適当な呼称がないので「前半」とわたしは呼んでいるのだが、レース全体の走破タイムから「上がり3ハロン」(これを「後半」と呼ぶ)を引き算していろいろな研究に使用している。
「後半」は600mと一定だが、「前半」は1000m競走ならわずか400mだし、クラシックディスタンスの2400mであれば1800m分もある。
それでも力の入れ具合ではあまり差がないのか、有効な数字が得られる。
時速に換算するので、距離の長短にかかわらず比較検討できるからわかることだ。
今夜は全体、前半、後半の3種類のデータを出走(完走)経験数別に仕分けて分析してみた。
たいへん興味深い結果で、スピード指数系の予想理論構築者にはぜひご紹介しておきたい内容であった。
データは2006年から2014年の平地競走で、取消馬や競走中止馬を除く完走馬のみである。
いつものお願いだが、グラフにしてもらえばより理解しやすいものと思う。
単位は、距離がm、速度がkm/hである。
これまでの
平地競走 完走回数 |
今走の
平均 距離 |
前半
速度 |
後半
速度 |
走破
速度 |
0
|
1514
|
58.07
|
58.12
|
57.91
|
1
|
1555
|
58.69
|
57.48
|
58.05
|
2
|
1567
|
58.73
|
57.45
|
58.06
|
3
|
1575
|
58.84
|
57.61
|
58.19
|
4
|
1586
|
58.93
|
57.80
|
58.33
|
5
|
1593
|
59.02
|
58.01
|
58.47
|
6
|
1603
|
59.10
|
58.19
|
58.59
|
7
|
1607
|
59.17
|
58.33
|
58.69
|
8
|
1611
|
59.23
|
58.45
|
58.78
|
9
|
1616
|
59.27
|
58.57
|
58.85
|
10
|
1614
|
59.32
|
58.69
|
58.93
|
11
|
1616
|
59.35
|
58.74
|
58.97
|
12
|
1617
|
59.36
|
58.87
|
59.02
|
13
|
1620
|
59.39
|
58.98
|
59.09
|
14
|
1627
|
59.38
|
59.03
|
59.10
|
15
|
1626
|
59.40
|
59.07
|
59.13
|
16
|
1628
|
59.39
|
59.12
|
59.15
|
17
|
1630
|
59.41
|
59.14
|
59.16
|
18
|
1633
|
59.41
|
59.25
|
59.21
|
19
|
1632
|
59.41
|
59.28
|
59.23
|
20
|
1635
|
59.42
|
59.34
|
59.25
|
21
|
1635
|
59.42
|
59.36
|
59.27
|
22
|
1634
|
59.43
|
59.44
|
59.31
|
23
|
1640
|
59.46
|
59.49
|
59.35
|
24
|
1640
|
59.42
|
59.55
|
59.35
|
25
|
1643
|
59.40
|
59.60
|
59.36
|
26
|
1646
|
59.44
|
59.59
|
59.37
|
27
|
1653
|
59.41
|
59.54
|
59.34
|
28
|
1648
|
59.43
|
59.69
|
59.42
|
29
|
1660
|
59.38
|
59.61
|
59.35
|
30
|
1661
|
59.38
|
59.63
|
59.37
|
31
|
1670
|
59.40
|
59.67
|
59.38
|
32
|
1675
|
59.40
|
59.65
|
59.38
|
33
|
1679
|
59.36
|
59.65
|
59.36
|
34
|
1669
|
59.38
|
59.76
|
59.41
|
35
|
1676
|
59.34
|
59.63
|
59.34
|
36
|
1673
|
59.43
|
59.76
|
59.44
|
37
|
1672
|
59.30
|
59.63
|
59.33
|
38
|
1666
|
59.36
|
59.71
|
59.40
|
39
|
1666
|
59.48
|
59.77
|
59.49
|
40
|
1666
|
59.36
|
59.92
|
59.49
|
41
|
1673
|
59.34
|
59.76
|
59.39
|
42
|
1677
|
59.42
|
59.92
|
59.49
|
43
|
1704
|
59.25
|
59.67
|
59.32
|
44
|
1715
|
59.34
|
59.57
|
59.31
|
45
|
1695
|
59.34
|
59.73
|
59.38
|
46
|
1694
|
59.25
|
59.86
|
59.40
|
47
|
1723
|
59.12
|
59.56
|
59.17
|
48
|
1718
|
59.22
|
59.67
|
59.31
|
49
|
1730
|
59.17
|
59.73
|
59.30
|
50
|
1651
|
59.33
|
59.73
|
59.40
|
50走超
|
1732
|
59.17
|
59.77
|
59.28
|
▼前半は早めに頭打ち、後半は経験が増すにつれ伸びていく
表のように、出走経験回数が増えるにつれ、走破速度は速くなっていく。
これを前半と広範に分けてみていくと、前半速度はすぐに一定の落ち着きを見せる一方、後半速度がどんどん速くなっていくことがわかる。
競走距離は少しずつ伸びていくので、距離短縮によって速くなっているわけではない。
この現象をどう読み解けばいいだろうか。
▼淘汰と成長
走破速度の向上には、まず、淘汰による側面がある。
いつまでも勝ちあがれそうにない馬は、早めに退厩し、実力のある馬に絞られてくる。
したがって、走破速度が速くなっていくというわけである。
もうひとつは、各馬の成長である。
成長によって全体的にスピードアップしていくというより、後半まで力をためておけるようになるということである。
長距離が得手の馬を「ステイヤー」と呼ぶが、まさに「我慢ができる」ようになるのだ。
もちろん、距離が伸びるにつれてスタミナも重要になってくるのだが、力の出し方を習得することによって距離を克服しているとも言えるだろう。
▼スピード指数
この結果は、スピード指数系予想理論の問題点も指摘している。
スピード指数は、常に全力で入っていることが前提となっている。
しかし、前半に力を貯め、後半に爆発させる競走スタイルからは、むしろ力を余すことのほうが多いのではないかと推定できるのである。
実際、この「全力」という前提に疑問を呈し、ラップタイムによる修正や位置取りによる補正を加える派生理論が公開されている。
わたしは、後半(上がり3ハロン)を中心に研究をすることもよいように思う。
(SiriusA+B)