▼次走出走制限のひとつ、タイムオーバー
次走出走に制限のかかる措置には、タイムオーバー、スリーアウト制(3戦連続9着以下)、発走調教再審査、鼻出血などいくつかある。
特に、タイムオーバーは頻繁に出現するのでチェックされている人も多いのではないかと思う。
主催者JRAのホームページでルールは確認いただきたいと思うが、短距離(1400m以下)で3秒、中距離で4秒、長距離(2000m超)で5秒を超えるとタイムオーバーとされる。
ダートではこれに1秒を足し、新馬戦ではこれに1秒を足す。
近年存在しないが、新馬ダート2000m超であれば7秒(長距離5+ダート1+新馬1)となるはずだ(だいたい合ってる?)。
実際には救済措置も設けられ、不利を受けたり、疾病を発症したり、勝ち馬がレコード勝ちしたりすれば対象外となることもあるので、主催者発表の成績表で確認する必要がある。
新馬戦や未勝利戦が対象と思っている人もいるかもしれないが、条件戦なども対象で、まれに高額条件戦(古馬2勝クラスや3勝クラス)でもタイムオーバーになってしまうことがある。
重賞でも未出走馬や未勝利馬はしっかりカウントされるので、「不思議な出走」はきちんと抑制されている。
このタイムオーバーは、多くの馬柱には記載されていないが、割引材料とみる人も少なくないのではないかと思う。
要するに遅かったから、タイムオーバーになったわけだ。
ただ、わたしは、条件によってはあまり気にする必要はないと思っている。
この10年ほどの間には、5着以下11頭がタイムオーバーになったレースがある。
2022年8月20日小倉競馬第6競走新馬戦、ダート1700mである。
掲示板に載った5着さえも6秒以上の着差が付いた。
もっとも、このレースでは幸運にも救済措置が働いた。
勝ち馬がレコード勝ちしたのである。
勝ち馬はヤマニンウルス号で、以前もこのブログで触れた馬だが、2着以下もその後活躍している。
5着馬は3勝、最下位15着馬は2勝、2着馬は1勝した(2024年末まで)。
一方で、2023年2月18日阪神競馬第2競走未勝利戦ダート1200mでは7頭が4秒を超えてタイムオーバーを食らったが、こちらの救済措置はなかった。
その後、2024年末までで2着馬、3着馬がそれぞれ4勝、2勝した。
タイムオーバーした馬は未勝利である。
こちらのレースのほうが、タイムオーバーのイメージに近いだろう。
救済措置やオープン競走の別を抜きにして、時計だけに注目した「理論上のタイムオーバー」馬は、2011-2024年の中央競馬平地競走において延べ約9,500頭、出走馬の1.4%に相当する。
当然ながら、前走で「理論上のタイムオーバー」となった馬の成績は勝率1.6%とほぼ下位人気馬並みである。
それでも約500頭が3着以内に食い込んできており、取捨選択によっては妙味があるとも言えるのではないだろうか。
たまたま調子が良くなかった、ちょっと運が悪かったという馬と、実力不足馬を峻別できるなら、時計不足で人気を下げている馬を狙えるかもしれない。
▼古馬はそれほど割り引かなくても
図表528-4は、前走理論上タイムオーバー馬の成績を出走クラス別に分解したものである。
同歳馬2勝クラス(1000万下)は現在ないので無視してもらって構わない。
重賞はそもそもタイムオーバーの適用はないのだが、オープン競走で前走大敗して人気が下がったとしたならむしろ積極的に狙いたいような成績である。
新馬や未勝利では、多くの馬が実力不足なのだろう。
古馬は不調だっただけ、という可能性は小さくなさそうだ。
この傾向から、タイムオーバー或いはそれに至らずとも大敗した馬は、実力不足か不調か、丁寧に見ていけば旨味のある馬券につながるということである。
人気を下げているので「下げすぎではないか」と考えられるか、そして、その馬と心中する勇気があるかどうか。
とにかく、先入観は思考停止、常識を疑えという話である。
(SiriusA+B)
(図表528-1)2022年8月20日小倉第6競走(その後の勝利回数は2024年末まで)
順位 | 単勝 | 人気 | 馬名 | 時計 | 着差 | その後の勝利回数 |
1 | 2.7 | 1 | ヤマニンウルス | 104秒3 | 0 | 4 |
2 | 5.9 | 3 | ゴライコウ | 108秒6 | 4.3 | 1 |
3 | 8.1 | 4 | オーヴァーストーム | 108秒8 | 4.5 | 0 |
4 | 82.2 | 12 | ヨドノストロング | 109秒7 | 5.4 | 0 |
5 | 18.1 | 5 | ダイメイセブン | 110秒7 | 6.4 | 3 |
6 | 21 | 7 | ハーベストデイ | 110秒8 | 6.5 | 0 |
7 | 30.9 | 11 | スナークドリアン | 110秒8 | 6.5 | 0 |
8 | 5.2 | 2 | イストロス | 112秒1 | 7.8 | 0 |
9 | 95.8 | 13 | メイケイビューティ | 112秒6 | 8.3 | 0 |
10 | 18.7 | 6 | ゴッドスピードレオ | 112秒6 | 8.3 | 0 |
11 | 30.6 | 10 | ラキッシュ | 112秒7 | 8.4 | 0 |
12 | 135.6 | 14 | ハクアイゼウス | 113秒1 | 8.8 | 0 |
13 | 190.2 | 15 | ニホンピロビート | 113秒4 | 9.1 | 0 |
14 | 21.7 | 8 | スマートアリオン | 113秒9 | 9.6 | 0 |
15 | 22.3 | 9 | レッツゴーローズ | 118秒2 | 13.9 | 2 |
競走除外 | --- | --- | テングクラブ | --- | --- | 0 |
(図表528-2)2023年2月18日阪神第2競走(その後の勝利回数は2024年末まで)
順位 | 単勝 | 人気 | 馬名 | 時計 | 着差 | その後の勝利回数 |
1 | 3.9 | 2 | リュウ | 71秒9 | 0 | 1 |
2 | 1.5 | 1 | ボナンザ | 72秒7 | 0.8 | 4 |
3 | 22.7 | 5 | ペイシャモノノフ | 74秒3 | 2.4 | 2 |
4 | 38.0 | 9 | ブランディー | 74秒8 | 2.9 | 0 |
5 | 80.5 | 11 | モイスチャー | 74秒8 | 2.9 | 0 |
6 | 27.7 | 6 | キミニオクル | 75秒2 | 3.3 | 0 |
7 | 317.6 | 14 | ティーティースター | 75秒3 | 3.4 | 0 |
8 | 32.6 | 7 | ヒットザフロント | 75秒6 | 3.7 | 0 |
9 | 51.2 | 10 | ヤマタケアオイバラ | 76秒0 | 4.1 | 0 |
10 | 179.1 | 12 | サウスシーパール | 76秒1 | 4.2 | 0 |
11 | 35.6 | 8 | シュハリ | 76秒1 | 4.2 | 0 |
12 | 20.6 | 4 | タガノルビー | 76秒2 | 4.3 | 0 |
13 | 307.2 | 13 | メイショウボンゴチ | 76秒5 | 4.6 | 0 |
14 | 13.7 | 3 | ネオトキオ | 77秒1 | 5.2 | 0 |
15 | 423.7 | 15 | スカイインパルス | 78秒3 | 6.4 | 0 |
出走取消 | --- | --- | サンガネーブ | --- | --- | 2 |
(図表528-3)前走「理論上のタイムオーバー」該当馬の成績
1着頭数 | 2着頭数 | 3着頭数 | 全体 | 勝率 | 複勝率 | |
前走タイムオーバー無し | 46,499 | 46,439 | 46,415 | 649,649 | 0.072 | 0.215 |
前走理論上タイムオーバー | 148 | 165 | 201 | 9,523 | 0.016 | 0.054 |
(図表528-4)今走クラス別前走「理論上のタイムオーバー」該当馬の成績
1着頭数 | 2着頭数 | 3着頭数 | 全体 | 勝率 | 複勝率 | |
新馬 | 9 | 17 | 20 | 1,503 | 0.006 | 0.031 |
未勝利 | 56 | 63 | 97 | 5,219 | 0.011 | 0.041 |
1勝クラス | 7 | 10 | 7 | 382 | 0.018 | 0.063 |
2勝クラス | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 |
オープン | 12 | 9 | 8 | 229 | 0.052 | 0.127 |
古馬1勝クラス | 34 | 33 | 38 | 1,331 | 0.026 | 0.079 |
古馬2勝クラス | 11 | 21 | 18 | 466 | 0.024 | 0.107 |
古馬3勝クラス | 4 | 5 | 3 | 167 | 0.024 | 0.072 |
古馬オープン | 15 | 7 | 10 | 225 | 0.067 | 0.142 |