▼1番人気の勝率ではなく
1番人気の的中率は約33%、すなわち3分の1というところである。
投資の世界で言えば「市場騰落率」で、投資が平均より勝っているのかどうか比較する指標すなわち「ベンチマーク」としてよく使用される。
国内株式であれば、TOPIXや日経平均225などである。
競馬予想の世界においては、1番人気の勝率をベンチマークにすることが多い。
ただ、この1番人気の勝率を上回る予想者というのもほとんどいない。
投資の世界でベンチマークが市場平均であるのに対し、1番人気の勝率とは最多支持率馬の勝率であるからだろう。
ひとりひとりの投票行動で本命とした馬の勝率ではないから、非常に高い壁になっている。
長い間、今もそうかもしれないが、ひとりひとりの投票行動を追跡して集約することは難しかった。
予想紙、スポーツ紙、テレビ、ラジオで公開するメディアを持つ一部の予想者の情報しかなかったのである。
ところが、現在は、本当のところは分からないにせよ、ある程度、ライバルたちの予想を知ることができるようになっている。
情報技術の目覚ましい発達によって、わたしたちはマスメディアを通さなくても個人が世界に向けて情報を発信できる時代になったのである。
複数の人間が目を通して発信されるメディアと異なり、個人の発信する情報には真偽の面で割引が必要だが、こと予想に関しては、情報を注意深く扱いさえすれば大雑把な傾向を掴むことができるようになったのだ。
個人の無料予想は「俺すごいだろ」とか「プロの予想家になって儲けたい」とか、さまざまな動機で公開されているが、自身の買い目とは多少異なっても、投票金額が多少違っても、注目されたいと思うだけの「本当のところ」を公開していると推量される。
今夜の集計は、そうした無料予想を追跡した結果である。
他人の予想なので、個別の言及はしない。
あくまで統計的に調べた結果である。
また、個人であっても法人であっても、有料予想には悪意あるものも少なからず存在するのでこれは除外した。
これまで、このような「他人の、それも素人の予想の過去結果」を調べたものはほとんど見かけない。
それはそうである。
地道な作業だし、ひとりひとりの予想は大した情報ではないし、ましてや過去の予想結果である。
関西人のことばなら「あほらし」と一蹴するほど、意味のない情報なのだ。
だが、集計することで、わたしたちの投票行動がどのようなものか、明らかにすることができるのである。
常日頃、自分の予想は優れているのかどうか、自信のない人は多いだろうと思う。
1番人気の勝率が33%なのだ。
自分の本命が3分の1も勝つ域には遠く及ばず、儲けた、儲けた、と豪語する他人様(ひとさま)の姿を見て焦る気持ちも生まれてくるだろう。
だが、隣の芝生は青く見えるだけだということが、次項以降に目を通していただければ分かると思う。
▼本命の勝率は20%
調査対象だが、予想大会を開いているものや個人のブログなどから抽出してきた。
サンプル数は119件である。
2021年の年間で100レース以上予想されているものに絞っている。
僅かだが、障害競走を含む。
年間を通じて予想しているものであれば、それなりの経験と自信のあるものだとみている。
特に予想大会のように第三者が管理しているものであれば、事後書き直す不正も少なかろうと考えられるので、サンプルに占める割合を多くした。
ただし、運営会社ごとにルール上の制約はあるようだから、買い方については参考とする。
個人のサイトの場合、息長く予想しているところを選んだ。
なお、回収率を明らかにしているものは手元に集計しているが、予想精度を調べる目的と異なるので、参考に触れる程度にとどめる。
この予想集団は、それなりの自信をもって公開しているものと思われるので、全投票者の平均と同じか、平均よりもレベルの高い集団であると考えている。
少なくとも、平均以下の集団とは考えにくい。
この予想集団の本命的中率の平均は以下のとおりであった。
▼図表368-1 予想集団平均の本命勝率
|
予想競走数平均 |
本命1着数平均 |
本命2着数平均 |
本命3着数平均 |
勝率 |
連対率 |
複勝率 |
予想集団平均 |
1,284 |
242 |
177 |
144 |
19% |
33% |
44% |
個人のブログでは結果を示していないこともあって骨が折れた。
手拾いで辿り着いたのが上記の表である。
読者の皆さんがどのように想像していたかは知る由もないが、わたしの個人的な感想で言えば、本命の勝率が2割を切るとは予想すらできなかった。
正直申し上げて、勝率25%程度はあると考えていた。
もちろん、机上の予想を集計したものである。
あくまで公開予想であるから実態はもっと良いものかもしれないし、勝負馬券の種類が単勝以外のものも多かったので必ずしも勝ちにこだわるわけではないこともあると思う。
それでも、「ちょっと低いのでは」と思われた。
勝率ひとつでは心もとないので連対率、複勝率も調べたが、これも上記のとおりだった。
複勝率なら50%台後半くらいになると予想していたが、そうでもなかった。
これが、ビギナーズラックの少ない予想集団なのである。
ここでは対比しないが、予想紙の本命がいかに優れているか、お分かりいただけただろう。
わたしの考えていた予想者の平均像は、勝率25%弱、複勝率55%弱というものであった。
本命が4回に1回勝利するくらいである。
このブログはこれを前提とし、10回に3回すなわち30%の勝率をどこまで目指せるか、と考えながら書いてきた。
10回に2回勝つなら大差ないと思うかもしれないが、プロ野球の打者で言えば、3割打者と2割打者の違いと同じである。
読者の中には「それでも平均より上だ」と安心(?)した方もいるかもしれない。
平均よりは上だというのは事実であろうが、これは予想集団の平均である。
優れている人は優れているし、そうでない人はそうではない。
分布を見なければならない。
その話は次の夜につづく。
蛇足である。
分かる範囲での分析だが、この予想集団のレース的中率は22%、回収率は81%であった。
予想に掲げた券種で、ひとつでも的中した買い目があると1レース的中となる。
レース的中率は低いと思われるかもしれないが、回収率はおそらく高いと思われただろう。
このあたりにも触れてみたいと思っている(触れないかもしれないが)。
(SiriusA+B)