2020年5月17日日曜日

第277夜 タイム系指数で成長曲線を描くことは難しい


速度は早々に頭打ち
このブログで繰り返し指摘しているように、競馬はスピードを競うものではなく順位を競う競技である。
「いちばん速い馬が勝つ」は主従逆転で「勝った馬がいちばん速いタイムだった」のである。
したがって、速さを目安とした判断基準は「他に良い物差しが無いから」使っていることを忘れると痛い目にあう。

古典的な血統理論で全兄弟問題が難題であるように、タイム系指数にも難題がある。
わたしがこのブログでよく使う「速度」という尺度でみると、数戦程度経験すれば速度は頭打ちになる。
成長していないわけではないし、競走距離も伸びる傾向である。
速度を維持するだけでも素晴らしいことなのだが、速度から成長を感じることは難しいのだ。
古馬戦の予想はどの手法でも難しいのだが、取り分けタイム系には「頭打ち」問題で苦戦しているのではないだろうか。

下表は完走経験回数別平均速度をプロットしたものである。
平地競走全体、芝とダート別で、(1)競走馬全体(2)中央競馬平地競走で3勝以上した馬(3)46戦以上経験した馬で集計した。
(2)(3)
は長期にわたって中央競馬で活躍した馬を抽出したものと思ってよい。
これに対し(1)は全体であり、デビューしたものの早々に地方転厩や引退をした大量の競走馬を含んでいる。
ぜひグラフにしていただきたい。
(1)
(2)(3)は初期ほど乖離しており、完走回数が増えるつれて速度の差は縮まっていく。
3
種類の線は何を意味するのか。
活躍馬と出走経験豊富な馬の集団はニアリーイコールである、ということ。
(1)
(2)(3)が初期に乖離して次第に近い値になっていくのは、(1)の母集団(全体)1戦ごとに成績の振るわぬ馬の退場によって平均能力が上がっていく、ということ。
したがって、初期のデータからは「母集団の向上」を差し引かなければ成長の数字にはならない。
そう考えると、速度でみる成長幅のなんと小さいことか。
馬場調整で吹き飛びそうである。

出走前完走回数 修正走破速度平均(全体) 3勝馬修正走破速度平均 45走超馬修正走破速度平均 芝修正走破速度平均 3勝馬芝修正走破速度平均 45走超馬芝修正走破速度平均 ダ修正走破速度平均 3勝馬ダ修正走破速度平均 45走超馬ダ修正走破速度平均
0回(初出走) 58.02 58.50 58.79 58.82 59.04 59.28 56.58 57.12 57.03
1回 58.12 58.84 58.86 59.32 59.61 59.57 56.71 57.43 57.08
2回 58.07 58.83 58.92 59.42 59.67 59.83 56.83 57.60 57.30
3回 58.17 58.94 58.84 59.55 59.80 59.81 56.99 57.81 57.38
4回 58.27 59.02 58.68 59.62 59.87 59.76 57.14 57.94 57.17
5回 58.41 59.12 58.81 59.74 59.95 59.86 57.30 58.09 57.40
6回 58.55 59.18 58.70 59.83 60.02 59.80 57.44 58.17 57.30
7回 58.65 59.27 58.88 59.92 60.09 59.98 57.56 58.29 57.50
8回 58.71 59.33 59.03 59.98 60.18 59.99 57.63 58.35 57.79
9回 58.80 59.39 59.24 60.08 60.29 60.14 57.72 58.36 57.98
10回 58.90 59.40 59.21 60.13 60.32 60.12 57.84 58.38 58.00
11回 58.95 59.46 59.26 60.18 60.38 60.20 57.89 58.45 58.10
12回 59.00 59.47 59.40 60.21 60.39 60.36 57.94 58.45 58.05
13回 59.06 59.55 59.24 60.27 60.48 60.21 58.00 58.53 57.94
14回 59.06 59.50 59.12 60.25 60.41 59.86 58.01 58.49 58.14
15回 59.13 59.54 59.47 60.31 60.46 60.40 58.07 58.53 58.25
16回 59.13 59.53 59.39 60.27 60.43 60.32 58.10 58.52 58.22
17回 59.13 59.51 59.45 60.29 60.46 60.49 58.08 58.44 58.06
18回 59.16 59.55 59.42 60.30 60.47 60.32 58.11 58.51 58.15
19回 59.22 59.57 59.44 60.38 60.52 60.29 58.13 58.47 58.18
20回 59.24 59.59 59.42 60.35 60.50 60.31 58.15 58.51 58.16
21回 59.25 59.63 59.42 60.32 60.48 60.35 58.19 58.58 58.20
22回 59.29 59.63 59.57 60.37 60.51 60.46 58.20 58.54 58.33
23回 59.32 59.61 59.49 60.38 60.47 60.32 58.21 58.51 58.32
24回 59.32 59.64 59.51 60.40 60.55 60.37 58.18 58.47 58.29
25回 59.33 59.63 59.54 60.34 60.46 60.43 58.22 58.56 58.29
26回 59.34 59.62 59.50 60.34 60.43 60.28 58.24 58.59 58.40
27回 59.35 59.66 59.57 60.35 60.48 60.38 58.21 58.56 58.40
28回 59.42 59.70 59.53 60.42 60.53 60.39 58.26 58.58 58.30
29回 59.39 59.68 59.55 60.37 60.50 60.49 58.23 58.53 58.20
30回 59.38 59.69 59.44 60.33 60.47 60.33 58.27 58.61 58.24
31回 59.39 59.67 59.65 60.29 60.41 60.57 58.29 58.61 58.38
32回 59.40 59.72 59.51 60.37 60.52 60.50 58.19 58.57 58.16
33回 59.33 59.60 59.24 60.26 60.30 60.26 58.18 58.54 57.84
34回 59.36 59.63 59.40 60.22 60.33 60.22 58.22 58.52 58.25
35回 59.41 59.60 59.44 60.30 60.33 60.23 58.26 58.55 58.36
36回 59.41 59.65 59.43 60.29 60.38 60.26 58.27 58.60 58.28
37回 59.31 59.62 59.45 60.30 60.36 60.31 58.05 58.46 58.21
38回 59.42 59.66 59.49 60.32 60.36 60.34 58.20 58.53 58.30
39回 59.45 59.76 59.49 60.42 60.53 60.45 58.16 58.52 58.13
40回 59.49 59.81 59.58 60.43 60.59 60.53 58.19 58.52 58.24
41回 59.40 59.72 59.40 60.29 60.36 60.30 58.18 58.53 58.13
42回 59.41 59.67 59.42 60.27 60.28 60.22 58.22 58.59 58.25
43回 59.38 59.73 59.38 60.31 60.47 60.29 58.05 58.41 58.10
44回 59.38 59.67 59.43 60.21 60.34 60.25 58.21 58.57 58.25
45回 59.38 59.70 59.38 60.18 60.33 60.18 58.21 58.57 58.21
46回以上 59.50 59.68 59.50 60.21 60.33 60.21 58.20 58.42 58.21
個別にプロットすると更に
特定の馬の競走成績をプロットすると、更に速度が頭打ちになることがはっきりする。
馬場調整など無しに走破タイムをそのまま時速に換算すると最初の数戦を除き、ずっと同じような速さで推移することが分かる。
もちろん凸凹している。
「馬場調整していないからだ」と言う前に、着順や距離を念頭において眺めてもらいたい。
わたしには、着順と距離によって変動のほとんどを説明できそうにみえる。
残った差分を馬場調整とすれば、成長分の要素はほぼない。
スローペース調整、馬場調整、クラス調整など補正を重ねて分かりにくいのかもしれないが、走破タイムをそのままスピード指数や速度に変換すれば競走馬の成長指数を描くことはできない、或いは極めて困難であることが分かるだろう。

積み上げ方式
では、成長や経験値を積んだことを表わす方法はないだろうか。
ひとつの回答がポイントの積み上げである。
経験値ポイントを付与していけばいいのではないか。
デビューした、2着だった、それでは20ポイント与えよう、2戦目は逃げた、ゴール前で粘って勝った、それでは50ポイント与えよう、といった具合にだ。
ポイントは減らない。
出走数が多くなってくれば1走あたりの平均を取ることもできる。
平均であれば成績の下降に連れて下がってくる。
賞金を着順をベースにポイントを付けたり、見どころのあった馬にボーナスポイントを上乗せしたりすれば、走破タイムに代わる武器になろう。
レイティングに似ている作業である。
この記事では割愛するが、ポイントの付け方例をどこかで記事にしたい(覚えていたらね)
(SiriusA+B)

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