2024年8月11日日曜日

第479夜 全点買いと控除率


全点買いを「思いついた」なら冷静に考えてほしい
追い上げが危険なことは過去に何度か言及しているので、今夜は「全点買い、全点購入」について。
最も組み合わせの少ない券種は単勝と複勝で、単勝全点買いでも最大18点だ。
中央競馬平地競走の平均出走頭数は、14頭前後である。
単勝平均配当は約10倍、高配当もちらほら出る。
これなら、金額に差を付けて買えば上手くいくかもしれない、という訳で全点購入戦術を考えつくのである。
うん、いつか来た道。

結論から言えば「やめておけ」となるのだが、熱くなっている人に諌(いさ)めても聞く耳を持たないことがある。
「全点購入で競馬に勝てるなら、主催者が黙っていない」と諭してみるのもいいかもしれない。

全点購入ではないが、かつて3連単をかなり広範囲に買って成功した例はあった。
これに対してJRAがどう考えたのか知る由もない、ただ、これが券種別控除率の設定に繋がった、少なくともきっかけになった、とわたしはみている。
2000
年代初頭の事件だった(投票は事件ではない。脱税が、事件である)が、主催者は、将来的に情報技術が進化することを見据えて対策したのだろう。
ご承知の通り、中央競馬の場合、控除率と組み合わせ数(18頭立て)は以下の通りだ。
(20.0%)単勝18、複勝18
(22.5%)枠連36、馬連153、拡大馬連(ワイド)153
(25.0%)馬単3063連複816
(27.5%)3連単4896
(30.0%)WIN5(5レースすべて18頭立てとして)1,889,568
なぜ、わたしは組み合わせ数を併記したのか。
そう、組み合わせ数が多いほど、控除率を上げていることをお伝えしたかったのである。
券種の人気で控除率を操作しているのではない、これは超多点買いによる馬券の盲点を全力で塞ぎにきたとみたほうがいいだろう。
この脱税事件を起こした組織の手法については、わたしもかなり研究したので(もちろん馬券戦術の、笑)、券種の選定や着想の凄さは実感しているが、控除率改定もあって、二番煎じはない。
ただ、皆さんに注目していただきたいのは、彼らでさえ「全点購入」ではなかったことだ。
いや、むしろ、何頭かの馬を除外して全点購入を避けたところにポイントがある。
馬券は相当苦労して買っていたようだから、彼らも「全点購入、均等買いならラクなんだが」などと考えていたかもしれないが、全点購入では勝てないと知っていた上での戦術であることは間違いない。
繰り返しになるが「全点購入で競馬に勝てるなら、主催者が黙っていない」。
そんな方法で勝たれたら、賭式として欠陥があるということになってしまうのだ。
賭場の主催者なら、こうした戦術を不正行為とまでは言わないが、不正行為と同じくらいに「歓迎せざる客」と捉えるだろうとわたしは思う。
だが、「全点ではない広範な購入」に対して脆弱性があったことは、それまで見つかっていなかった、或いは物理的に不可能とされ実戦で確認されていなかった。
力業は、情報技術の進化がもたらした。

やはりオッズ以外のファクターを加えねば
話を戻して全点購入である。
1
番人気馬1点買いと全点購入戦術では、回収率にそれほど差はなく、70乃至80%に収まる。
全点購入戦術で、一律定額ではなくオッズを見ながら段差買いしても、大差はない。
成績を上げるには、人気薄ほど配分を厚くするしかないのだが、この方法で人気薄を自動的に買っても成績は上がらない。
配分を工夫するためには、どうしても個々の馬の判断を加えるしか方法がなく、馬を見ずにオッズだけ見て買う、というのが当初の目的であったなら、やはり良い方法は無いという結論に達してしまう。
今夜は検証データを載せていないが、多くの人が挑んで失敗してきているので、資料はあちこちにあると思う。
いや、誰もがデータを持っているか。

蛇足だが、この控除率によって長期的に黒字を防ぐ天井と考えることもできる。
単複は20%控除すれば、長期的にプラスとなる者は極めて稀になる、という発想である。
そして、3連単は従前の25%から僅か2.5ポイント引き上げただけで、(わたしの想像が間違えていなければ)穴を塞いだ、ということである。
馬券で儲けるのが如何に難しいか、利幅が如何に薄いか、を語っている。

(SiriusA+B)

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