2023年7月23日日曜日

第425夜 人の褌(ふんどし)で相撲を取る


▼善悪とか、要らないから
できれば時間も労力も節約して儲けたい。
本音では、人は誰しもそう願う。
日頃、競馬の研究に余念のない人は、「それでは身に付かない(から長期的には黒字収支を維持できない)」と思っている。
わたしもそう思う。
思うが、他人様(ひとさま)の予想で馬券を買うのは、いけないことなのか。
これには「ちょっと待った」とわたしは言うだろう。
いけない、との主張には混乱というか混同があると思うのだ。
何も考えず他人の予想に乗ることが「ラクをする」ことである。

この姿勢に苦言を呈すには分かるが、他人の予想を研究し活用するのと切り分けて考えることはできないだろうか、と思っている。

予想は、独力でするか、他の意見を参考にするか、鵜呑みでするか、のいずれかである。
独力でも鵜呑みでも極端で、大勢は他者の意見を参考にすると思われる。
参考にするのは、予想家、予想記者の印や予想会社の提示などがある。
近年は個人も積極的に発信するので、これを参考にする人もいる。
自力でない、という点では、オッズもそうだし、人工知能AIも他者の予想だ。
有料か無料か、プロかアマか、人間かコンピュータか、個人か集団か、違いがあるようでも、参考にする予想という点では一緒なのである。
どれが良くて、どれがダメなのか、善悪で判断する考えは思考を縛り先入観を持ってしまうのでやめておいた方がいい。

▼データ収集
先ず、参考にする予想を選び出さなければならない。
できるだけ、平地競走全レースを予想しているものを探す。
メインレースなど限られた競走のみ公開している予想は除外する。
これらが上手い或いは下手な予想かどうかではなく、単に参考にできる数が少ないためである。
メディアに出てくる著名人の予想は主要レースだけだから、こうしたものは除く。
また、「1日限定数レース」というのも同様だ。

ほぼ全レースを予想しているものを抽出したら、予想の精度を検証する。
これが地味で地道な作業なのだ。
「ラクをしている」と批判されるのは、主にこの工程を省略するのを言う。
ひたすら、データをとっていく。
本音で言えば、1万レース分(ざっと3年ほど)くらいは予想が欲しいところだが、僅か1週の土日で最大72レースの予想は揃うから、とりあえずは、直ぐにでも実戦に投入できるだろう。

予想データ収集は、なかなか骨が折れる。
毎週、おそらく複数の資料やサイトからお目当ての予想印を手に入れる作業をしなければならない。
出走馬データと違い、予想データは予想者独自なので、それぞれ予想先に行かなければならないのだ。
有料のものなら、カネも掛かる。
競馬の結果データと異なり、レース後、直ぐに見えなくなる予想もある。
時間との勝負だが、メディア以外は約束された時間にアップする必要もないので、ギリギリまで予想が揃わない事態もある。
要するに、かなり面倒だということである。
加えて、後述するが、メンテナンスをこまめにやる必要があるし、自分の予想に活用する予想の入れ替えもある。
読者の皆さんには安心してほしい。
このデータ収集段階で8割から9割は断念する。
競合者は少ない。

▼検証する
予想データを収集し蓄積してきたら、印ごとに的中状況を検証していく。
わたしなら、記号ごとに勝率、連対率、複勝率などをまとめる。
ここで、記号とは無印も含む。
例えば、スポーツ紙Xの予想記者Zの印ごとの成績は以下のとおりであったとする。
予想記者Zの印=◎勝率19.6%15.1%12.0%9.0%5.8%
もうひとつ、無印がある。
無印は勝率2.5%だった、とする。
予想記者Zは、本命的中率は高いほうではないけれど、オーソドックスな印を打つ。
夏競馬のシーズンもあまり変わらない成績のようだ。
こういう情報を集めていく。

なお、こんなところでお断りもなんだが、他人様の予想は転載してはいけない。
予想も一種の創作物なのだ。
犯罪かそれに準じた問題であることを承知で転載し、「当たらない予想なんだからいいじゃないの」などという輩がいたら、言い返されないと思っている確信犯の犯罪者であるから言ってやってほしい。
「当たるか当たらないか、は問題ではなく、他人の創作物であることに変わりがない」と。
面白い映画とくだらない映画に海賊版の違法性は変わらないのと同じである。
わたしの、このブログについては、リンクを貼ったり数行程度引用したりするのは構わない。

▼総合する
ひとつの予想に乗るならともかく、複数の予想をまとめたいときはどうすれば良いだろうか。
できれば、複数の予想を合成したい。
あくまで解決方法のひとつだが、以下のようなやり方がある。
なお、勝率を用いるが、小数点を苦手な人もいると思うので100を掛けて分かりやすくする。
先程の◎19.6%なら「19.6点」としよう。
1)
出走馬すべての基礎点を7点とする。
2)
記者Zの印の勝率から7点を引く。なら19.6712.6点である。無印は勝率2.5%だから、2.57=-4.5点である。
3)
他の参考にする予想も一律に、勝率から7点を引く。
4)
出走馬それぞれ、基礎点と予想の点数を合計する。
以上だ。
出走馬中、最も高い点数の馬を貴方の本命とすればいい。
この方法だと、貴方の本命は人気馬になることが多いと思うが、割と安定した成績、勝てないときでも連対したり、3着以内に入ったりするだろう。
もちろん、参考にする予想本数、予想の質による。

▼弱点
「他人の褌予想法」は、実際のところ、素人のわたしたちが馬を見るより余程確かな方法ではある。
少し調べると分かるが、優れた予想家の印なら思わず乗りたいと思うだろう。
ただ、この方法の弱いところは、予想家の好不調やポリシーの変化をまったく読めない点だ。
速度や精度はともかく、人間の脳と人工知能の違いには、「処理能力のムラ」と「計算アルゴリズムの変更」がある、とわたしは思っている。
家事や仕事が忙しくて時間が割けなかったり、スランプ気味でつい手を広げすぎたり日和ったり、といった経験は誰しもあるだろう。
その解決策がスピード指数など、指数系と言われる予想群である。
予想家も、当然ながら、ムラも有ればアルゴリズムの変更も有る。
問題は貴方が制御できない点だ。

こうした「他人任せ」の弱点を補う方法として、投資の世界では、分散がある。
桁を言うのは問題があるので控えるが、資産運用に携わった経験から、分散投資の有用性を認識している。
異なる運用手法のファンドに少量ずつ投資する。
これにより、リスク(想定利回りの上下幅)を抑制できる。
波が打ち消しあって小さくなるイメージだ。
予想でも、できるだけ多くの予想を取り入れることで、何人かのムラもアルゴリズム変更も緩和できるのである。
下表では3予想を組み合わせた例を示しているが、実際にはもっと多くの予想を組み合わせるのが現実的だと思う。

もうひとつは、常に成績をウォッチし、スクラップアンドビルドをしなければならないことだ。
予想家でも人工知能でも、成績が下降すれば貴方の予想からは一旦外して別の予想家に入れ替える。
その後も見続け、成績が上がってくれば再び取り入れることもいい。
ムラ・アルゴリズムのような予想家の変化だけでなく、競馬そのものの変化がある。
毎年同じように見えても、プレーヤーは入れ替わっていくし、ルールも変わる。
例えば、この10年余りでも、騎手の時代、生産者の時代、など勝因分析すれば変化を感じることがあるだろう。
時代に合う予想スタイルもあれば、変化についていけていない予想スタイルもあるのだ。
(SiriusA+B)

(図表1)予想者の最近の成績(勝率)と7%を引いた数の例(単位%)
Z勝率 P勝率 Q勝率 Z平均差 P平均差 Q平均差
19.6 23.1 18.5 12.6 16.1 11.5
15.1 16.8 14.6 8.1 9.8 7.6
12.0 11.1 12.9 5.0 4.1 5.9
9.0 8.3 11.2 2.0 1.3 4.2
5.8 5.2 - -1.2 -1.8 -
- - 3.3 - - -3.7
2.5 2.4 2.6 -4.5 -4.6 -4.4

(図表2)16頭立て競走の他人の予想組合せ例
馬番 Z予想 P予想 Q予想 基礎点 Zポイント Pポイント Qポイント 合計得点 貴方の予想
1 7.0 2.0 1.3 4.2 14.5
2 7.0 -4.5 -4.6 -4.4 -6.5
3 ? 7.0 -4.5 -1.8 11.5 12.2 ?
4 7.0 -4.5 -4.6 -4.4 -6.5
5 7.0 -4.5 -4.6 -4.4 -6.5
6 7.0 8.1 4.1 5.9 25.1
7 7.0 12.6 16.1 7.6 43.3
8 7.0 -4.5 1.3 -4.4 -0.6
9 7.0 -4.5 -4.6 -4.4 -6.5
10 7.0 -4.5 -4.6 4.2 2.1
11 7.0 -4.5 -4.6 4.2 2.1
12 7.0 -4.5 -4.6 4.2 2.1
13 7.0 2.0 -4.6 -3.7 0.7
14 7.0 -4.5 -4.6 -4.4 -6.5
15 7.0 5.0 9.8 -4.4 17.4
16 ? 7.0 -1.2 -4.6 -4.4 -3.2

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