2023年7月2日日曜日

第423夜 オッズはファクターなのか


▼コロナのマスク
この記事を書いている時点からちょうど4年前、2019624日に、競馬予想で必要なファクターを3つしか選べないとしたら云々、というスレッドが立った。
2ch
とか5chとか、わたしは仕組みを知らないけれど、そういうところの過去ログ倉庫にあるそうだ。
調べ物をしていたところ、偶然見つけたもので、たいへん興味深いものだった。
ファクター3つを持ち寄って議論が進むものと思いきや、オッズは予想ファクターなのか、という話題で、2chらしい雰囲気で賛否の応酬が続く。
レス数は500弱、最後のレスは29日であったようだから僅か6日間で話題はしぼんだ。
本題の「予想ファクター3つ」については盛り上がらず仕舞いであった。

このスレッドで本題となってしまったのが「オッズは予想ファクターか」という問題である。
このブログをお読みになっている人の多くが、予想ファクターではない、と考えているとわたしは思う。
このブログでは善悪とか正誤といった私見を押し付けることはしないのだが、わたし自身は、「オッズは一次予想のファクターではない、一方で、購入戦略や二次予想のファクターとなっている」と考えている。
ちょっと分かりにくいかもしれないが、競馬予想は二段階に分かれていると考えることもできる。
狭義の競馬予想は「上位着順を予想する」もので、この記事ではこれを一次予想と呼ぶことにする。
一次予想では、競走馬や関係者などの戦歴や能力から、どの馬が1着になるか、或いは上位3頭になるかを予想する。
この一次予想でオッズは予想ファクターではない。
オッズが能力を表わしているわけではないという根本的な理由もあるが、どの馬が勝ちそうか、3着以内に入りそうかを投票した結果がオッズだからである。
スレッドの議論で、オッズは予想ファクターでないという主張は、わたしの考える限り上記の理由による。

スレッドの議論でかみ合っていなかったのは、おそらく次の段階である「二次予想」にある。
二次予想というのは、形成途中のオッズを見て最終オッズ(予想最終オッズ)を想像し、これをもとに購入戦略を決めることと、予想最終オッズを総合的な能力評価として活用し予想することである。
オッズを予想ファクターであるとする主張は、この二次予想にあると思われる。
専門紙やスポーツ紙の予想記者のおでん、本命の二重丸や対抗の丸印と同様に、或いは皆の予想が集約された精度の高い「予想印」として使う。
「オッズが最も重要なファクターだと分かった」などというコメントがあるように、二次予想をする人にとって確かに精度の高いものなのである。
もしも、形成過程のオッズが激しく乱高下するようなものであれば役には立たなかっただろうが、公表される早い段階でおおよその人気順は定まっていることもあって、締め切りギリギリまで見なくてよいという利便性がある。
二次予想を購入戦略だとする人もいるが、必ずしもそれだけではないという気がする。

競馬では、オッズが形成過程から公表されている。
確定まで非公表であるなら、二次予想は成立しないだろう。
現実には公表されているので、一次予想と二次予想が次々と加わり、オッズに反映されていく。
それを参考に投票する人がさらに投票し、締め切り直前までオッズは動く。

わたしには、「コロナのマスク」とよく似た現象に見える。
2023
58日から、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、感染症法上の5類に移行し、マスク着用が任意とされた。
移行前から、リスク等を勘案し、マスク着用をやめる動きがあったが、5類移行直後は少数派であった。
これが、新型コロナそのものの危険性から判断した一次予想にあたる。
次第に着用しない人が増えてきたのを見て、安全だと考える人が出てくる。
これが二次予想に該当する。
マスク着用の傾向は、新型コロナの危険性と何ら関係ないのだけれど、「皆が安全と考えるから安全だろう」という発想である。
こうした考え方が、正しいとか正しくないとかではなく、一定割合で存在しているのである。

▼二次予想の損得
スレッドや、そのほかの資料やデータをわたしなりに総合すると、こうした二次予想の割合というのは大きいようである。
競馬は世間の鏡だとすれば、前項のマスク着用の例で考えても結構な割合だと想像できる。
競馬をする人がすべて競馬に詳しいわけではないのだ。
はっきり言えば、馬券を買って儲かりさえすればよく、下手な一次予想より二次予想のほうが効率は良い。
オッズに、好みの専門家や専門紙の予想を総合するのも、(二次)予想である。
これをライトな競馬ファンだとすると、かなりの比率になることは想像に難くない。

問題は、二次予想者が儲かるのかという点だ。
中にはオッズから人気の馬券を避け、人気薄の馬券を買う天邪鬼もいるが、刻々と変化するオッズを見て別の人が投票し、どうやら過剰人気や穴が修正されていくようである。
過剰人気になると、投票を手控える人が増え、人気薄だと買い増そうとする反動である。
おかげで、オッズを逆数にした支持率と実際の的中率には、ほとんど差がない。
ということは、オッズどおりの的中率、回収率になる。
収支で言えば、券種にもよるが、おおよそ75%近辺の回収率に落ち着く。
したがって、二次予想ではごく短期間での幸運を除いて、ほぼ儲けることはできない。
いや、儲かる方法がある、という主張も聞くけれど、(面と向かって言わないが)不可能である。
これに気が付くと、競馬研究に手を付け、一次予想者になる人が出てくる。
オッズを研究しようとする人も出てくるが、儲ける道筋がないことが分かり、放り出すか、一次予想者になるかする。
こうして二次予想者がふるいにかけられてコアな競馬ファン(というか馬券ファン)になっていくのだろう。

オッズを予想ファクターとする人の「馬の能力を研究する人なんて養分にしかならない」という趣旨の嘲り(あざけり)も、このスレッドか、別のサイトでだったか、見たことがある。
オッズは最も精度が高く、ちまちまとオリジナルの理論を構築している人の予想など非科学的で粗く見えて仕方がないのだろう。
二次予想者にとってはそう見えるのだろうが、実際、多くの一次予想者でそうなのだろうが、わたしに言わせれば、二次予想者こそ養分になる道しかなく、一次予想者のひと握りが養分にならない道を見つけている。
養分にならない道とは、オッズと乖離した予想である。
ファクターの新たな切り口か、未開拓の新たなファクターか。

最後に蛇足だが、馬券の仕組みや投票行動のウィークポイントを狙った戦略というのも存在し、現実に成功例がある。
残念ながら、着想力や資金力などで簡単に真似できるものではない。

スレッドが興味深くて力が入りすぎてしまった。
長々と書いた割には、話が飛んだりしてうまくまとめられなかった。
分かりにくかったとしたら申し訳ない。

(SiriusA+B)

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