2024年1月28日日曜日

第451夜 クラスレベルは時間が経つとともに


▼レベルは通年一定ではない
クラスによって戦い方は異なる。
騎手のレース戦術ではない。
予想の話である。

わたしたちは、概ね「ずっと変わらない」のが心地良い。
現実には、変わらないものは無い。
凝視しなければ変化の速度が認識できないだけだと考えてよい。
ごく短期的には「ほぼ変わらない」と考えてよいもの、考えたいものがあるが、考え直したほうがいい、というものもある。
競馬予想では、クラスがその例だ。
同歳戦では、新馬、未勝利、1勝、オープン、古馬戦では1勝、2勝、3勝クラスに、オープンがある。
オープン戦はG1競走からオープン特別まで細分化されている。
ただ、レースの数が少なく、わたしは必要がないときはひとまとめにしている。
わたしが、あまり認識されていないように思うのは、クラスのレベルも刻々と変化するということである。
同じ未勝利戦でも、時期によってレベルが変わる。
レベルの違いは、芝ダート、距離、競馬場だけの問題ではないのだ。
中央競馬平地競走は勝ち抜け方式だから、レースに勝てば上のクラスに行く。
勝ってクラスを卒業する馬もいれば、新たに勝ち上がって参入してくる馬もいる。
だからクラスレベルは変わらない、のか?と言いたいのである。
オープンクラスは勝っても昇級しないから、強い馬もオープンクラスに留まる一方、勝ち上がってくる馬が供給される。
逆に最下級クラスである未勝利戦では多少なりとも新馬戦から流れてくるものの、古馬1勝クラスはほとんど新規参入はない。
クラス分けでは、最下級と最上級は出入りが偏っているのだ。
未勝利戦は日を追うごとにレースレベルは下がり、古馬1勝クラスもレースレベルは下がっていく。
2
勝クラスや3勝クラスも、実はレベルが低下していく。
昇級してくる馬にはさらに上のクラスを目指せる馬も混じっているものの、勝って抜けていく馬と比較すれば卒業する馬のほうが平均的に高レベルである。
したがって、レベルは下がる。
下がり方が最下級に比べて緩やかなだけである。
図表451-1は、出走馬の平均賞金を月別、クラス別にまとめたものである。
図表は、競走サイクルに合わせ、6月スタートになっている。
オープンクラスは実施されるレースの影響があるので参考として載せた(今夜の話の対象外)

(
図表451-1)競走月別出走前平均賞金(単位万円)
2011-2021年データで2012年以降の平地競走
・古馬については第1世代(3歳上では3歳馬、4歳上では4歳馬)に限定
2歳未勝利 2歳1勝クラス 2歳オープン 3歳上1勝クラス 3歳上2勝クラス 3歳上3勝クラス 3歳上オープン
6月 63 171 314 454 870
7月 65 485 156 297 500 732
8月 56 334 141 284 443 774
9月 52 367 435 129 271 479 852
10月 49 367 462 127 264 462 1,012
11月 51 353 505 123 253 433 1,207
12月 49 291 633 118 235 402 907
3歳未勝利 3歳1勝クラス 3歳オープン 4歳上1勝クラス 4歳上2勝クラス 4歳上3勝クラス 4歳上オープン
翌1月 44 260 401 108 222 384 726
2月 42 238 466 100 219 389 948
3月 34 214 491 95 208 366 939
4月 30 191 582 91 200 354 926
5月 31 174 611 91 200 354 787
6月 31 145 492 123 229 316 586
7月 32 416
8月 33 391
9月 35 680
10月 30 981

ご覧いただければ一目瞭然だが、同じクラスでも出走馬平均賞金は時間とともに低下していく。
グラフにするとその低下具合、傾きがクラスによって違うことがよく分かる。
今回はよく分かるように、古馬戦の集計は「第1世代」に限った。
この記事で第1世代とは、古馬戦出走馬の最若年を意味する。
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歳上の古馬戦なら3歳が、4歳上なら4歳が集計対象である。

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月から始まるサイクルの序盤と終盤では、各クラス出走馬の平均賞金は(出走馬平均とはいえ)これくらいの違いがある。
加えて、クラスによってレベルの下がり方(傾き)にも違いがある。
下級クラスほど、レベルは急激に下がる。

▼出走馬間の差
実は前項までの話には続きがあって、サンプル馬を用いていろいろと説明する予定だった。
この項は、その次の夜に続く別のエピソード予定だった。
簡単に言えば、図表451-2のように、出走馬の出走前平均賞金を指数化したら、最下級戦が最も出走馬間の力差が開いていて、上級戦になるほど均衡してくることが分かる、というものであった。
ちなみに、図表451-1と同じような集計方法で、図表451-2はさらに出走頭数16頭のレースのみにしている。

(
図表451-2)1番人気を100とした場合の人気別出走前平均賞金1番人気比
・出走馬が16頭立て競走のみ
2011-2021年データで2012年以降の平地競走
・古馬については第1世代(3歳上では3歳馬、4歳上では4歳馬)に限定

人気 2歳未勝利 3歳未勝利 3歳上1勝クラス 4歳上1勝クラス 3歳上2勝クラス 4歳上2勝クラス 3歳上3勝クラス 4歳上3勝クラス
1番人気 100 100 100 100 100 100 100 100
2番人気 75 76 86 87 87 87 86 93
3番人気 61 62 78 79 80 84 80 85
4番人気 49 50 72 72 75 76 74 81
5番人気 40 42 68 67 69 73 70 77
6番人気 34 34 62 62 66 68 66 73
7番人気 25 27 59 62 61 67 62 71
8番人気 20 22 56 56 59 63 59 67
9番人気 16 18 53 53 57 60 57 63
10番人気 11 13 49 51 52 58 54 60
11番人気 8 10 45 45 49 53 51 59
12番人気 7 7 41 42 46 53 50 55
13番人気 4 5 38 38 43 49 47 53
14番人気 3 3 31 34 41 45 45 49
15番人気 1 2 27 28 35 40 41 46
16番人気 1 1 20 21 29 34 36 40

わたしがとやかく言うより、読者の皆さんが何かヒントを得てくれればよいので、詳しい説明は省く。
わたし個人としては、図表451-1451-2の情報を馬券に活かしたいのである。
その研究は長きにわたって続けているが、自身で納得いく研究結果には至っていない。
ただし、今、分かっていることは、レースレベルと、特に2着など上位入線馬のレベルはあまり相関性がないということである。
すなわち、「パッとしないレースでの2着馬」と「明らかにハイレベルのレースでの2着馬」が次走で対戦する場合、どちらが勝つ可能性が高いかと言えば、思ったほど差はないのである。
この話はいずれ改めて整えてお話しできればと思うが、簡単な話ではない。

(SiriusA+B)

2024年1月14日日曜日

第450夜 合成オッズ買い検証作業から分かったこと


▼1点買い、複数点均等買い、合成オッズ配分買い
予想精度の低さを補うために、買い方を研究するのは、多くの人にとって「いつか来た道」であろうとわたしは考える。
上手な買い方をすれば黒字になるのではないか。
わたしも若い頃、熱心に研究したものだ。
誰もが一度はモンテカルロ法やマーチンゲール法、合成オッズのどこかに至る、と思う。
これらをやめておいた方がいい、とは言わない。
もしも貴方の予想法が充分に優れていたら、買い方の工夫が効果的かもしれない。
だが、もともとの予想精度が低い場合には、買い方の工夫は破綻か無意味、という可能性が高い。
モンテカルロ法やマーチンゲール法は多くの人が破綻を指摘しているからここでは触れないが、合成オッズについては、一度真剣に検証してみようと考えていた。
わたしはこのブログで、合成オッズ買いは過剰な防衛策で不合理という趣旨を述べたことがある。
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レース単位で資金保全に囚われ過ぎだし、不的中を考慮に入れていないなどの欠点もある。
ただ、理論上の話なので、今回、2年分6,061競走を使い、同じ予想法で検証してみたところ、より明確に説明できそうな結果であった。
結論から申し上げると、

・低精度の予想法では、単勝1点買い、複数点均等買い、合成オッズ買いいずれでも、回収率に大きな差はない。場合によっては合成オッズ買いが1%程度優れていることもあるが、同様に劣後することもある(誤差の範囲)
・長期間で収支はほぼ同じだが、1日単位で収支を計算すると、合成オッズ買いではほとんどマイナス収支で終わる。勝つチャンスがなく、一時的な大儲けによる買い方のギアチェンジやリスタートの機会はほぼ無い。

というものだった。
検証では、最終確定オッズを使用しての合成オッズ買いだから、若干合成オッズ買いに有利な検証(実戦では最終オッズを推定して計算するが最終オッズを使えば誤認がないということ)だったのだが、買う直前に合成オッズを計算しても長期的に回収率は変わらない上、「ほぼ毎日、78割の回収率で敗ける」という、心が折れそうな結果である。
単勝での検証だが、他の券種でも、収束までの期間や波の大きさに違いはあっても、結果は同じようになるものと推定される。

どの買い方でも回収率はたいして変わらず
検証は、2020-2021年の中央競馬平地競走6,061レースで行なった。
新馬戦を除く。

予想法は2種類用意した。
ひとつは、前走単勝支持率(オッズの逆数)順に1位、2位、3……9位と順位づけしたもの。
同順位がいるとき、つまり前走オッズが同じ場合には、前走の上がり3ハロンが速かった方を優先する。
例えば、前走オッズが1.6倍の馬が2頭、1位であれば、前走上がり3ハロンで速かった方を1位、もう1頭を2位とする。
この方法でも2頭が同点1位であるが、これはそのままにした(このレースには2位がいないということになる)
この期間中の1位馬勝率(単勝1点買いの的中率と同じ)21.1%、回収率は70.2%だった。
前走の人気がベースなので、ちょっと回収率が低い。
今回は予想法ではなく賭け方がテーマなので、これくらいの予想法でご容赦いただきたい。

もうひとつの予想法は最終オッズそのままである。
実戦では刻々と動くので非現実的だが、検証では最終確定オッズでの検証が可能だ。
貴方が自身でどちらの方法を検証しても、わたしとほとんど同じ結果を再現できる。

買い方は大別して3種類だ。
単勝1点買い、複数点均等買い、合成オッズである。
複数点均等買いは、2点買いから9点買いまで8種類用意した。
合成オッズは5点買いのみにした。
単勝を用いるので、人気馬3点買いくらいだとオッズが低すぎ、買い過ぎると何の検証か分からなくなってしまう。
それで検証テストは5点買いである、他の理由はない。

合成オッズでの1レースあたりの予算は9,000円という前提である。
1
レース9,000円分を5(5位に同順位がいれば6)頭の最終オッズで最小公倍数を算出して配分する。
オッズが極端に大きく100円に満たない場合は100円とした。
これにより、1レースあたり、合計金額が概ね8,800円から9,200円に収まった。

結果は図表450-1のとおりである。
2
年間の収支は、どの買い方でも大差なし、というものだった。
「いや、結構違うよね」という印象の人もいるだろうが、期間の取り方で変わることは別途検証して分かっているため、大差なしと推測できる。
予想法が人気をベースにしており、1点買いや3点買いくらいまでは回収率が低くなりがちである。
人気との相関性が低い予想法なら、1点買いの成績が多点買いより優れることがある。
何にせよ、買い方を工夫してもたいして効果はないということだ。

日々の収支は
2
年間全体では大差なしだが、資金繰りに直結する、日々の成績(収支)を比較すると、合成オッズ買いは特異なパフォーマンスを見せる。
図表450-2である。
先に単勝1点買いと複数均等買いをみておきたい。
単勝1点買いは当たり外れの影響が大きい。
複数均等買いと連続して比較すると分かりやすい。
買い目の点数が増えると、最初はちょっとした配当の馬券が当たるようになり、「大当たりの日」は増える(その逆もまた然り)
更に点数が増えると、日々の収支の波は安定してくる。
高額馬券的中と購入点数が打ち消し合うのだ。
もしかしたら、合成オッズ買いしたい人には、7点買いとか9点買いのほうが、リスク分散のイメージが近いかもしれない。

対して、合成オッズ買いである。
わたしも驚いたのだが、毎日の収支で「大当たりの日」がほとんど出現しない。
ずっと安定してマイナスな日々が続く。
ずっと……
これは、勝つチャンスが(ほとんど)無いということを意味する。
わたしが知る限り、競馬で勝つ人というのは「大勝ちの日と負けの日」でできている。
合成オッズ買いの場合、負けの日の損害状況は合格点以上だが、大勝ちがほぼなく、要件を満たしていないのである。
このことは、複数点均等買いでも購入点数が多過ぎると同様である。
合成オッズ買いほどではないにしても大勝ちの日が少なく、合成オッズ買いと同じく「過剰な守備的戦術」とみていい。

今回の検証を、3連単など高配当タイプに置き換えて考えてみるとどうか。
どの買い方でも券種でも、「日々の収支の波」は大きくなるだろう。
合成オッズでも、良いときはあるかもしれない。
それでも、1点買いや、複数点均等買いのほうが「大勝ち」の日が多いと考えられ、チャンスが多いとみる。
特に単勝と異なるのは、組み合わせ数が多いことだ。
複数点均等買いは(おそらく皆さんが考えるよりは)買い目を多めにして良さそうだという点である。
(SiriusA+B)

(図表450-1)前走単勝支持率順位予想で1-9点買い、5点合成オッズ買い、と、1番人気買い
1日収支 1点買い 2点買い 3点買い 4点買い 5点買い 6点買い 7点買い 8点買い 9点買い 5点合成オッズ買い 1番人気買い
回収率 0.702 0.762 0.762 0.746 0.744 0.751 0.763 0.759 0.761 0.776 0.792
投票総数 6,063 12,130 18,185 24,248 30,305 36,351 42,379 48,339 54,115 30,305 6,061
的中数 1,282 2,276 3,011 3,605 4,087 4,529 4,876 5,149 5,374 4,087 1,961
的中率 21.1% 18.8% 16.6% 14.9% 13.5% 12.5% 11.5% 10.7% 9.9% 13.5% 32.4%
R的中率(6,061R) 21.2% 37.6% 49.7% 59.5% 67.4% 74.7% 80.4% 85.0% 88.7% 67.4% 32.4%

(図表450-2)前走単勝支持率順位予想で1-9点買い、5点合成オッズ買い、と、1番人気買いでの日々の収支
1日収支 1点買い 2点買い 3点買い 4点買い 5点買い 6点買い 7点買い 8点買い 9点買い 5点合成オッズ買い 1番人気買い
1点購入単価(1R=9,000円) 9,000 4,500 3,000 2,300 1,800 1,500 1,300 1,200 1,000 合成オッズ配分 9,000
300%以上 0 0 1 1 1 0 0 0 0 0 0
200%以上300%未満 1 0 1 0 0 1 1 0 0 0 0
160%以上200%未満 3 3 1 1 0 0 1 2 1 0 0
150%以上160%未満 3 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0
140%以上150%未満 1 2 1 2 0 0 1 1 1 0 1
130%以上140%未満 4 7 3 2 3 1 4 2 2 0 1
120%以上130%未満 5 4 7 4 2 3 4 4 6 0 3
110%以上120%未満 5 10 8 6 4 6 9 9 9 0 9
100%以上110%未満 11 10 11 12 12 9 7 18 11 6 27
90%以上100%未満 13 20 14 17 22 23 22 15 25 21 25
80%以上90%未満 20 21 30 24 24 34 28 27 25 65 41
70%以上80%未満 25 36 36 37 49 39 40 38 40 73 40
60%以上70%未満 33 36 33 45 41 49 48 46 41 37 32
50%以上60%未満 32 31 38 39 39 32 35 37 35 10 14
40%以上50%未満 30 18 19 20 12 15 15 15 16 2 15
0%超40%未満 27 17 12 5 5 2 0 1 3 1 7
ゼロ(おけら) 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
黒字日数100%以上 33 36 33 28 23 21 27 36 30 6 41
赤字日数70%以上100%未満の回収率 58 77 80 78 95 96 90 80 90 159 106
大赤字日数0%超70%未満 122 102 102 109 97 98 98 99 95 50 68
おけら日数 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
テスト日数計 215 215 215 215 215 215 215 215 215 215 215
1日最大回収率 2.34 1.96 4.94 3.83 3.07 2.63 2.28 2.00 1.79 1.04 1.49

(参考)単勝人気順に複数点買い(1点買いは図表450-1最右列と同じ内容になる)
単勝人気順に 勝利数 出走数 回収率 的中率 R的中率
1点買い 1,961 6,061 79.2% 32.4% 32.4%
2点買い 3,139 12,122 79.8% 25.9% 51.8%
3点買い 3,944 18,183 79.7% 21.7% 65.1%
4点買い 4,485 24,244 78.4% 18.5% 74.0%
5点買い 4,929 30,306 79.0% 16.3% 81.3%
6点買い 5,262 36,357 79.7% 14.5% 86.8%
7点買い 5,503 42,392 79.9% 13.0% 90.8%
8点買い 5,667 48,366 78.6% 11.7% 93.5%
9点買い 5,788 54,158 78.1% 10.7% 95.5%

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