2022年7月31日日曜日

第378夜 お母さんは外国馬


▼マルゼンスキー
374夜の話題と少々重なる話題である。
日本ダービー(東京優駿)に出走できなかったマルゼンスキーの誕生から、間もなく半世紀になろうとしている。
通算88勝、当時の外国車ブームにかけて「スーパーカー」の異名を取り、出走の意向が広まると出走回避馬が続出する怪物であったという。
成績は、数字以上の凄まじいものであった。
この頃は、現在と比べ物にならないほど外国産馬の出走制限があったから、クラシックには出走できなかったのである。
「大外でいい、賞金もいらない、他馬を邪魔しないからダービーで走らせてほしい」という趣旨の主戦騎手のことばは、現在にも語り継がれている。

このマルゼンスキー以降も外国産馬は「外車」などと呼ばれ(当時は、今ほど外車が身近ではなく、かなりの高級車ばかりで、その分性能も高かった)、中央競馬を席巻してきた。
輸入量は、国内産馬の質の向上で長期トレンドでは減少傾向にあるものの、生産面で血統の更新の必要性から、完全にゼロになることは当分ないだろう。
今なお、外国産馬、いわゆる「マル外」は国内産馬の平均よりも成績が良いようだ。
当然である。
これは、国内の馬産技術や血統の問題ではない。
輸入するからには肌馬をよく吟味していて、より高い確率で良馬を産出するからに過ぎない。
国内産駒の質的向上により、その差は縮小しているかもしれないが、中級クラス馬くらいまでなら結構明確に差を感じる。
したがって、経済の仕組みから、「マル外」の平均成績が国内産駒の平均成績を下回るということは、ない。

JRA
がパートⅠ国になるとともに、外国産馬、いわゆる「マル外」や、外国調教馬、いわゆる「カク外」の出走するレースの数は増やされてきた。
あまり気にしない人もいるが、「混合」競走は「マル外」が、「国際」競走は「マル外」と「カク外」が出走できる。
一般的な傾向として、混合・国際競走は同じクラスであっても、ややレベルが高いのはこのためである。
外国馬の出走制限は、国内の馬産振興が大義であるが、競馬予想者としてもこの点に注目して損はない。
国内産駒の平均と外国産馬の平均では差があるからレースを分けているのである。
牝馬限定戦やハンディキャップ競走は分かりやすいが、混合・国際競走もまた、競走レベルの見極めには重要な役割を果たしている。

▼母馬の区分
ところでこの外国産馬「マル外」の定義は、競馬予想には少しばかり物足りない区分である。
マルゼンスキーの時代には持込馬、すなわち受胎した母馬の輸入後、出産された馬(1歳未満の母馬の連れ仔)も「マル外」とされていた。
マルゼンスキーの前後の時代には、持込馬は内国産馬扱いで、マルゼンスキーは不運でもあった。
定義は変わるのだ。
さらに言えば、現在でも、一旦輸入された母馬が生んだ馬も外国産ではなくなる。
例えば、繁殖牝馬パーフェクトトリビュート産駒のロードフェイム(2014年産)は「マル外」だが、ロードマックス(2018年産)は「マル外」ではない。
こうした例から考えると、自身で定義するほうが区分しやすいだろう。
わたしなら、細分化は読者の皆さんにお任せするとして、「母馬が外国調教馬(日本国内の競走に未出走または「カク外」)の産駒」などと定義する。
「母外(ハハ外)」とでも言おうか。
実際に集計してみると、母外産駒は、競走馬全体平均に比べ概して良績であることが分かるだろう。
もちろん、母外産駒ならすべて良いとか、そういうことは言わない。
揃った情報がないので地道に調べていくしかないが、努力は馬券に直結する。
少なくとも血統だけでは説明できない種雌馬個体の違いを実感するだろうと思う。
(SiriusA+B)

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