2019年10月21日月曜日

第255夜 予想技術の変化

▼力業の時代
今夜もうだうだと書く。

素数は無限にあると予想されているが、発見するには容易でない作業がある。
ところが、今の時代はコンピュータを使用して力業で発見することができるようになった。
コンピュータは人間に代わり、大量の計算を、正確に、人間より速く、することができる。
力尽くで剛腕な印象さえあり、手作業を丁寧な仕事と尊ぶ人ならば感傷的になってしまうほどである。
だが、冷静に見て、膨大な計算作業の代行は数多くのメリットをもたらすのも事実だ。

技術の進歩により世界が大きく進化することはこれまでもあった。
蒸気機関や電気はもちろん、重機、農機、冷蔵庫洗濯機テレビ、エアコンなどの家電は、生活を一変させてきた。
コンピュータも同様にさまざまな分野での進化に貢献している。
知的作業では、知識量や計算能力を問われるレベルから、情報量を確保し加工してどう判断するかが問われるレベルに変わりつつある。
極端に言えば、より高度な能力で勝ち負けを競う、差がつく時代になり、「とにかく丸暗記していればなんとかなる」といった情報量で勝負してきた層が知的階層から脱落するのである。
もちろん情報量や知識量、計算能力が軽んじられてはならない。
情報の整理活用知識や計算結果の推論が必要である。
分析可能な情報量を確保した上で、さらに帰納的に考える能力などが重要になったといったほうが分かりやすいかもしれない。

ところが競馬予想の技術は相変わらずで、時折「AI予想」などということばに右往左往する程度のようである。
コンピュータが未発達だった頃は、統計学では如何に少ないサンプルや計算量で結論を導き出すか、に力が注がれてきたのだが、競馬予想でもこの考えから脱却できずにいるように思う。
日本ダービーを予想するのに「過去10年のダービー」を参考にすることが未だ主流である。
今や年間で延べ4万頭前後の出走馬をすべて調べられるのに、ほんの僅かなデータだけで推理しようとする。
血統理論は更に遺伝学さえ取り込んでおらずオカルトの領域であり続けている。

推理小説で例えれば、探偵役が「彼が犯人だ」と叫ぶまでの工程に似ている。
ちょっとした証拠から推理するのである。
だが、今なら、警察が周辺の防犯カメラの記録を片っ端から集めて全部調べる。
溢れるほど情報があるので証拠集めに労力を割くのだ。
そして大量の情報を短時間で処理する技術も発達した。
もちろん、大量の証拠を矛盾なく繋ぎ合わせ、犯人を絞り込むには一流の探偵が要る。
競馬の予想でも同じである。

今や過去10年分の全レースを使い、勝利の方程式を探す時代になっているのに、多くの予想者がそこまでの労力を費やしていないように感じる。
相変わらず非常に少ない情報で、古典的な名探偵のように名推理を試みようとする。
情報は洪水のようにあるのに、だ。
そもそも一流の探偵でもないのに、だ。

▼「個」の分析から属性分析へ
情報量が増えたことで、わたしたちも変化しなければならない。
大量の情報を活かすには発想の転換をはかる必要があるように思う。
このブログで繰り返し述べているように、馬個体毎の分析ではなく、要素に分解し分析する手法を勧めている。
大量の情報を活かすように予想方法を変えなければならないと思うのだ。
A騎手」をそのままで使用せず、「20歳代後半」「年間騎乗数500以上1,000未満」「栗東所属」「1レースあたりの平均獲得賞金上位10%」などと分解するのである。
それぞれを集計するというのが手法だ。
これを再合成する過程で数学的技術が必要だが、また分解できなかった「残差」の処理をどうするかも技術が必要だが、知識がない人でも実用に耐え得る程度にはなる。
だが、わたしが周囲を見る限り、問題はそれ以前にふたつあるようだ。
先ず、「力業」でデータを集めていない。
「努力はしているんだけれど」という人は、概して「思っている以上に努力していない」というのがわたしの印象である。
忙しいなど言い訳が立ち、夜更かししてでもデータを集めるというような努力が見られない。
情報はレース成績データだけではない。
馬の購買価格、購買状況、育成牧場など直結する情報のほか、気温、湿度といった天候などたくさんある。
不要かどうかは先ず集めて試していく作業を繰り返すのである。
多くは徒労であって、その過程の労を惜しむのはあまり賛成しない。

次に、データを加工する技術が不足している。
このブログでは走破タイムを速度、時速60km/hなどと変換するが、表計算ソフト上でこの作業ができないという人は少なくない。

わたしはこれらを批判しているのではない。
競馬予想をする母集団にはこのような人がそれなりにいるので今が好機と言いたいのである。
誰もが手軽に、AIを簡単に用いることができるアプリケーションは、それほど遠くない時期に登場しよう。
それまでが勝負である。
アプリが登場すればまた別のステージでの闘いになる。
それまでに、急ぎ、データを集め、情報の加工スキルを磨きたいと思う。
(SiriusA+B)

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