▼着差理論
走破タイムをベースにした予想理論は、馬場補正その他の補正を要する。
着差を用いる方法のほうが、補正の数が少なくて済むように思う。
1位入線タイムを100と表記し、0秒1遅ければ99、0秒2遅ければ98とする。
2秒遅れると80である。
タイム差を100から引けばよいので、時計の計算にアレルギーを持つ人には手軽な方法だ。
基準タイムも、馬場補正も要らない。
競走ごとのレベル差をどう考慮すべきか、問題点をその1点に集中できる。
このレベル差は着差理論の肝であるので、これについてはいずれ記すとして、今夜は1位入線馬の力量について考察したい。
この着差理論では、1位入線馬はすべて「100」である。
1位入線馬を100とし、0秒1遅れるごとに99、98としていく。
もっと上手くやっている人は多いと思うが、とりあえず簡便な方法で試みる。
2着以下は着差が直接的に比較しやすい。
しかし、1位入線馬は、どの馬も100では比較には不都合であることは明白だ。
そこで、同じ1位入線でも、少し差を付けてみよう。
どのように差をつけるか。
レース振りで加点減点する方法もあるけれど、着差に注目する予想法なので、着差を用いようと思う。
勝ち馬だけは2着馬との着差を「足して」みよう。
2着馬を0秒3離したのなら、103とし、2着馬とタイム差無しなら100とする。
1位同着なら、やはり100である。
0秒3離れていれば、次のようにする。
1着 103
2着 97
あれ、0秒6も差があることにするのかと思われるかもしれないが、このあと次走の勝率に換算するので気にしないでいただきたい。
要するに、2位入線馬以下の基準タイムは1位入線馬、1位入線馬のみ2位入線馬とするのだ。
なんと、ダブルスタンダードである。
コロンブスと卵かもしれない。
基準を揃えていないから計算するのに不都合ではないか、とお考えかもしれないが、実はそれほど困らない。
着差をそのまま比較しよう、計算に用いようとするから難しいのであって、着差の数字を「100」とか「97」という記号として着差別に次走勝率などに換算すればよい。
ついでに言うと、降級制度が原則なくなって、勝ち馬が再び同クラスを走るケースが少なくなったのだ。
貴方のことだから、昇級による加減は別途するだろう。
そうなればなおのこと問題は起きにくい。
▼大差はやはり実力の証
1位入線馬を2着馬との着差で100以上の値にすると、2011年から2021年の1位入線馬は次のような分布になった。
なお、「1位入線馬」としているのは、順位を降着処分前に戻しているからである。
降着は人間のルールに基づくものであり、入線順位は(多少強引なレースであっても)結果は結果である。
馬自身も「悪いコトしたな」と思うものではない。
(図表402-1)1位入線馬の着差ポイント別次走勝率
区分 | 着差表記 | 着差 | 次走勝利数 | 次走出走数 | 次走勝率 |
1 | 100 | 0秒0差で勝利 | 709 | 9,660 | 7.34% |
2 | 101 | 0秒1差 | 637 | 7,412 | 8.59% |
3 | 102 | 0秒2差 | 753 | 7,172 | 10.50% |
4 | 103 | 0秒3差 | 454 | 3,937 | 11.53% |
5 | 104 | 0秒4差 | 319 | 2,340 | 13.63% |
6 | 105-106 | 0秒5-0秒6差 | 369 | 2,470 | 14.94% |
7 | 107-110 | 0秒7-1秒0差 | 303 | 1,914 | 15.83% |
8 | 111-118 | 1秒1-1秒8差 | 122 | 538 | 22.68% |
9 | 119以上 | 1秒9差以上で勝利 | 15 | 40 | 37.50% |
合計 | 3,681 | 35,483 | 10.37% |
1着馬の次走は平均して10%ほどの勝率である。
着差によって区分すると、これほど差がつくのである。
着差が昇級後の参考資料として使えることが分かるだろう。
タイムを競うものではないから、騎手は勝つと確信すれば、目一杯には追わないのではないか。
馬も競う相手がいなくなると「ソラを使う」のではないか。
そう考えるかもしれないが、上表のように実力を隠しきれないものなのだ。
「追い込みや差し馬が、ゴール前で鼻差だけ勝つ」という、ドラマチックで計算された勝利など、劇的だが空想である。
名手でも、滅多にできない芸当であろう。
したがって、大差がつかない限り、着差通りの力の差だという前提でいいと思われる。
他馬を引き離した馬は、やはり強い。
(SiriusA+B)