▼去勢された牡馬
競馬を始めた頃には「せん馬」「セ」の意味がわからなかった経験を持つ人は少なくないだろう。
気性難などを理由に去勢された牡馬のことで、「騸馬」と書く。
競走能力にどれだけの影響がもたらされるのかは議論もあるけれど、G1競走を優勝した国内の騸馬は、レガシーワールド、マーベラスクラウン、トウカイポイントの3頭である(見落としていなければ……)。
海外勢には何頭かいるが、2歳、3歳のG1競走に出走できないことを割り引いても、少々寂しい気がする。
わたしは、データ上ではサンプルが少ないと思い騸馬の区分を設けていないが、予想の重要な要素と考えることもできると思う。
▼日本の風土
騸馬が少ない背景には、日本の風土というか思想も影響しているように思う。
世界に目を向ければ、馬産のないシンガポールや香港では騸馬が多いという。
では馬産の有無かというと、オーストラリアやニュージーランドも騸馬が多く、一概に言えない。
日本では競走馬になってから去勢されることが多いけれど、欧州などでもデビュー前に騸馬になった馬がいる。
馬は経済動物だが、たとえ可能性が小さくても種牡馬になる機会を奪いたくないとか、馬がかわいそうだとか、いかにも日本的な思想が騸馬を少なくしているように思えるのである。
そういう国柄に生まれて良かった。
が、感想を書いて終わりではない。
▼エネルギーの問題
福島馬主協会のサイトに「人馬一体」というコラムがあって、去勢について書かれたものがある。
その中で、勢司調教師が述べている。
エネルギーが有り余ってしまって人間がコントロールできる範囲を超えているとか、エネルギーが競走に向いていない場合に去勢するのだろう。
だが、強いエネルギーを走ることに向かわせるか、だが、削がれてしまうことで走らなくなった馬もいる。
エネルギーを持たない馬にエネルギーを持たせることは本当に難しい。
といった内容だった。
この考え方を参考にすると、騸馬になると成績が上向く場合と、まったく逆になる場合があるということだ。
わたしが騸馬にこだわらないのは、こうした理由による。
(SiriusA+B)