2024年1月7日日曜日

第449夜 母馬の競走成績から分かってきたこと


▼全部を把握できなくても
母系を予想ファクターに加えることはかなり難しいのだが、わたしは意地になって何とかしようと思っている。
意地になっているのは、オッズへの折り込みが小さいからである。
影響を軽視しているというより分析が難しいのだ。
母馬の場合、父馬に比べて産駒数が少なく、1年に1頭である。
国内で年間8,000頭も産しても、母馬は同じ数だ。
残念ながら、3年ほどで淘汰される母馬も多く、母馬をベースにした数量的検証が困難なのである。
こうした理由から、母馬の影響を知ることでライバル(同じ馬券購入者)を出し抜くことができる。
ただ、難しい。
これまでにこのブログでも記してきたファミリーラインでまとめる方法(4代以上先を祖先馬としてグループ化するもの。ファミリーナンバーよりは詳しいが)でも、母馬そのものの分析ではないので、産駒への影響を朧げに掴むのがやっとである。
長く試行錯誤を繰り返してきたのだが、長期間の資料を揃え、不完全ながら分析する方法を確立させようとしているのが、こんにちの状況だ。
関心を持ったなら、是非研究していただきたいと思う。
はっきり言って、地道な作業をせねばならないので、脱落者は多いだろうとわたしは考えている。

ある程度手ごたえを感じているのは、母馬の競走成績である。
次の大胆な仮定をする。
→母馬の競走成績=産駒の地力
大胆でしょ?
ここでは、いわゆる「名牝」を優秀な競走成績の馬と定義した。
優秀な産駒を輩出する母馬、ファミリーライン上の祖先や近親に競走成績の良い馬も名牝と呼ぶことがある。
今回はこれらの情報をばっさりと切る。
競走成績も「中央競馬平地競走での平均賞金(獲得した賞金/出走回数)」に限定した。
勝利回数や勝率も試してみたが、平均賞金が比較的良いようだ。
海外や地方競馬の成績は、これもばっさり切った。
海外のみ、地方のみ、中央競馬平地競走獲得賞金ゼロは、すべて平均賞金ゼロである。
海外G1競走勝ち馬も中央で走らなければゼロ。
地方で10勝以上してもゼロである。
言わずもがなだが、未出走もゼロ。
それでは全母馬をキチンと分析できないのではないか、というご意見はあるだろう。
わたしもそう思う。
そう思うが、「全母馬を分析できない」と思っていたからこそ躊躇していた。
今後の研究で解決するつもりだが、中央競馬平地競走の成績だけでも多くの有力馬を補足できる。延べ出走馬約52万頭のうち、72%くらいはこれで判断ができるのである。
海外から持ち込まれた母馬は、実は優秀だが、幸い、数が少ないのだ。
意外に充分であった。
また、血統好きがしばしば言うように、無名の母馬(或いは父馬)から名馬が誕生することもある。
反対に、輝かしい競走成績を持つ牝馬が小粒な産駒しか輩出しないこともある。
例えば、三冠馬コントレイルの母馬ロードクロサイトの競走成績は、中央競馬平地競走7戦未勝利である。
賞金はあった。
710
万円だったから平均賞金は101.4万円だ。
ただ、統計的には、これらは少数派である。
注目されるのは珍しいからなのだ。
傾向でみれば、やはり、母馬の競走成績は産駒の成績と緩やかながら正の相関がある。

▼予想外の発見
出走馬の中で、母馬の平均賞金順で1位になった馬の勝率は、全体で9.7%であった。
ちなみに調査は2011-2022年までの12年間分で、いつもより1年長い。

不完全な情報にしては悪くない数字だと、わたしは思う。

これにクラスを加味してみると、わたしが誤認していた(可能性が高い)ことも分かった。
同歳戦では2歳新馬、2歳未勝利、21勝以上、3歳新馬、3歳未勝利、31勝以上の6クラスに分けた。
古馬戦では、1勝クラス、2勝クラス、3勝クラス以上の3クラスに分けた。
これで母馬の平均賞金1位の馬の勝率を算出した。
その結果、同歳戦では未勝利→新馬→1勝以上の順で、古馬戦では1勝クラス→2勝クラス→3勝クラス以上の順で、勝率が高まることが分かったのである。
これまで、わたしは新馬と未勝利を見て「経験値が増えると地力の影響は下がる」と考えてきた。
ところが、むしろ逆で、上級戦ほど地力の影響が大きいようなのだ。
念のため、2020年以降のレースだけで集計しても、同じ傾向が見られ、むしろ強まっている。
特に古馬戦では2020年以降分は第1位が第1世代(3歳上なら3歳馬、4歳上なら4歳馬)のみに絞って集計したところ、高い勝率を得られた。
重賞競走で血統理論が根強い理由が分かった気になった。
血統理論はこの検証の定義と何ら関係ないのだが、重なるところが多いと思う。
比較的重賞に向いている予想法なのかもしれない。

さて、コントレイルだが、この分析手法において、本命に推すことは(でき)ない。
これは欠陥ではない。
「そういうファクター」なのである。
コントレイルの強さは、母馬以外のファクターで示されるだろう。

(SiriusA+B)

(図表449-1)母馬の現役時平均賞金比較で1位の馬の勝率(2011-2022年中央競馬平地競走。平均賞金は中央競馬平地競走のみの集計による)
レースクラス 1位馬勝利件数 1位馬出走件数 1位馬勝率 2020年以降のレース1位馬第1世代勝利回数 2020年以降のレース1位馬第1世代出走回数 2020年以降のレース1位馬第1世代勝率
2歳新馬 343 2,797 12.3% 94 752 12.5%
2歳未勝利 444 3,889 11.4% 134 994 13.5%
2歳1勝以上 113 765 14.8% 25 183 13.7%
3歳新馬 63 657 9.6% 16 146 11.0%
3歳未勝利 889 9,813 9.1% 249 2,454 10.1%
3歳1勝以上 239 2,257 10.6% 66 543 12.2%
古馬1勝クラス 895 10,217 8.8% 148 1,265 11.7%
古馬2勝クラス 476 5,249 9.1% 71 401 17.7%
古馬3勝クラス以上 383 4,185 9.2% 26 176 14.8%
合計 3,845 39,829 9.7% 829 6,914 12.0%



ブログ アーカイブ