2022年2月20日日曜日

第366夜 疾病のあと

 鼻出血、心房細動

競走馬が競走中あるいはその前後、また中間に、疾病(しっぺい)を発症することがある。
わたしの場合、疾病の中でも骨折や跛行のような怪我のほうを早く覚えた。
競馬予想の初心者だったころには、前脚だと肩跛行、後脚だと寛跛行とか、ソエとか、分かりやすいものだった。
いわゆる「病気」に近い印象のものは、例えば鼻出血など、大した話だと思わず気にも留めなかったのだが、競走馬に対する理解が進んでくると、実は競走馬にとってたいへんなことだと知るようになった。
競走馬の場合、内因性鼻出血は、人間の男の子が「鼻血でた」とか言って「ああ、興奮しているのね」と返すような軽いものではない。
今となっては笑い話ではある。
誰から教えてもらうものでもないので、早々に知識を得る人もいるだろうし、わたしのように競馬を始めてから何年間も経って知る人だっている。

主催者の発表による競走の出来事では、骨折や筋などの断裂のほか、感冒・フレグモーネ・蕁麻疹での出走取消、鼻出血、外傷性鼻出血、心房細動、跛行、脱臼、挫創、裂創、挫跖、打撲傷といった事細かな疾病が記載されている。
競走中に発症すると、わたしたちには予測できないこともあって、競馬はやはりギャンブルだと再認識するのだが、疾病を経験した馬は、その後どのような競走成績を修めるのか、気になっていた。
内容が内容だけに調査資料のようなものがなかなかなくて、少しだけ調べてみたことがある。
予想の参考になるようなら本格的に調べるつもりだったが、調査量が微妙に少なくて参考になるかどうかの判断がつかないまま放置していたのである。
今夜はその抜粋である。

下表は、約1年間くらいの競走成績から手拾いしたものだ。
疾病をすべて拾い出すと夥しい数になるところ、鼻出血と心房細動に絞っている。
調査期間中に同一馬が同じ疾病を繰り返すこともあるが、「延べ」ではなく「実」頭数にした。
鼻出血は再発しやすいので、主催者発表では2回目、3回目と発症回数が記載される(出走停止期間が異なるため)
疾病 サンプル頭数 再出走頭数 勝ち馬頭数 出走回数 勝利回数 再走率 勝率 勝ち馬率
鼻出血(除外傷性) 56 31 10 249 13 55.4% 5.2% 32.3%
心房細動 19 10 2 88 6 52.6% 6.8% 20.0%

集計してみると、競走馬にとってたいへんなことなのだと改めて思い知らされる。
どちらの原因でも、発症後再び出走にこぎつけたのは約半分である(障害競走に転出した馬もいるけれど、中央競馬平地競走から「引退」したことを表わす)
勝率は7%くらいが平均なので、やや低い。
勝つ馬は複数回勝つこともあるが、勝ち馬率もやや低いと思う。
これには集計上の問題がある。
該当馬の多くが古馬なのである。
ということは、1度は勝ったことのある馬が多いということだ。
2
割、3割といった「勝ち馬率」を高いと評さないのは、1勝クラス以上の馬に限れば「勝ち馬率」が高いからである。

予想ファクターに活かせるかもしれないが、データは少ない
このサンプル調査によって、出走にこぎつけた馬はやはり陣営が期待している相応の馬であること、それでも割引が必要なことが分かる。
軽症ということもあろう。
さらに詳しく調べ、同じ「鼻出血」でもどのような場合に期待できるかが分かるようなら、予想ファクターとして良いものができる気がする。
例えば、出走間隔や中間の調教、馬齢などを組み合わせることで一定の傾向を掴めるかもしれない。発症以降の競走成績との相関を調べることで予測もできるというものだ。
ただ、サンプルそのものが少ないのである(多いと困る話だが)
ある程度のデータが無いと信頼がおけないので、わたしはその点で足踏みをしたのである。
データを集めるのも相当な時間的犠牲を払う。

わたしたち素人には分からないことだが、競走馬は満身創痍でレースに臨んでいる、というのが現実である。
そもそもすべての競走馬が、出走にこぎつけ、無事にゲートを出て、まっすぐ走らせるだけでもたいへんなことなのだ。
人間のスポーツ選手を見れば想像はつくと思う。
スポーツは好敵手との競争だけではない。
自身のコンディション、加齢、怪我との闘いでもある。
競馬でも、出走馬間の比較だけでは不十分だと思うのだがいかがだろうか。
口のきけない馬だからなおのこと。
(SiriusA+B)

2022年2月13日日曜日

第365夜 タイキシャトルはパドックの入り口で嘶く(いななく)


▼他馬を威圧するタイキシャトル
伝聞によれば、タイキシャトルはパドックで嘶くと、必ず勝ったという。
嘶くことをしなかったのは2回で、いずれも敗戦したそうだ。
パドックでは調子を見るというが、こういう癖を見抜くことが要点であるとわたしは考えている。

いわゆるパドック派ではないので断定は差し控えるが、パドック「だけ」で勝ち馬を見つけることは相当難しいだろうと思う。
人間の、例えば100m走やマラソンで、スタートラインに立った選手を見て誰が優勝するのか言い当てることが難しいのと同じである。
詳しい人でなければ見知った選手でさえ少なく、手をブラブラさせたり首など柔軟運動したりしているのを見ても何も分からないだろう。
相馬眼以前の問題である、とわたしは思う。

▼パドックで何を見るのか、は分からないが見たものをどうするか
では、パドックを見ることは競馬予想の役に立たないのか。
その考えにも違和感がある。
どうも相馬眼というのは神秘的な表現で語られることが多いようにわたしは思っているが、きちんとデータベース化しておけば誰でも(自分にとって)有用かどうか分かると思う。
データベース化というと大袈裟だが、要するに記録して活用できるようにしておくことである。
予め目星を付けた馬が好調か不調か、という個々の馬の時系列と、どういう仕草を見せた馬が好走するのかという一般的な判断のふたつは、パドックならではの情報である。
これを手元で整理していれば武器になるのだ。

例えば、馬Aについて、整容、仕草、馬具などをメモする。
2021
153R 冬毛、嘶く、深いブリンカー。
で、レース後、結果を付加する。
12
着、終始外を回る、と。

パソコンの表計算ソフトを手軽に利用できる時代だから、これらを整理し入力しておけば、馬Aの履歴も分かるし(いつも嘶いているな、とか)、嘶いた馬がどのくらい勝利或いは馬券に絡むか集計することも容易になる。
表計算ソフトに記述すればオリジナルのパドック情報を構築できる。
鼻を鳴らすのは勝てない可能性が高いようだ、2人曳きは好勝負、などと分かってくるだろう。
勝率や連対率、或いは速度といった結果との相関性を示した数値情報であれば、ご自身の予想に接続することもできる。
「パドック派」の解説ではこの辺り、すなわち結果との関係蓄積した情報の使用方法に関する記述を省略していることが多い印象を持っている。
パドック派には当然のことでも、わたしたちには当然ではない。
ちなみにパドック派の人が不親切なのではなく、見るべきポイントに焦点を当てて指南しているからである。

手間がかかる?
忙しいので調べられない?
わたしなら、頬杖ついてこう返すだろう。
そうだよね、忙しいよね。
本気で研究している人に勝てなくても仕方ないよね。
(SiriusA+B)

2022年2月6日日曜日

第364夜 新馬戦の出走履歴からレースレベルの偏りを考察する

 

新馬戦だけを見ると
予想者の中には、クラス別というものにこだわりを持っている方もいる。
わたしはこのブログでクラスについて書いたことはほとんどないけれど、いつか整理して予想ファクターのひとつとして記事のひとつも書きたいと思っている。
ただ、主催者の区分そのままでは目が粗いという気もする。
未勝利戦など、2歳の北海道開催と3歳最後の頃では質が大きく違い、ひと括りにするのはあまりお薦めしない。
新馬戦も同様である。
一覧表を作ると重すぎるので、今夜は数字は挙げずに傾向だけ触れていきたいと思うが、少し区分を細かくして考えてもらえるようなら幸いである。
数字を出さないから適当というものではない。
10年分以上の新馬戦3,323競走を調べている。
結果を総論として申し上げると、もう少し偏っていないと思っていた(出走馬の粒が)
同じ条件でもバラツキがあり、難しさを改めて感じた次第である。

傾向
新馬戦の調査では、前夜とよく似ているが「そのレースで生涯勝利した頭数」というものを見た。
要するに勝ち上がり率である。
参考として、出走回数や勝利数なども調べている。
労多くして記事ひとつである。

先ず、新馬戦デビューの馬は、前夜の話からすると3分の1くらいが勝ちあがると推定できるが、実際にはわずかにこれを上回る。
未勝利戦からデビューする馬もいるからだと思われる。
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勝クラスからというのもいるにはいるが、極めて稀で集計上の影響は小さいからそうなる。

1
レース当たりの勝ち上がり率は算出した率の単純平均で35%強というところだが、9割の馬が勝ち上がったり、18頭中15頭が勝ち上がったりするレースもある。
一方で、そのレース1勝のみ、すなわち、1頭がそのレースで勝っただけで、その馬を含む出走前場がその後勝つことができなかったというレースも4%弱あった。
新馬戦25レースに1レースはぱっとしないものだったということである。
開催場所では、京都・阪神・東京はやはり高く、北海道開催も高率であった。

中央開催でも中山競馬場は少し見劣りする。
ダートが小回りの上、芝も変則的であることから、求められる力が少々違うのかな、とも思う。
東西でも西が強く、西高東低は明確である。
西>東、北海道・中央>地方、というのが開催場所に関するまとめだ。
興味ある方は、代替開催のある場合も考慮してより精査してもらえればと思う。

レースの開催時期でもはっきりした傾向はある。
北海道開催で強いのは、当然同時期の他場よりもいい馬がそろっていると推定されるが、早く仕上がった馬は有利だということもある。
デビューの早い馬は、出走回数も多めの傾向が出ている。
チャンスは多いということであろう。
逆に、デビューが遅れると出走回数も減っていき、勝ち上がり率は下がってくることも確かだ。
クラシック出走など大きな期待を掛けられた馬は、夏の北海道や秋の中央開催でデビューさせている。

将来を見据えてのことで、クラシック出走から逆算してデビューさせているとみていい。
馬を見る目がないわたしでも、この時期のデビュー馬には注意を払う。

芝とダートでは、やや芝のほうがいいかなという感じだった。
距離もややぼやけた傾向である。
調教師がクラシックなどの花形路線を断念し、ダートでデビューさせるというのはあるだろう。
適性だという人もいるが、それももちろんあるだろうが、「まだ足もとがパンとしなくてね」などと言っていても、ダートから芝路線に切り替える馬は稀であり、察してほしいというところだろう。
マイル戦や長距離戦は勝ち上がり率がいいのだけれども、短距離戦もそれほど悪くない。
これはそのカテゴリーで路線を変えなければソコソコ勝負になっていることを示している。
1800m以上>芝マイル>芝短距離、とか、ダート1800m>ダート1800未満といった傾向はあるが、ダート1000でも勝ち上がる馬は少なくない。
この世界にG1級の馬はほとんどいないのだ。

最後はやはり個体か
以上のような傾向はある。
新馬戦と一括しないで、もう少し区分けしたほうがよさそうであるというということがお分かりいただけただろうか。
だが、東京芝2000mでも、出走馬のその後はさっぱりなんていうこともあるから一概に言えないけれど、関係者の視点に立って「なぜここでデビューするのか」と考えてみれば、期待の度合いというのも分かるだろう。
それでも、最後はどうしても個体分析に行きつく。
レベルの高そうな新馬戦に出走したからといって、出走馬すべてがハイレベルではない。
そうした意味で、忙しくてもレースのリプレイを見られればと思う。
栴檀は双葉より芳し、という。
百聞は一見に如かず、わたしの経験では、かなりの効率で当該レースの勝ち馬や将来勝ち上がる馬を見つけることはできる。
そのノウハウは、今のところ伏せておく(簡単すぎるので)
(SiriusA+B)

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