2025年8月10日日曜日

第528夜 穴馬探し(2)タイムオーバー


▼次走出走制限のひとつ、タイムオーバー
次走出走に制限のかかる措置には、タイムオーバー、スリーアウト制(3戦連続9着以下)、発走調教再審査、鼻出血などいくつかある。
特に、タイムオーバーは頻繁に出現するのでチェックされている人も多いのではないかと思う。
主催者JRAのホームページでルールは確認いただきたいと思うが、短距離(1400m以下)3秒、中距離で4秒、長距離(2000m)5秒を超えるとタイムオーバーとされる。
ダートではこれに1秒を足し、新馬戦ではこれに1秒を足す。
近年存在しないが、新馬ダート2000m超であれば7(長距離5+ダート1+新馬1)となるはずだ(だいたい合ってる?)
実際には救済措置も設けられ、不利を受けたり、疾病を発症したり、勝ち馬がレコード勝ちしたりすれば対象外となることもあるので、主催者発表の成績表で確認する必要がある。
新馬戦や未勝利戦が対象と思っている人もいるかもしれないが、条件戦なども対象で、まれに高額条件戦(古馬2勝クラスや3勝クラス)でもタイムオーバーになってしまうことがある。
重賞でも未出走馬や未勝利馬はしっかりカウントされるので、「不思議な出走」はきちんと抑制されている。
このタイムオーバーは、多くの馬柱には記載されていないが、割引材料とみる人も少なくないのではないかと思う。
要するに遅かったから、タイムオーバーになったわけだ。
ただ、わたしは、条件によってはあまり気にする必要はないと思っている。

この10年ほどの間には、5着以下11頭がタイムオーバーになったレースがある。

2022820日小倉競馬第6競走新馬戦、ダート1700mである。
掲示板に載った5着さえも6秒以上の着差が付いた。
もっとも、このレースでは幸運にも救済措置が働いた。
勝ち馬がレコード勝ちしたのである。
勝ち馬はヤマニンウルス号で、以前もこのブログで触れた馬だが、2着以下もその後活躍している。
5
着馬は3勝、最下位15着馬は2勝、2着馬は1勝した(2024年末まで)
一方で、2023218日阪神競馬第2競走未勝利戦ダート1200mでは7頭が4秒を超えてタイムオーバーを食らったが、こちらの救済措置はなかった。
その後、2024年末までで2着馬、3着馬がそれぞれ4勝、2勝した。
タイムオーバーした馬は未勝利である。
こちらのレースのほうが、タイムオーバーのイメージに近いだろう。

救済措置やオープン競走の別を抜きにして、時計だけに注目した「理論上のタイムオーバー」馬は、2011-2024年の中央競馬平地競走において延べ約9,500頭、出走馬の1.4%に相当する。
当然ながら、前走で「理論上のタイムオーバー」となった馬の成績は勝率1.6%とほぼ下位人気馬並みである。
それでも約500頭が3着以内に食い込んできており、取捨選択によっては妙味があるとも言えるのではないだろうか。
たまたま調子が良くなかった、ちょっと運が悪かったという馬と、実力不足馬を峻別できるなら、時計不足で人気を下げている馬を狙えるかもしれない。

▼古馬はそれほど割り引かなくても
図表528-4は、前走理論上タイムオーバー馬の成績を出走クラス別に分解したものである。
同歳馬2勝クラス(1000万下)は現在ないので無視してもらって構わない。

一目瞭然だが、(1)同歳戦では勝率が低い(2)古馬を含めオープン戦では勝率が相対的に高い。
重賞はそもそもタイムオーバーの適用はないのだが、オープン競走で前走大敗して人気が下がったとしたならむしろ積極的に狙いたいような成績である。
新馬や未勝利では、多くの馬が実力不足なのだろう。
古馬は不調だっただけ、という可能性は小さくなさそうだ。
この傾向から、タイムオーバー或いはそれに至らずとも大敗した馬は、実力不足か不調か、丁寧に見ていけば旨味のある馬券につながるということである。
人気を下げているので「下げすぎではないか」と考えられるか、そして、その馬と心中する勇気があるかどうか。
とにかく、先入観は思考停止、常識を疑えという話である。

(SiriusA+B)

(図表528-1)2022820日小倉第6競走(その後の勝利回数は2024年末まで)
順位 単勝 人気 馬名 時計 着差 その後の勝利回数
1 2.7 1 ヤマニンウルス 104秒3 0 4
2 5.9 3 ゴライコウ 108秒6 4.3 1
3 8.1 4 オーヴァーストーム 108秒8 4.5 0
4 82.2 12 ヨドノストロング 109秒7 5.4 0
5 18.1 5 ダイメイセブン 110秒7 6.4 3
6 21 7 ハーベストデイ 110秒8 6.5 0
7 30.9 11 スナークドリアン 110秒8 6.5 0
8 5.2 2 イストロス 112秒1 7.8 0
9 95.8 13 メイケイビューティ 112秒6 8.3 0
10 18.7 6 ゴッドスピードレオ 112秒6 8.3 0
11 30.6 10 ラキッシュ 112秒7 8.4 0
12 135.6 14 ハクアイゼウス 113秒1 8.8 0
13 190.2 15 ニホンピロビート 113秒4 9.1 0
14 21.7 8 スマートアリオン 113秒9 9.6 0
15 22.3 9 レッツゴーローズ 118秒2 13.9 2
競走除外 --- --- テングクラブ --- --- 0


(図表528-2)2023218日阪神第2競走(その後の勝利回数は2024年末まで)
順位 単勝 人気 馬名 時計 着差 その後の勝利回数
1 3.9 2 リュウ 71秒9 0 1
2 1.5 1 ボナンザ 72秒7 0.8 4
3 22.7 5 ペイシャモノノフ 74秒3 2.4 2
4 38.0 9 ブランディー 74秒8 2.9 0
5 80.5 11 モイスチャー 74秒8 2.9 0
6 27.7 6 キミニオクル 75秒2 3.3 0
7 317.6 14 ティーティースター 75秒3 3.4 0
8 32.6 7 ヒットザフロント 75秒6 3.7 0
9 51.2 10 ヤマタケアオイバラ 76秒0 4.1 0
10 179.1 12 サウスシーパール 76秒1 4.2 0
11 35.6 8 シュハリ 76秒1 4.2 0
12 20.6 4 タガノルビー 76秒2 4.3 0
13 307.2 13 メイショウボンゴチ 76秒5 4.6 0
14 13.7 3 ネオトキオ 77秒1 5.2 0
15 423.7 15 スカイインパルス 78秒3 6.4 0
出走取消 --- --- サンガネーブ --- --- 2

(図表528-3)前走「理論上のタイムオーバー」該当馬の成績
1着頭数 2着頭数 3着頭数 全体 勝率 複勝率
前走タイムオーバー無し 46,499 46,439 46,415 649,649 0.072 0.215
前走理論上タイムオーバー 148 165 201 9,523 0.016 0.054

(図表528-4)今走クラス別前走「理論上のタイムオーバー」該当馬の成績
1着頭数 2着頭数 3着頭数 全体 勝率 複勝率
新馬 9 17 20 1,503 0.006 0.031
未勝利 56 63 97 5,219 0.011 0.041
1勝クラス 7 10 7 382 0.018 0.063
2勝クラス 0 0 0 1 0 0
オープン 12 9 8 229 0.052 0.127
古馬1勝クラス 34 33 38 1,331 0.026 0.079
古馬2勝クラス 11 21 18 466 0.024 0.107
古馬3勝クラス 4 5 3 167 0.024 0.072
古馬オープン 15 7 10 225 0.067 0.142


2025年8月3日日曜日

第527夜 穴馬探し(1)5戦連続大敗馬


▼正確に言えば見どころがないわけではない
予想者にとって、凡走を続けた馬が突然激走し、これを的中させるというのは醍醐味であろう。
ただし、予め申し上げるが、そういう馬はほとんどいない。
ゼロではないが、限りなくゼロに近い。
ここでは、「中央デビューから5戦、いずれも9着以下に敗退した馬」を「見どころのない馬」と定義することにしてみよう(ヒドイ……)
わたしの手元計算では、5回以上出走したのは44,296頭、うち該当馬は2,445頭である。
その中で最終的に1勝以上できたのは、僅か37頭しかいない(2009年以降生まれで2011-2024年中央競馬平地競走において)。過去には毎年何頭かは出現したが、回転の速い昨今では12頭である。
もちろん、馬券に絡む3着以内も含めれば若干増えよう。
ただ、少ないことは間違いない。
あまりロマンを追い求めないほうが良い。
それを頭に入れたうえでの話として、今晩の話である。

37
頭での最大の出世頭はダイメイプリンセス号(図表526-1の馬A)で、最終的に2018年アイビスサマーダッシュ(G3)など40戦で7勝した。
初戦9着から始まり、11着、13着、14着、10着と5戦続けて9着以下であった。
6
戦目に3着に入り、7戦目に未勝利戦を勝ち、以降は大きく崩れることは少なくオープン馬になっていく。
そのほかの36頭では3勝馬2頭、2勝馬9頭、残りが1勝馬である。
彼ら彼女らは、ある日突然激走したり、次第に成績が上がり人気が追い付き順当勝ちしたりとさまざまである。
突然激走する馬でも、近走では逃げるまではいかなくても前のほうで走ったり、上がり3ハロンが良かったりと予兆は少なからずあった。
見どころはあったのだ。
ただ、「この馬だ」と選ぶほどではなかった。
前のほうで走る馬など山ほどいるし、上がりが良い馬も多い。
同じような特色ならば、もう少し成績の良い馬を選ぶだろう。

(
図表527-1)中央デビューから5戦、いずれも9着以下に敗退した馬で勝利した馬(2009年以降生まれで2011-2024年中央競馬平地競走
)
馬名 調査期間中勝利回数 調査期間中出走回数 初戦着順 第2戦着順 第3戦着順 第4戦着順 第5戦着順
馬A 7 40 9 11 13 14 10
馬B 3 51 12 9 9 10 9
馬C 3 24 12 9 15 9 11
馬D 2 15 10 9 9 17 10
馬E 2 23 9 10 12 13 15
馬F 2 21 17 13 15 12 10
馬G 2 25 11 10 11 16 12
馬H 2 24 15 13 12 9 9
馬I 2 40 10 10 11 14 10
馬J 2 16 10 11 9 10 10
馬K 2 26 12 11 12 13 11
馬L 2 25 9 12 13 10 15
馬M 1 11 10 9 10 12 10
馬N 1 21 10 13 12 9 10
馬O 1 18 13 9 9 11 12
馬P 1 22 12 13 11 9 16
馬Q 1 27 16 13 15 9 15
馬R 1 17 14 11 13 10 16
馬S 1 21 11 9 13 13 9
馬T 1 11 11 10 10 16 16
馬U 1 68 12 11 9 14 15
馬V 1 9 11 12 11 14 9
馬W 1 24 13 14 15 13 11
馬X 1 28 9 15 9 9 9
馬Y 1 49 14 10 12 16 16
馬Z 1 10 13 11 11 15 12
馬AA 1 24 16 12 12 9 17
馬AB 1 15 12 10 9 12 9
馬AC 1 20 13 13 11 10 11
馬AD 1 23 11 12 14 15 13
馬AE 1 38 10 10 15 10 11
馬AF 1 11 9 11 11 10 14
馬AG 1 15 9 9 12 9 14
馬AH 1 9 9 10 10 9 9
馬AI 1 18 13 16 12 11 17
馬AJ 1 18 11 13 14 9 9
馬AK 1 9 12 15 11 13 10

▼成績以外に光
見どころ(予兆)はまったくないわけではない、だが、予兆はさまざまだし、取り立てて目を見張るものでもない。
これでは、穴馬探しは完全にお手上げだが、何か共通する特徴はないものかと探していたところ、ひとつ気になるものがあった。
調教である。
このブログで何度か言及しているように、わたしには調教そのものは分からないので調教評価をもとに独自に評価しなおす方法をとっている。
具体的に出せないのは残念だが、この「見どころのない馬」とした馬たちの多くが初期に比較的(人気や着順に比べて)高評価の調教だった。
見どころがなかったのは競走においてであって、練習中は「おっ」と注目されることくらいはあったのだ。
調教を今走に限って良い悪いと判断するだけでは勿体ない。
デビューから時系列的に見て、過去に、調教と成績が直結していない馬がいればそれが穴馬になろう。
今夜の例は極端だが、こうした馬は結構いる。

(SiriusA+B)

ブログ アーカイブ