2022年11月20日日曜日

第395夜 出産が早まっているかも


▼平均誕生日
下表は馬の「平均誕生日」の推移をまとめたものである。
さすがに平均誕生日という概念は見かけないし、誕生日の統計というのも生産者以外が知ることもないと思う。
2019
年生まれの中央競馬出走馬の平均誕生日は327日でした、と言っても「何の話?」と返されるだろう。
わたしの知る限り、馬券購入者の大多数は競走馬の誕生日など関心がない。
わたしにとっては、予想に極めて重要な要素なのですべての競走馬で誕生日を調べる。
日齢を数え、週齢にしたり、月齢にしたりして予想に反映する。

馬の年齢は、人の4倍、幼いときは5倍、老年では3倍で考えればよいという話がある。
それが妥当かどうかは分からないのだが、仮に人の4倍であれば、3歳の1年間は人の4年間に相当するということになる。
3
歳を5倍で考えるなら5年間に相当する。
成人したわたしたちにはピンとこないかもしれないが、若いときには4年でも5年でも大きな差があった。
高校生のとき、4年先輩や4年後輩をどう思った?
それだけ違うということである。
わたしが予想に取り入れる理由はご理解いただけると思う。

その馬の誕生日だが、ここのところ早く生まれるようになっているのではないだろうか。
2006-2021
年の16年間に、中央競馬に出走またはエントリーして取消した競走馬の誕生日を集計した。
南半球生まれをはじめ外国産馬を含むが、集計結果に与える影響は軽微とみている。
2003
年以前と2019年は参考データとしてご覧いただきたい。

2004
年生まれの平均誕生日は43日であった。
2010
年生まれまで早まっていき、そこから反転して2014年に41日となった。
2015
年以降は再び早まる傾向になって、2018年は329日である。
2019
年は参考値だが、さらに2日早まり327日だ。
僅か1週間ほど早まっただけではないか、という意見はあると思う。
人で言えば1か月になるけれどね。
サラブレッドは自然交配ではない。
出産時期はある程度、人の操作が可能だ。
人が、1週間ほど早めているのである。
動機は生産者の都合ではないかもしれない。
というのも、近年、JRA2歳の競馬番組を拡充している最中(さなか)だからだ。
早く産ませて早く仕上げることが有利になりつつある。

▼最大手生産者の戦略
平均誕生日が、全体的に1週間早まっているのなら、競馬予想にそれほど影響はないかもしれない。
だが、「全体的に、満遍なく」早まっているのではない。
ここに、競馬予想の参考になるポイントがある。
図表395-2にまとめたのは、2大生産者であるノーザンファームと社台ファーム産駒の平均誕生日である。
図表395-1の平均誕生日も再掲したので比較すると分かりやすい。
ノーザンファームは、以前から平均誕生日が早かったのだが、じわじわと前倒ししている。
素人のわたしは、育成に時間をかけようとする考えが根底にあったものと思うのだが、時代にも即した。
社台ファームはもともと平均的な平均誕生日であったが、近年急速に前倒ししていることが窺える。
リーディングブリーダーたちは、何も調教施設を整えるだけでなく、良血を揃えるだけもでない。
馬産を、単に馬を産み育てるというものではなく、育成まで視野に入れた戦略に基づいて行なっているのだ。

強い者が生き残るのではない、変化に対応できる者が生き残るのだ、という。
一般社会では、小回りの利く小規模の組織が変化に対応しやすいという印象を持っている。
ことサラブレッド生産に限っては、大規模生産者が早々に対応しているようだ。
おそらく、人手の問題、種牡馬や種馬場の融通などで、大規模生産者のほうが有利なのだろう。
社会科学としても、たいへん興味深い現象である。
(SiriusA+B)

(
図表395-1)2006-2021年中央競馬に出走した競走馬の誕生日の推移(障害競走出走馬、取消のみの馬等も含む)

産駒年 頭数 平均誕生日 正月からの日数 2/28まで(59日以下) 2/28まで(59日以下)
1994年生 1 1994/4/26 116 0 0.0%
1995年生 2 1995/3/25 84 1 50.0%
1996年生 9 1996/6/5 157 0 0.0%
1997年生 34 1997/4/26 116 2 5.9%
1998年生 108 1998/4/15 105 10 9.3%
1999年生 327 1999/4/12 102 36 11.0%
2000年生 657 2000/4/7 98 81 12.3%
2001年生 1,147 2001/4/8 98 141 12.3%
2002年生 1,736 2002/4/8 98 243 14.0%
2003年生 4,245 2003/4/7 97 584 13.8%
2004年生 4,559 2004/4/3 94 733 16.1%
2005年生 4,598 2005/4/2 92 831 18.1%
2006年生 4,601 2006/4/2 92 810 17.6%
2007年生 4,615 2007/4/1 91 871 18.9%
2008年生 4,578 2008/3/29 89 959 20.9%
2009年生 4,695 2009/3/29 88 1,038 22.1%
2010年生 4,472 2010/3/28 87 1,023 22.9%
2011年生 4,523 2011/3/30 89 896 19.8%
2012年生 4,506 2012/3/29 89 930 20.6%
2013年生 4,599 2013/3/31 90 898 19.5%
2014年生 4,673 2014/4/1 91 879 18.8%
2015年生 4,665 2015/3/30 89 992 21.3%
2016年生 4,745 2016/3/28 88 1,056 22.3%
2017年生 4,757 2017/3/28 87 1,106 23.2%
2018年生 4,742 2018/3/29 88 1,091 23.0%
2019年生 3,297 2019/3/27 86 751 22.8%

(図表395-2)

産駒年 平均誕生日 ノーザンファーム頭数 ノーザンファーム平均誕生日 社台ファーム頭数 社台ファーム平均誕生日
1994年生 1994/4/26
1995年生 1995/3/25
1996年生 1996/6/5 1 1996/6/12
1997年生 1997/4/26 1 1997/5/27 2 1997/3/29
1998年生 1998/4/15 4 1998/3/23 7 1998/4/18
1999年生 1999/4/12 12 1999/3/15 25 1999/4/27
2000年生 2000/4/7 32 2000/3/15 32 2000/4/5
2001年生 2001/4/8 49 2001/3/22 41 2001/4/6
2002年生 2002/4/8 71 2002/3/17 71 2002/4/5
2003年生 2003/4/7 136 2003/3/13 125 2003/4/2
2004年生 2004/4/3 173 2004/3/12 178 2004/4/1
2005年生 2005/4/2 203 2005/3/7 189 2005/3/29
2006年生 2006/4/2 207 2006/3/15 186 2006/3/24
2007年生 2007/4/1 207 2007/3/20 214 2007/3/23
2008年生 2008/3/29 230 2008/3/22 245 2008/3/22
2009年生 2009/3/29 253 2009/3/24 263 2009/3/22
2010年生 2010/3/28 271 2010/3/11 264 2010/3/21
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2012年生 2012/3/29 308 2012/3/11 274 2012/3/22
2013年生 2013/3/31 365 2013/3/11 334 2013/3/25
2014年生 2014/4/1 383 2014/3/9 317 2014/3/22
2015年生 2015/3/30 385 2015/3/5 343 2015/3/22
2016年生 2016/3/28 426 2016/3/6 319 2016/3/19
2017年生 2017/3/28 430 2017/3/9 299 2017/3/17
2018年生 2018/3/29 461 2018/3/10 312 2018/3/19
2019年生 2019/3/27 375 2019/3/10 217 2019/3/20

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