2017年6月21日水曜日

第172夜 オリジナルの優位性

▼JRA平成28事業年度報告書
第100夜「3連単のシェアが低下し単勝のシェアが伸びている現在」で、平成27事業年度のJRA事業報告書から馬券の種類別に動向をみた。
今更だが、平成28事業年度の内容を見て、複勝に関し、想像と違っていたことがわかった。
複勝は平成28年(2016年)には再び増加傾向に転じていた。
明らかに低下傾向の券種は、枠連、馬単、WIN5
である。
3連単も減少傾向だが、2016年はやや盛り返しているので、今後の行方に注目したい。

▼単複が人気の理由
それにしても、単勝や複勝がジリジリと上昇している状況には目を見張るものがある。
枠連しかなかった平成元年には、単複のシェアは合わせても5%にすぎなかった。
今や13%を超えている。
射幸心を煽るような高配当の馬券が次々と登場し、そしてシェアを落としていく中で、単複の存在感が増しているのだ。
たかが13%、されど13%。
単複馬券を狙う人が増えていると思わざるを得ない。
単複馬券を積極的に購入する動機は、実質的な控除率が20%と最も低いことだろうと考えられる。
だが、それは昔からのことなのだ。
出走頭数が昔より増えて、多少配当的妙味があるようになったことは好材料ではある。
しかし、そのほかの原因はちょっと頭に浮かばない。

新規参入組がこぞって単複を買っているということもないだろう。
競馬の初心者は、もちろん教えられる人にもよるだろうが、単複から買い始めたという話はあまり聞かない。
少なくともわたしの周囲には「馬連を最初に買った」「馬連がなかったから枠連を買った」(これは結構なベテランさん)という人がほとんどである。
教えてくれる人は、説明は少々難しくても、配当が魅力的で、何点か買えば当たりやすい馬連を推奨してくれるのである。
そう考えると、ある程度の経験者が購入を増やしているのではないかと思える。

もしかすると、馬券投票者の研究力が上がっているのではないだろうか。
単勝は馬券の基本、などという言いかたは正しいとは思わないけれど、最もシンプルであることは事実だ。
複勝も同様である。
配当が安いのは、それだけ的中率が良いことを表わす。
的中率が高いと資金の回転率が上がり、資金ショートを起こしにくくなる。
3連単や馬単は購入比率が低下傾向だが、押さえ馬券として単勝を買う、3連複や馬連の押さえとして複勝を買う、といった投票戦術が普及しているかもしれない。
あるいは、冷静に高配当狙いよりコツコツ勝ちを積み上げるほうが必勝法に近づくと考える人が増えたのかもしれない。

▼オリジナルの優位性
コンピュータの普及やネットの普及が、すべての投票者に研究力と情報の提供をしているのである。
わたしたちは、それを前提に、さらなる上を目指さなければならなくなったのではないだろうか。
グダグダの酔っ払いオヤジをイメージしたライバル像はすでに過去のものになっている。
パソコンを駆使し、充分な情報を手に入れ分析した「手練れのライバル」が投票している。
情報はデータだけではない。
戦略や戦術も探しだすことができる。
では、ライバルを出しぬきたければどうすればいいのか。
もし、馬券収支の黒字の源泉が他者との差異であるなら、やはりオリジナル性が必要であろう。
おそらく、データの精緻化よりサムシングニューを探すほうが早道ではないかと思う。
スピード指数やコンピ指数で儲からないのは、オリジナル性に乏しいから、という見方ができまいか。

このブログでは、オリジナルな考えにも触れてきた。
競馬は強さを競うものであること、走破タイムは必ずしも的確な指標ではないこと、個々の馬などの分析をしても足りないもの(創発特性)があること、などなど。
それをいち早く見つけた者が勝者となるだろう。
(SiriusA+B)

2017年6月16日金曜日

第171夜 騸馬

▼去勢された牡馬
競馬を始めた頃には「せん馬」「セ」の意味がわからなかった経験を持つ人は少なくないだろう。
気性難などを理由に去勢された牡馬のことで、「騸馬」と書く。
競走能力にどれだけの影響がもたらされるのかは議論もあるけれど、G1競走を優勝した国内の騸馬は、レガシーワールド、マーベラスクラウン、トウカイポイントの3頭である(見落としていなければ……)。
海外勢には何頭かいるが、2歳、3歳のG1競走に出走できないことを割り引いても、少々寂しい気がする。
わたしは、データ上ではサンプルが少ないと思い騸馬の区分を設けていないが、予想の重要な要素と考えることもできると思う。

▼日本の風土
騸馬が少ない背景には、日本の風土というか思想も影響しているように思う。
世界に目を向ければ、馬産のないシンガポールや香港では騸馬が多いという。
では馬産の有無かというと、オーストラリアやニュージーランドも騸馬が多く、一概に言えない。
日本では競走馬になってから去勢されることが多いけれど、欧州などでもデビュー前に騸馬になった馬がいる。
馬は経済動物だが、たとえ可能性が小さくても種牡馬になる機会を奪いたくないとか、馬がかわいそうだとか、いかにも日本的な思想が騸馬を少なくしているように思えるのである。
そういう国柄に生まれて良かった。
が、感想を書いて終わりではない。

▼エネルギーの問題
福島馬主協会のサイトに「人馬一体」というコラムがあって、去勢について書かれたものがある。
その中で、勢司調教師が述べている。

エネルギーが有り余ってしまって人間がコントロールできる範囲を超えているとか、エネルギーが競走に向いていない場合に去勢するのだろう。
だが、強いエネルギーを走ることに向かわせるか、だが、削がれてしまうことで走らなくなった馬もいる。
エネルギーを持たない馬にエネルギーを持たせることは本当に難しい。

といった内容だった。
この考え方を参考にすると、騸馬になると成績が上向く場合と、まったく逆になる場合があるということだ。
わたしが騸馬にこだわらないのは、こうした理由による。
(SiriusA+B)

2017年6月6日火曜日

第170夜 競馬予想の深い森を突き抜ける

▼競馬は仕組まれている⁈
思考をする訓練というのは、幼少の頃からするのだけれど、大人になってから身に付かないということもない。
四六時中考えることは難しいのだが、思考を続ける人とそうでない人は、人生においても驚くほど差が出る。

若い人なら、打ち合わせやセミナーの資料のコピーを命じられたことがあるだろう。
コピーなら誰でもできそうだが、上司は評価の観点で考える。
紙を半分に折ったりステイプルをしたり、サイズの異なるコピーをまとめたりと、案外手間がかかる。
頼んだ人からみれば、注意深くキチンと取り組んだ人と適当にやった人では出来栄えが違うのだ。
知り合いに言わせれば「考えることを放棄している。その方がラクなんだろうね」となる。

こういうタイプによくあるのは、難しいことや複雑なことをブラックボックスとしてしまう思考だ。
例えば、競馬は仕組まれている、という。
誰かを勝たせるために、JRAがサインを送っていると。
あるいは裏情報で単勝や複勝の大量買いがあると。
本気かと多くの人は思うに違いないが、信じている人も案外いるようだ。
以前、このブログのどこかで話題にしたように、回収率ではサイン馬券と一生懸命考えた馬券にそれほど大きな収支差はないと考えられる。
残念だが、下手な考え休むに似たり、である。
サイン馬券を考える人は、差異の少ない馬券成績を根拠に自分の主張の正当性を唱える。
だが、予想プロセスの省略が収支プラスに結びつく可能性は低いだろう。
馬券が外れたのは競馬が仕組まれているからだと考え、同じことを繰り返して進歩しないからである。
大損もしない代わりに平均的収支から脱することもないであろう。
立ち塞がる競馬予想の深い森を避けても道はない。

一方で、深い森に入って彷徨う人は多い。
ポケットを探り回ってコンパスでも見つけるか、怪しげで頼りない地図でも入っていないか調べなければならない。
何もなければ、知恵を振り絞って、木の生え方を見、光の方向や高低差を見て、森を出なければならない。
競馬予想で言えば、スピード指数や血統理論、ニューラルネットワークなどが武器になるだろう。
ただ、誰もが森を突き抜ける精度のものでないことも事実である。
サムシングニュー、つまり何か新しいものを探す必要はありそうだ。
それは、従来の武器の「使い方」かもしれないし、まったく新しいアイデアかもしれない。
少なくとも、他人の真似事、模倣から抜け出してオリジナリティというか独自の工夫をしなければ勝つことはできない。
(SiriusA+B)

2017年6月1日木曜日

第169夜 フラクタル理論と競馬予想

▼カリフラワーとフラクタル理論
数学者ブノワ=マンデルブロによる幾何学の概念にフラクタル理論がある。
図形の部分と全体が自己相似になっているものをいう。
数学者の厳密な定義を端折って簡単に例えれば、カリフラワーを拡大して見るとカリフラワーに似た小さな形の集合体でできていることがわかる、といったものである。
細かく見ていくと湖の面積が算出できない、というような難しい問題に直面する数学者たちのお話であるが、競馬の予想でもこれを応用した予想理論があるそうだ。
どのようなものかは存じ上げないが、ランダムに発生する事象を予測する方法としてフラクタル理論に着目したことには凄いと思う。
わたしなりに考えると、競馬の全体的な「形」が小さなひとつひとつのレースでも再現されているのではないかということである。
それは、同じパターンが出現するかもしれないという応用もできるのではないかと思われる。

検証もしていないので適当で申し訳ないが、わたしなりに考えれば、例えば、成績の良い順に騎手A、B、C、Dがいたとする。
4人が出場するレースではA、B、C、Dの順で決まる確率が最も高いのではないか、と考えるのだ。
あるいは馬番2、4と入線する組み合わせが多いとか、調教師の組み合わせなども考えられる。

▼レース結果そのものの予想
この方法は、出走馬それぞれの個性を細かく調べ上げるものではなく、レースの決着をイメージしたレースそのものの予測であることに特徴がある。
第2部になってからしばしば言及している「創発特性」に着目した予想法であるとも言えよう。
レースのパターン分析とも言うことができ、新たな予想理論の切り口になり得る。

現時点で考えられる有望な予想理論を、わたしは次のように分類できると思っている。
1、競走馬などを詳細に分析する方法
2、対戦成績を分析する方法
3、レースの決着パターンを分析する方法
このうち1の方法は、スピード指数や血統論など様々な既存の伝統的予想理論がほとんど含まれる。
実力順に並べて良績のものを本命とする。
2については、JRAーVANの予想法が代表的だが、個体分析から一歩抜け出して、相対的に優勢なものを本命とする方法である。
3は出走馬の実力より、全体的な流れを予想しようというもので、今回話題にしたフラクタル理論や既存の予想法では展開予想がある。
以前、展開予想が難しいことをこのブログでも取り上げたことはある。
パターン分析する組み合わせが多すぎるからだが、レース全体を分析対象にする手法で画期的なものが開発された際には的中率が劇的に改善するのではないかと期待している。
(SiriusA+B)

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