2019年12月1日日曜日

第259夜 芝替り、ダート替りの研究で見えてきたこと

259夜 芝替り、ダート替りの研究で見えてきたこと
▼表から分かること
ちょっとした表を作成して、どんなことが分かるか、いつも想像を膨らませている。
そこから見えてきたことを更に調べていく作業をする。
ちょうど芝替り、ダート替りを集計していて、わたしの思考回路の説明に適しているので、今夜はそれを採り上げることにしたい。
作成した表は以下のものである。


★表
前走コース 今走コース 件数 1着件数 勝率
- 芝外 8,912 578 6.5%
- 58,874 3,904 6.6%
- ダート 47,657 2,611 5.5%
- 障害 974 1 0.1%
芝外 芝外 11,777 1,032 8.8%
芝外 18,263 1,441 7.9%
芝外 ダート 4,687 248 5.3%
芝外 障害 273 18 6.6%
芝外 19,121 1,353 7.1%
128,891 10,117 7.8%
ダート 29,643 1,596 5.4%
障害 1,276 61 4.8%
ダート 芝外 3,713 114 3.1%
ダート 23,630 818 3.5%
ダート ダート 191,637 14,703 7.7%
ダート 障害 2,013 60 3.0%
障害 芝外 73 2 2.7%
障害 337 4 1.2%
障害 ダート 596 5 0.8%
障害 障害 11,299 1,074 9.5%
合計 563,646 39,740 7.1%


表は2006年から2018年の中央競馬で2004年以降生まれの馬の成績である。
前走と今走の芝ダート別に勝率を比較した。
延べ頭数は56万件、障害競走や出走取り消しなども含んでいる。
傾向を調べるための集計なので、大雑把な表だが、ひとつだけ、芝コースでは外回り(新潟直接含む)を分けている点は細かい。
芝替りやダート替りでどれだけ成績が低下するのかを知りたかった。
この調査の前提として、ひとつわたしの持論がある。
それは、必ずしも芝やダート適性だけで出走しているわけではない、ということである。
芝コースとダートコースには、適性の観点でみれば、それほど違いはない。
それはコース替り、調教にあまり差のない点、その他多くの事実が示していると思うのだ。
もちろん、適性も大切だが、芝とダートの2択なのだ、大半の馬はどちらのコースで走っても大きな差が無い中で若干成績の良い方を選んでいるのではないかと思っている。
多くの競走馬は生涯で何十回も走るわけではない。
ダートでちょっと見どころがあればダートを使い続けるという選択が最も無難、低リスクなのだ。

こうした持論を前提に推論を進めていく。
前提から間違っているなら、またイチから考え方を再構築すれば良い。

▼ふたつの仮説
上表から分かるとおり、芝→芝、ダート→ダートに比べ、コース替りでは成績が下がる。
これはこれで予想どおりなのだが、わたしはここから仮説をふたつ考えた。
第一に、芝コース出走馬はダートコース出走馬よりも平均的にはレベルが高いのではないか。
第二に、ダートコースが小回りであることには注意を払う必要があるのではないか。
というものである。

第一の仮説は、ダートコースの方が力(パワー)は要るので、芝からダートに替わった場合よりダートから芝に変わった場合の方が成績は良いはずという事前予想というかわたしの思い込みを裏切られたことから思いついた。
結果は逆だったのだ。
両方とも芳しい成績ではないけれど、芝→ダート替りの方が、ダート→芝替りよりも勝率は高い。
これは何故かと考えたときに「出走馬のレベルの差」以外に説得力のある説明が思い浮かばなかった。

わたしは「よほどのダート適性が見られない限り、競走馬を専らダートで使おうと考える関係者は少ない」と根底で思っている。
中央競馬平地競走では、レースでも賞金でも、芝コースの方が「格上」なのである。
ダート適性の優劣よりも、競走馬の基礎能力の優劣のほうが影響は大きいと思うのだ。
だから、芝→ダートのほうがダート→芝より成績が良い(マシ)なのではないか。

▼コース形状
第二の仮説である「ダートは小回り」も、重要な要素だと思うが、皆さんはどう思うだろうか。
中央競馬は全10場ある。
コースの形状はそれぞれ特徴があるけれど、共通しているのは「ダートコースは芝コースの内側にある」ということである。
すなわち、ダートコースは小回りである。
レコードタイムや平均タイムを並べれば自ずと明らかになるが、大きなコースほど速度を落とさず走りやすく、より実力が問われる。
中央競馬のコースは、下表のように1周の距離が示されている(芝はAコースの距離)
平均すると1,700メートル弱で、平均以上を大回りコース、平均以下を小回りコースとすれば、ダートコースでは東京競馬場以外はすべて小回りコースに分類できるのである。
下表は芝ダートの分類ではなく、小回り大回り別の成績を集計したデータである。

★コースの大小による勝率差・コース1週の長さ
前走→今走 総数 1着件数 勝率
小→小 227,617 16,746 7.4%
小→大 64,539 3,894 6.0%
大→小 69,049 5,087 7.4%
大→大 70,157 5,695 8.1%
合計 431,362 31,422 7.3%
競馬場 芝外 芝・芝内 ダート
札幌 1,640.9 1,487.0
函館 1,626.6 1,475.8
新潟 2,223.0 1,623.0 1,472.5
福島 1,600.0 1,444.6
東京 2,083.1 1,899.0
中山 1,839.7 1,667.1 1,493.0
京都 1,894.3 1,782.8 1,607.6
阪神 2,089.0 1,689.0 1,517.6
中京 1,705.9 1,530.0
小倉 1,615.1 1,445.4


ご覧のとおり、小回りコースから大回りコースに転じた競走馬の成績は、概ね苦戦していると言えるだろう。
大回りコースほど駆け引きよりも底力が問われる。
換言すれば、小回りコースは多少の運不運や有利不利により勝利のチャンスが生まれやすいということでもある。
データではそのことを如実に示しているのだ。
飛び抜けた実力の持ち主でなければダートのほうが「勝つかもしれない」確率は高まると思われ、チャンスに賭けて参戦する馬もいると考えられる。

▼法則の見つけ方
冒頭に示した表から、わたしは以上のような推論を頭に描く。
描いたら、その裏付けを進める。
この例のような試行錯誤は膨大な数にのぼり、ふるいにかけ、僅かに残った有効性の高い結論を積み重ねてきた。
わたしは、競馬予想に関するなにがしかの法則というものを、このような試行錯誤を繰り返して見つけている。
仮説と検証なしには新たな地平は拓けないと思っている。
それは、今も続いている。
(SiriusA+B)

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