2022年12月18日日曜日

第399夜 倍々ゲームはほんとうにやめておいたほうがよい

 

▼ランダムの恐ろしさ
2020
年の夏のことである。
札幌競馬場では、1番人気が34連敗する珍事があった。
2020
823日の第5競走(新馬戦)1番人気が勝ったあと、6レース以降、1番人気の馬が敗れ続けたのである。
829日、830日には1番人気が全敗、95日第3競走まで1番人気が敗れ34連敗となる(1着同着が1レースあるので34レース35)
5競走でようやく1番人気が勝利した。

2006
年から2021年まで16年間、障害競走を含み全55,258レースを競馬場ごとに1番人気の敗戦記録を調べたのである。
同着は70頭おり、勝ち馬の数は延べ55,328頭であった。
1
番人気の連敗は、わたしが予想していたよりも多くて驚いた。
わたしが競馬を始めたころ、いろいろと手解きしてくれた友人が「1番人気は11連敗したことがあるよ」と言ってくれたことをずっと記憶していた。
競馬場ごととか、日ごととか、いろいろな集計方法があるにせよ、トレンドに大きな差があるわけではない。
1
番人気は、およそ3回に1回は勝つということであるから、11連敗というのは稀な例だろうと思い込んでいた。
百聞は一見に如かず、実際に調べてみたところ、驚いた。
11
連敗どころか、20連敗以上したのが35連敗1度を含んで9回あり、20連敗以上を含む13連敗以上が118回ある。
こんなにランダムなの……。
絶句である。

ふだんから馬券購入前に人気を気にしたことがない(人気によって買い目が変わらない)のだが、これほど連敗することがあるとは思いもよらなかった。
読者の皆さんがどうか1番人気で倍々ゲーム(マーチンゲール法)をしませんように、と願わずにはいられない結果であった。
最初の投票を100円でスタートして、わたしが信じていた「11連敗」なら12回目に204,800円を賭ければ済む(それもダメだろ)が、35回目であれば、17,1798,6918,400円を投じることになる。
35
回目までに17,1798,6918,300円費やしているうえでの投票だ。
財布が3.5兆円ないとできない芸当である。
近年の有馬記念の売上は500億円であるから、途方もない数字だ。
日本の国家予算、一般会計の歳出でさえ110.3兆円で、このお財布なら防衛費も賄えてしまう。
自らの投票で百円返しになるが、34連敗で止めた202095日札幌第4競走勝ち馬のオッズ単勝2.0倍で計算しても、儲けは100円である。

(
図表399-1)2006-2021年の1番人気成績(障害競走含む、同着考慮済み)

競走数 55,258
勝利頭数 55,328
勝利回数 17,782 32.2%
連対率 28,287 51.2%
複勝率 35,348 64.0%

(図表399-2)2006-2021年の1番人気連敗
(表の見方)連敗数が2の場合、2連敗は8,208回あり、2連敗で終わったのがこのうち2,662回ある

連敗数 内容 回数 連敗回数
0 連続して1人気勝利 17,788 5,729
1 2レース目で1人気勝利 12,059 3,851
2 3レース目で1人気勝利 8,208 2,662
3 4レース目で1人気勝利 5,546 1,769
4 5レース目で1人気勝利 3,777 1,282
5 6レース目で1人気勝利 2,495 788
6 7レース目で1人気勝利 1,707 536
7 8レース目で1人気勝利 1,171 382
8 9レース目で1人気勝利 789 253
9 10レース目で1人気勝利 536 166
10 11レース目で1人気勝利 370 118
11 12レース目で1人気勝利 252 84
12 13レース目で1人気勝利 168 50
13 14レース目で1人気勝利 118 30
14 15レース目で1人気勝利 88 34
15 16レース目で1人気勝利 54 18
16 17レース目で1人気勝利 36 11
17 18レース目で1人気勝利 25 7
18 19レース目で1人気勝利 18 4
19 20レース目で1人気勝利 14 5
20 21レース目で1人気勝利 9 1
21 22レース目で1人気勝利 8 1
22 23レース目で1人気勝利 7 4
23 24レース目で1人気勝利 3 1
24 25レース目で1人気勝利 2 1
25 26レース目で1人気勝利 1 0
26 27レース目で1人気勝利 1 0
27 28レース目で1人気勝利 1 0
28 29レース目で1人気勝利 1 0
29 30レース目で1人気勝利 1 0
30 31レース目で1人気勝利 1 0
31 32レース目で1人気勝利 1 0
32 33レース目で1人気勝利 1 0
33 34レース目で1人気勝利 1 0
34 35レース目で1人気勝利 1 1
35 36レース目で1人気勝利 0 0
55,258

(図表399-3)倍々ゲームの賭け金額(100円スタート)

倍々ゲームの賭け金額(円)
1回目 100
2回目 200
3回目 400
4回目 800
5回目 1,600
6回目 3,200
7回目 6,400
8回目 12,800
9回目 25,600
10回目 51,200
11回目 102,400
12回目 204,800
13回目 409,600
14回目 819,200
15回目 1,638,400
16回目 3,276,800
17回目 6,553,600
18回目 13,107,200
19回目 26,214,400
20回目 52,428,800
21回目 104,857,600
22回目 209,715,200
23回目 419,430,400
24回目 838,860,800
25回目 1,677,721,600
26回目 3,355,443,200
27回目 6,710,886,400
28回目 13,421,772,800
29回目 26,843,545,600
30回目 53,687,091,200
31回目 107,374,182,400
32回目 214,748,364,800
33回目 429,496,729,600
34回目 858,993,459,200
35回目 1,717,986,918,400
36回目 3,435,973,836,800


3着以内の最高人気と最低人気
ということで、最近調べていた「テールリスク」の話はお蔵入りとした。
テールリスクとは、滅多に起こらない事象がもたらす大きな影響のことで、投資などの世界で用いられることばである。
1
番人気の10連敗など「ざらにある」のだ。
テールリスクどころか、「頻繁にある現象」と言ってもいいかと思う。

別の話題として、複勝圏内の話をひとつ。
同じデータセットで123着馬の組み合わせで最低人気と最高人気を確認した。
最低人気が3番人気ということは、123番人気で決着したことを意味する。
図表4を参照すると、その割合は、8.6%であった。
最低人気が4番人気だと、124番人気、134番人気、234番人気の3通りが考えられ、その合計割合は全レースの12.4%である。
3
連複の組合せ数で考えればよいのだが、最低人気が7番人気以降は組合せ数が増えていくけれども的中割合が低下していく。
3
連複なら1番人気から6番人気のすべての組み合わせ、BOX20通りを買えば、レース的中率は48.1%であることを示している。
比較的堅めに勝負するなら、このあたりまでの組み合わせの中から選択するのがいいかもしれない。

ちなみに、最高人気で13番人気となっているのは131416番人気で決着したレースである。
2010
710日、函館第5競走で、16頭立て、3連複の払い戻しは193,540円、339番人気だった。
3連複の人気薄にしては、ずいぶん低い払い戻しだな」と思う方がいるに違いない。
それもそのはず、このレース、馬番で言えば、123番の内側3頭だったのである。
「適当に」買った人も少なくなかったと思われる。

(
図表4)123着馬の最低人気と最高人気(2006-2021年、障害競走を含む、同着考慮済み)

最低人気 競走回数 割合 (参考)組合せ
3 4,758 0.086 [1,2,3]の1通り
4 6,856 0.124 [1,2,4][1,3,4][2,3,4]の3通り
5 7,472 0.135 [1,2,5][1,3,5][1,4,5][2,3,5][2,4,5][3,4,5]の6通り
6 7,511 0.136 [1,2,6][1,3,6][1,4,6][1,5,6][2,3,6][2,4,6][2,5,6][3,4,6][3,5,6][4,5,6]の10通り
7 6,491 0.117
8 5,611 0.102
9 4,601 0.083
10 3,675 0.067
11 2,813 0.051
12 2,073 0.038
13 1,435 0.026
14 943 0.017
15 598 0.011
16 314 0.006
17 72 0.001
18 35 0.001
レース数計 55,258
最高人気 競走回数 割合
1 35,348 0.64
2 11,307 0.205
3 4,753 0.086
4 2,092 0.038
5 941 0.017
6 418 0.008
7 212 0.004
8 99 0.002
9 58 0.001
10 13 0
11 10 0
12 6 0
13 1 0
14 0 0
15 0 0

レース数計 55,258

(SiriusA+B)

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