2022年12月11日日曜日

第398夜 馬券は二十歳になってから、騙馬は古馬になってから

 

▼いつ騙馬になったのか
騙馬は牡馬と一緒にして分析することが多いわたしだが、これはブリンカー(遮眼革)などと同じ矯正手段のひとつと考えているからである。
実際問題として、騙馬にすることをためらう風土が日本にはあって、数が少なく充分な分析をしにくいこともある。
それを承知で、わたし自身が抱いている仮説を検証しようとする。
仮説とは、
(1)
ほとんど競走成績のない時期に去勢される騙馬は、競走能力或いは競走の適性に難があるのではないか。
(2)
騙馬になって変わり身はあまりないのではないか。
というものだ。

2011
年から2021年までの中央競馬に出走した騙馬は、取り消しや障害競走を含めて2,714頭である。
このうち、デビュー戦から記録のある2009年産駒以降で、騙馬になって最初の競走(これをここでは「第1走」という)を平地競走で完走できたのは2,112頭だった。
なお、(中央競馬平地競走の)デビュー戦から騙馬だったのは487頭いる。
図表398-1にまとめたが、この2,112頭の第1走では、71頭が勝利した。
勝率は3%である。
7%が平均なので、低い数字ではある。
デビューから騙馬だった487頭も勝率3%であった。
関係者の判断理由はいろいろとあるだろうが、素質はあっても競走に集中できないなどの問題があるのだろう。
去勢はしたものの、「期待ほどの成績は挙げられなかった」とみるか、「出走さえ難しいと思っていたが3%も勝利できた」とみるか。
ただ、仮説(1)のとおり、早いうちから騙馬になる馬は割引、というのが馬券を購入するわたしたちの判断になろう。

では、ある程度の戦績があった馬が騙馬になった場合はどうか。
サンプルが少ないので、第5走以降、ときどき勝率の高い場合が散見されるが、詳しく見るために出走クラス別で成績を見たのが図表398-2である。
これもサンプルが少なく(同じデータなので)、軽々に判断はできないが、図表398-1と組み合わせて考察すると、古馬になってからのほうが23歳限定戦(このブログでは「同歳戦」という場合がある)よりは良績だと分かる。
それも条件戦に集中しており、このことから、古馬で騙馬になった馬は「もう一息で勝ち敗けになる」と考えられたからではないかという推測が立てられる。
勝率が低いとはいえ、古馬になってからの騙馬は「変わり身があった」としてもよい気がする。
これが、仮設(2)の検証である。

(
図表398-1)騙馬になるまでのキャリア別勝率(2011-2021年中央競馬平地競走で2009年産駒以降)

出走までの平地完走回数 頭数 第1走勝利頭数 勝率
0 487 17 3%
1 167 4 2%
2 166 2 1%
3 146 5 3%
4 134 2 1%
5 110 10 9%
6 120 3 3%
7 87 5 6%
8 76 0 0%
9 81 2 2%
10 61 3 5%
11 66 2 3%
12 49 2 4%
13 52 1 2%
14 40 4 10%
15 48 3 6%
16 31 0 0%
17 26 2 8%
18 21 2 10%
19 26 0 0%
20 18 1 6%
21 15 0 0%
22 11 0 0%
23 12 0 0%
24 13 0 0%
25 4 0 0%
26 8 0 0%
27 7 1 14%
28 6 0 0%
29 2 0 0%
30 4 0 0%
31以上 18 0 0%
合計 2,112 71 3%

(図表398-2)

第1走出走クラス 完走件数 勝利件数 勝率
2歳新馬 205 8 4%
2歳未勝利 64 2 3%
2歳1勝クラス 2 0 0%
2歳オープン 0 0 0%
3歳新馬 108 3 3%
3歳未勝利 630 15 2%
3歳1勝クラス 17 0 0%
3歳2勝クラス 0 0 0%
3歳オープン 2 0 0%
4歳上1勝クラス 281 13 5%
4歳上2勝クラス 54 6 11%
4歳上3勝クラス 20 0 0%
4歳上オープン 16 0 0%
3歳上1勝クラス 508 18 4%
3歳上2勝クラス 125 5 4%
3歳上3勝クラス 44 1 2%
3歳上オープン 36 0 0%
合計 2,112 71 3%
古馬1勝クラス計 789 31 4%
古馬2勝クラス計 179 11 6%
古馬3勝クラス計 64 1 2%
古馬オープン計 52 0 0%
同歳戦 1,028 28 3%
古馬戦 1,084 43 4%

▼第2走で更なる変わり身は観測されるか
1走、第2走と平地競走を完走した馬は1,815頭いる。
図表398-3に、この2走の着順の変化をまとめた。
グラフにすると美しい紡錘線を描く。
残念ながら、第2走で成績があがった気配はないということである。
図表398-4では、クラス別に勝率をみている。
2走のほうが勝利数は多く、勝率も上がるけれど、図表398-3と併せて考察すると、これは次走に進めなかった馬の淘汰による影響で、騙馬になって2走目には更なる変わり身があった、とはならない可能性があるということだ。

以上から、
・デビュー前或いはデビューから間もない時期に騙馬になった馬と、古馬になって騙馬になった馬では去勢された背景が異なる。
・前者よりは後者の方が期待できる。
・騙馬2走目は変わり身があるようには思えず、他の牡馬と同様に前走成績に基づき予想すればよく、騙馬だからと割り引いたり加点したりして考えるほどではない。
と、わたしは考えている。

(
図表398-3) 1走と第2走の着順変化(2011-2021年中央競馬平地競走で2009年産駒以降。2走とも平地競走の場合)

第1走と第2走の着順比較 頭数
第2走が第1走より着順が17上(18着から1着になった) 0
第2走が第1走より着順が16上 1
第2走が第1走より着順が15上 2
第2走が第1走より着順が14上 4
第2走が第1走より着順が13上 9
第2走が第1走より着順が12上 7
第2走が第1走より着順が11上 10
第2走が第1走より着順が10上 21
第2走が第1走より着順が9上 42
第2走が第1走より着順が8上 34
第2走が第1走より着順が7上 47
第2走が第1走より着順が6上 66
第2走が第1走より着順が5上 91
第2走が第1走より着順が4上 89
第2走が第1走より着順が3上 130
第2走が第1走より着順が2上 133
第2走が第1走より着順が1上 165
第1走と第2走が同順位 186
第2走が第1走より着順が1下 167
第2走が第1走より着順が2下 128
第2走が第1走より着順が3下 110
第2走が第1走より着順が4下 103
第2走が第1走より着順が5下 65
第2走が第1走より着順が6下 61
第2走が第1走より着順が7下 42
第2走が第1走より着順が8下 34
第2走が第1走より着順が9下 27
第2走が第1走より着順が10下 19
第2走が第1走より着順が11下 10
第2走が第1走より着順が12下 8
第2走が第1走より着順が13下 2
第2走が第1走より着順が14下 1
第2走が第1走より着順が15下 1
第2走が第1走より着順が16下 0
第2走が第1走より着順が17下 0

(図表398-4)クラス別第1走・第2

第1走出走クラス 完走件数 勝利件数 勝率 第1走が平地競走完走馬の第2走出走クラス 完走件数 勝利件数 勝率
2歳新馬 205 8 4% 2歳新馬 0 0 0%
2歳未勝利 64 2 3% 2歳未勝利 163 7 4%
2歳1勝クラス 2 0 0% 2歳1勝クラス 6 0 0%
2歳オープン 0 0 0% 2歳オープン 5 0 0%
3歳新馬 108 3 3% 3歳新馬 0 0 0%
3歳未勝利 630 15 2% 3歳未勝利 641 23 4%
3歳1勝クラス 17 0 0% 3歳1勝クラス 19 3 16%
3歳2勝クラス 0 0 0% 3歳2勝クラス 0 0 0%
3歳オープン 2 0 0% 3歳オープン 1 0 0%
4歳上1勝クラス 281 13 5% 4歳上1勝クラス 260 13 5%
4歳上2勝クラス 54 6 11% 4歳上2勝クラス 62 9 15%
4歳上3勝クラス 20 0 0% 4歳上3勝クラス 24 0 0%
4歳上オープン 16 0 0% 4歳上オープン 19 1 5%
3歳上1勝クラス 508 18 4% 3歳上1勝クラス 438 27 6%
3歳上2勝クラス 125 5 4% 3歳上2勝クラス 109 7 6%
3歳上3勝クラス 44 1 2% 3歳上3勝クラス 47 4 9%
3歳上オープン 36 0 0% 3歳上オープン 21 1 5%
2,112 71 3% 1,815 95 5%
古馬1勝クラス計 789 31 4% 古馬1勝クラス計 698 40 6%
古馬2勝クラス計 179 11 6% 古馬2勝クラス計 171 16 9%
古馬3勝クラス計 64 1 2% 古馬3勝クラス計 71 4 6%
古馬オープン計 52 0 0% 古馬オープン計 40 2 5%
同歳戦 1,028 28 3% 同歳戦 835 33 4%
古馬戦 1,084 43 4% 古馬戦 980 62 6%
(SiriusA+B)

ブログ アーカイブ