう。
血統といっても、ここで示すのは勝率をもとにしたもので、実績に基づいて数値化したものである。
もっとも、新しいデータベースの血統データは工事中で、99.4%の進捗である。
0.6%
を残すのみだが、特に母系ではこの0.6%で大きく変わる可能性があり、あくまで参考としてみていただければと思う。
また、「固定的に」見てもらうため、2011-2021年の成績表から集計し、父馬・ファミリーグループ・母父馬の勝率を算出し、3つ合計した結果を、元のデータに還元して調べた結果である。
統計の世界で言えば、教師データで検証したようなものだから、信頼度は高くない。

▼血統ファクターは古馬戦予想の主役ではない
父馬・ファミリーグループ・母父馬の勝率をもとにした「血統ファクター」で出走馬のランキングを行ない、1位となった馬の成績をまとめたのが下表である。
一目瞭然で、新馬戦では血統ファクターの影響が大きい。
レース経験がゼロであるから、馬の基本性能の差が相対的に強く出るのだと思われる。
経験の蓄積と、出走馬の「粒が揃ってくる」ことで、基本性能だけでは勝てなくなってくることが分かる。
同じクラスの3歳戦と比較すると、そのあたりを推測できると思う。
実際、23歳の同歳戦では3歳オープンを除き勝率20%前後、古馬戦では15%弱にウェートダウンする。
20%
ある領域ではこのファクターを予想の柱とさえしていいほどである。
前走2着馬の勝率が20%程度で、これらと肩を並べる成績なのだ。

2
歳オープンと3歳オープンの違いは、僅か23戦で出走する、経験の少ない2歳戦と、数戦を経た3歳戦の違いであろうと考えられる。
未勝利戦の数値が低いのも、やはり何戦か走ることで経験を積んだ馬が出てくることによるもののようだ。

この結果から想像できることは、馬の基本性能と経験値の割合が変化するということである。
経験を積むことで、先天的な差は縮小していくと考えられるのだ。
したがって、予想ファクターとしてこの血統ファクターを用いる場合、新馬戦・2歳戦では高いウェートで、古馬戦ではウェートを抑えることが、馬券予想には良いということだ。
例えば、貴方の予想術が10個のファクターで構成されているとする。
そのとき、新馬戦では血統ファクターを高めに、古馬戦では低めに(極端な場合、ウェートをゼロというのもある)調節できるかどうか。
まったく違う予想法Aと予想法Bを開発し使い分けるというのでなくてもいい。
予想の的中率が頭打ちだと感じたら、このようにレースに応じたウェートの調整という手もあるということだ。
予想法が間違っているのではなく、レースに応じた柔軟性がないだけかもしれないのだ。

余興に、これらの単勝をすべて買った場合の収支を記載した。
11
年分でさえサンプル数が少なく、教師データへ還元した試験なので、本番がこのように上手くいくわけではないが、何発か的中させた単勝万馬券の効果で思わぬ良績となった。
詳細は申し上げないが、当然カラクリはある。
仮に実働させても80%台の収支が良いところだと思う。
それでも支持率(オッズの逆数)との乖離が認められる。
伝統的な血統理論とは一線を画すと自認しているのだが、収益の源泉を掘り当てたのかもしれないと秘かに思っている。
(SiriusA+B)

クラス 1着数 2着数 3着数 全数 勝率 連対率 複勝率 単配当計 単収支
2歳新馬 574 346 299 2,640 21.7% 34.8% 46.2% 2,408.9 91.2%
2歳未勝利 646 481 361 3,685 17.5% 30.6% 40.4% 3,799.2 103.1%
2歳1勝クラス 76 63 46 386 19.7% 36.0% 47.9% 321.4 83.3%
2歳オープン 87 46 34 364 23.9% 36.5% 45.9% 377.4 103.7%
3歳新馬 134 71 67 628 21.3% 32.6% 43.3% 740.7 117.9%
3歳未勝利 1,284 920 755 9,156 14.0% 24.1% 32.3% 10,025.1 109.5%
3歳1勝・2勝クラス計 274 207 171 1,519 18.0% 31.7% 42.9% 1,478.9 97.4%
3歳オープン 88 65 61 575 15.3% 26.6% 37.2% 500.5 87.0%
3歳上1勝クラス 868 604 531 5,972 14.5% 24.6% 33.5% 6,452.4 108.0%
3歳上2勝クラス 418 298 249 2,699 15.5% 26.5% 35.8% 2,656.4 98.4%
3歳上3勝クラス 163 111 114 1,076 15.1% 25.5% 36.1% 1,154.5 107.3%
3歳上オープン 139 92 95 1,005 13.8% 23.0% 32.4% 950.1 94.5%
4歳上1勝クラス 472 333 317 3,485 13.5% 23.1% 32.2% 3,413.3 97.9%
4歳上2勝クラス 266 199 218 2,085 12.8% 22.3% 32.8% 1,821.8 87.4%
4歳上3勝クラス 131 80 83 932 14.1% 22.6% 31.5% 958.9 102.9%
4歳上オープン 98 78 56 747 13.1% 23.6% 31.1% 667.9 89.4%
合計 5,718 3,994 3,457 36,954 15.5% 26.3% 35.6% 37,727.4 102.1%

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