前夜には、プロ野球各球団の実力はチーム全体の年俸と相関関係があると述べた。
ただ、これだけではペナントレースの順位を予想できない。
そこで、他の要素を加えようとする。
幾つか思いついたものを挙げていく。
まず、監督である。
競馬なら騎手にあたるだろうか。
チームの実力を発揮できるかどうかは、監督の采配にかかっていると思われる。
監督の報酬相場はあまり明らかではないが、5,000万円くらいから1億円くらいのようだ。
ただ、監督業自体のサンプル数が少ないこと、成績不振ならシーズン中でも辞任に追い込まれることから、成績と報酬の関係がそれほど連動していないようにもみえた。
選手ほど差がないのは、要するに「わからない」ということなのかもしれない。
手腕は報酬以外の指標で測りたいが、今のところ良いアイデアは見つからなかった。
しかし、相手関係をみてうまく采配したり、選手交代を絶妙のタイミングで行なったりできる監督もいて、チーム全体の持つ能力をどこまで発揮できるかという点でその影響は大きい。
次に、選手の年齢である。
多くのスポーツにおいて、男性選手は20歳代後半辺りにピークがあるようだ。
持久力や心肺能力が勝負のマラソンなどではもう少し年齢を重ねたところだが、プロ野球であれば個人差はあるにせよ、20歳代後半とみて良いだろう。
球団全体の平均年齢や年齢別パフォーマンスの統計データがあれば、成績の予想はできそうだ。
さらに、球団の経営陣も成績に影響を与えるとみている。
これは厩舎経営に近いかもしれない。
投手、野手の編成、ベテランと若手のバランスなど、即戦力と育成など、限られた資金でどのように構成するか、フロントの能力が問われる。
メジャーリーグを舞台にした「マネーボール」では、能力はあるがワケありな選手を見つけて活躍期間に割安で使い、ピークに売り抜けるオーナーの姿を描くノンフィクションである。
この話は、野球界の常識を超えた選考基準がキーとなっている。
これについては、過去のペナントレース平均順位や勝率など指標の候補はありそうだ。
▼複雑系の世界
思いついた要素は以上だが、チーム支配下選手の年俸を基礎に、(ツールは提示できなかったが)監督(与えられた戦力をどこまで発揮できるか)、選手年齢(個体の盛衰)、経営(資金をどれだけ効率的に使っているか)という要素を加えても、果たしてどれだけの勝ち負けを予測できるだろうか。
もっと詳しいデータが必要という人もいるだろう。
だが、選手一人ひとりの力、投手の球種、捕手のリード、足の速さなど、細かくしていけばいくほど各試合の勝敗が読めるだろうか。
今シーズンは何勝何敗で優勝すると予測できるのならすごいことで、競馬の予想で同じことができるだろう。
しかし、1球ずつすべての組み合わせを予測することは不可能なのだ。
これに加えて、細かく精緻に分析しても出てこないものがある。
第162夜で触れた創発特性である。
チームの連携プレー、例えばヒットエンドランや併殺、後逸時のカバーなど、個体分析では算出できない。
メジャーな指標である打点でさえ、他の打者の成績に左右される。
プロ野球のペナントレースでさえこんな状況である。
ましてや競馬の予想が簡単な話ではないことが分かっていただけると思う。
(SiriusA+B)