2022年11月13日日曜日

第394夜 市場価格のおまけの話。相馬眼の正体(の一部)


▼市場価格と馬体重の関係
前々夜と前夜に競走馬の市場価格と成績の相関について書いた。
実は、この市場価格について調べ始めたのには、別の動機があった。
相馬眼である。
成績との関係をご覧いただいたが、市場価格は概ね成績と比例している。
これは調べる前からある程度予想をしていた。
では、競馬関係者は、未出走の馬の、何を見ているのか、価格形成の要因を知ることで競馬予想に活かせる材料を探していたのである。
プロの人たち(生業としている人たち)は、馬のどこを見ているのか。
整理すれば、血統と体格だと思うのだ。
体格については、体高や管囲など、競走馬になったら公表されないデータもある。
病歴や脚の形状・具合などの情報もある。
しかし、デビューする時点では、馬体重くらいしかわたしたちには分からない。
そこで、馬体重を切り口に調べたのである。

図表394-1は、市場価格と新馬戦での馬体重をプロットしたものである。
データが少ないことと牡牝を分けていないので凹凸が目に付くが、価格の安いところは平均馬体重が小さく、価格が高くなるに従い重くなってくる。
1
億円を超える超高額馬になると、馬体重はピークアウトする。
このことは以前から分かっていて、順当過ぎて「はい、この調査終わり」と、この話を没ネタと考えていた。
ところが、これにアレンジを加えたところ、考え直すに至ったのである。

(
図表394-1)2歳・3歳新馬戦における市場取引馬の馬体重(2011-2021年中央競馬平地競走、計量不能を除く)

対数クラス 市場価格(以上) 市場価格(以下) 頭数 平均馬体重
5.4 199,527 251,188 1 422
5.5 251,189 316,227 1 480
5.6 316,228 398,107 0 0
5.7 398,108 501,187 2 464
5.8 501,188 630,957 25 439
5.9 630,958 794,328 28 432
6.0 794,329 1,000,000 61 442
6.1 1,000,001 1,258,925 281 442
6.2 1,258,926 1,584,893 270 449
6.3 1,584,894 1,995,262 326 445
6.4 1,995,263 2,511,886 614 452
6.5 2,511,887 3,162,277 711 455
6.6 3,162,278 3,981,071 856 458
6.7 3,981,072 5,011,872 954 460
6.8 5,011,873 6,309,573 915 465
6.9 6,309,574 7,943,282 914 465
7.0 7,943,283 10,000,000 875 469
7.1 10,000,001 12,589,254 670 470
7.2 12,589,255 15,848,931 749 471
7.3 15,848,932 19,952,623 696 472
7.4 19,952,624 25,118,864 585 474
7.5 25,118,865 31,622,776 413 477
7.6 31,622,777 39,810,717 391 474
7.7 39,810,718 50,118,723 286 475
7.8 50,118,724 63,095,734 168 479
7.9 63,095,735 79,432,823 132 478
8.0 79,432,824 100,000,000 83 475
8.1 100,000,001 125,892,541 45 477
8.2 125,892,542 158,489,319 30 483
8.3 158,489,320 199,526,231 31 475
8.4 199,526,232 251,188,643 28 470
8.5 251,188,644 316,227,766 20 477
8.6 316,227,767 398,107,170 1 456
8.7 398,107,171 501,187,233 2 476
8.8 501,187,234 630,957,344 4 461

▼市場価格と馬体重と獲得賞金
図表394-2は、馬体重を切り口に、市場価格と獲得賞金の関係を並べたものである。
「黒字頭数」と「頭数割合」は市場価格と獲得賞金を単純に比べたもので、ランニングコスト(預託料)や出走手当などは含んでいないから、ほんとうの意味での黒字かどうかは別の話であることを予めお断りしておく。
馬主の財布の話ではなく、あくまで指標である。
凡そ、4頭に1頭が黒字である。
ご覧のとおり、400kg台半ばから後半にかけて、最もコストパフォーマンスが良いところと言えそうだ。
500kg
を超えてくると、軽量馬よりは良いが、コストパフォーマンスは下がる。
わたしはこの表を眺めて「もしかして、相馬眼は、体格をやや過剰に見ているのではないか」と思ったのである。
コストパフォーマンスは500kgを超えると低下傾向を示すのに対し、市場価格は上がり続けている。
市場価格が高くなっていくと賞金も相応に稼がなくてはならない、だからコストパフォーマンスが下がるという反論もあるかもしれない。
だが、平均獲得賞金も500kgを超えてくると下がってくるのである。
市場価格で示された期待ほど、成績があがっていない。

成長期だからセリからデビューまでに大きくなることはあるけれど、そもそもセリの段階から体格が良かったのではないか。
血統だけで市場価格が決まるのは面白くないが、「見栄えしたので買う決断をした」ということもあるのではないかと思う。
生産者が丹精込めて育て、見栄えもよくしてセリに臨むのだから、思わず手を挙げる購買者もいるだろう。
常々、プロの相馬眼には敬服するばかりなのだが、直感的な要素もあるということだ。
良いとか悪いとか、そういう話ではなく、わたしたち馬券購入者としては体格が良すぎる高額馬には「見栄えプレミア」があるかもしれないことに注意したい、と言いたいのである。
だからと言って、大型馬は見送り、とは言い切れない。
平均を下回っているが、先頭を切ってゴールに飛び込んでくる馬は少なくない。
軽量馬より取捨選択が難しいのである。

(
図表394-2)

新馬戦馬体重 頭数 平均市場価格 平均獲得賞金 賞金/価格 黒字頭数 頭数割合
360kg以下 1 3,240,000 0 0 0 0
370kg以下 6 2,528,333 183,333 0.07 0 0
380kg以下 9 6,237,778 1,108,889 0.18 1 0.11
390kg以下 41 4,486,585 1,948,683 0.43 4 0.10
400kg以下 91 6,366,154 6,146,121 0.97 19 0.21
410kg以下 218 7,896,193 3,981,372 0.50 32 0.15
420kg以下 432 10,465,787 4,876,613 0.47 78 0.18
430kg以下 673 9,598,707 6,632,429 0.69 162 0.24
440kg以下 986 10,379,686 8,920,585 0.86 246 0.25
450kg以下 1,297 12,125,983 9,416,258 0.78 316 0.24
460kg以下 1,433 13,837,523 12,018,520 0.87 378 0.26
470kg以下 1,414 15,416,605 13,084,738 0.85 387 0.27
480kg以下 1,369 16,639,978 14,052,809 0.84 362 0.26
490kg以下 1,130 19,081,673 15,348,682 0.80 310 0.27
500kg以下 831 19,898,568 16,366,841 0.82 232 0.28
510kg以下 531 21,560,772 15,717,198 0.73 105 0.20
520kg以下 311 21,656,077 13,784,183 0.64 71 0.23
530kg以下 205 20,888,537 13,797,380 0.66 42 0.20
540kg以下 103 23,667,670 8,476,573 0.36 21 0.20
550kg以下 55 21,944,182 10,536,455 0.48 8 0.15
560kg以下 17 36,081,765 6,713,059 0.19 2 0.12
570kg以下 9 15,458,889 21,520,222 1.39 2 0.22
580kg以下 4 28,357,500 24,227,250 0.85 1 0.25
590kg以下 2 12,780,000 4,270,000 0.33 0 0
計量不能 18 5,752,222 2,515,667 0.44 2 0.11
合計 11,186 15,118,380 11,834,161 0.78 2,781 0.25

(SiriusA+B)


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