2017年3月24日金曜日

第160夜 第1部から第2部へ(2)ーーこれまでのふりかえり、要素と全体、複雑系の予測限界

▼スピード指数
前夜からつづく。
個別要素について、これまで雑然と記事にしてきたことを簡単に振り返る。
舌足らずだた点も少し補っておきたい。
以降、断定的な記述もあるが、あくまでも、わたしの視点であって、他者を批評するものではないことをおことわりしておく。
そもそも競馬は楽しむもので、本気で長期間のプラス収支を目指す方が異端である。
好きに考えるのがふつうであり、こうあるべきと決めつけるほうがおかしいことなのだ。

さて、スピード指数である。
まず、計算方法については、速度に換算するほうが良い。
時速60km/h前後になる。
6夜、第7夜の「走破タイムを分析するなら速度に変換することをおススメ」を中心に記載した。
走破タイムそのものより歪みが少ないことが最大の利点である。

スピード指数の考え方については、疑問を呈してきた。
76夜、第77夜「スピード指数に代わるもの」の思索の中で述べたのだが、わたしは馬の能力を「速さ」というより「強さ」と表現するほうがいいと思っている。
誰も走破タイムを競っているわけではない。
結果として1着になった馬が最も優秀な走破タイムになっただけである。
つまり、本末転倒なのではないだろうかと考えている。
加えて、馬が競走中ずっと全力疾走しているわけでもない。
152夜「上がり3ハロンという指標を競馬全体の中で位置付ける」では、馬の全力疾走が数百メートル程度であることを話題にした。
全力疾走が前提なら、上がり3ハロンという指標は不要なのだ。

▼血統論
古典的な血統論は、このブログで繰り返し疑問を呈してきた。
振り返ると、話題に困るたびに血統理論叩きをしていたのではないかと思われるほど、記事の数がある。
実は、血統好きの領域には遠く及ばないが、わたしは血統の話が好きである。
半面、不思議な理論が多いことも不満であった。
そもそも先祖に遡る理由付けは生物学や遺伝学に則っていない。
メンデルの法則で競走馬が例外であることはない。

また、遺伝学的には母馬の影響は半分か半分以上あるのに父馬中心の分析では不十分である。
母馬はサンプル数の確保が難しいのだが、これについては第11夜「祖先馬が分析を可能に」で、母系のみで引き継がれるミトコンドリアDNA(mtDNA)を拠りどころに100年あまり遡る母馬(わたしは祖先馬と名付けている)でまとめサンプル数を確保するアイデアを示した。

血統理論はロマンがあって楽しいのだが、学術的裏付けがないこともさることながら、統計的データを示したものが少ないことも不満である。
例えば、奇跡の血量も統計的には意味がないことを指摘したことがある(75夜「奇跡の血量18.75%の実力を検証する」)
また、数百頭の繁殖牝馬のデータを使って、競走成績と繁殖成績の関係性を分析したこともある。
これは第124夜から始まるシリーズをご覧いただきたい。

ところで、血統理論では、良血馬の定義も曖昧、父系の呼称の定義も不確かだ。
このことは、第37夜「血統論の話」で触れている。
しかし、光明はある。
50夜「新しい血統理論が構築される日は近い」で述べたように、遺伝学的アプローチが登場する日も近い。

ほかの話題については次の夜に振り返ることにしたい。
(SiriusA+B)

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