▼左回り右回り
俄かに信じがたいことがあると、わたしたちは嘘臭いとか胡散臭いと言う。
要するにエビデンス不足と判断したわけだ。
だが、難しい理論だったり特別な能力(スキル)が必要だったりするだけで、実際には有用かもしれない。
無実の罪かどうか、自ら確かめることができるならそれに越したことはない。
「左回り右回り功者」もそのひとつとわたしは思っている。
ところが、エビデンス不足なら補えば分かる、と意気込んでみたものの、いざ調べてみると難儀した。
この一週間というもの、取っ掛かりすら掴めなかった。
まったく無関係というものではなさそうだが、競走条件が複雑過ぎて、「だから左回りが得意だ」みたいなことは分からず仕舞いであった。
競馬場の高低・平坦、距離、大回り・小回り、遠征、東西などとの関係を分離できなかったのである。
中央競馬は右回りコースが7場で主流だ。
左回り3場は、比較的大回りコースであることも分析を難しくしている。
心臓が左寄りにあることから、左回りのほうが速く走れる(らしい)が、大回りコースも速く走れるので、判断ができなかった。
最もG1競走の多い東京競馬場が少数派の左回りというのにも手を焼いた。
調べていくうち、関係者は左右、距離、芝ダ、形状、高低などを「コース」としてセットで考えているのだろうと思い至った。
それはそうだ。
競馬予想者がコースを細かく分解し過ぎである。
さらに、成績を見ながら得意なコースに出走させるようになるため、左回りをほとんど経験しない馬も出てくる。
「実は、走ったことはないけれど、左回りが得意だ」というのは分からないのである。
結局、左右問題は「コース適性」という大括りの中に含まれていると考える。
少ない出走履歴で、左回りだけを持ち出して功者だと断言はできそうにない。
ただ、左回り右回りの得手不得手が存在することは確かなようだ。
問題は、これをもとに馬券を買うことは難しいということである。
さらに残念なことに、左回りが得意かどうかは走ったあとでしか分からない、わたしには。
「調教師はよく適性を見極めてレースを選んでいる」すなわち、わたしたちがコース適性を考える前に調教師が考えている、と信用するしかない。
▼パドック、返し馬
左回り右回りは、エビデンス不足であっても、得意不得意はありそうだった。
では、パドックや返し馬はどうか。
パドックで馬が分かるというソロモンの指輪を付けているらしい人はいるけれど、これもわたしは未だに分からない。
タイキシャトルが嘶く(いななく)エピソードは以前このブログで取り上げたが、このような「親切な馬」はほぼいない。
見て分からないから、調子が良いと説明されても分からないのだ。
踏み込みや落ち着き、外見の変化は分かるかもしれないが、馬券に繋がっていかない。
これはエビデンス不足というより、相馬眼のない人には理解できないということだろう。
返し馬もよく分からないのだが、このウォーミングアップは、競走馬研究所の古い資料にある。
わたしにはちょっと難しい内容で消化しきれていないが、強すぎてもダメで「中程度」が良いと書いていると解釈した。
返し馬でほとんどウォーミングアップしないのは落ち着かせるためらしく、こういう情報は成績と関連づけられるかもしれない。
「ウォーミングアップする」「長く又は強くウォーミングアップする」「あまりウォーミングアップしない」の3種類に分類するのも手である。
パドックや返し馬は、観る力に依るのでエビデンス不足になることは否めない。
後段で述べたように、ウォーミングアップの種類分けくらいはできそうだが、ふつうの人には予想の柱に据えるのは難しそうだ。
ただ、買うつもりだった馬を削ったり、気になって加えたりというのには有用だ。
むしろ、最後の取捨選択材料として活用さるべきものなのかもしれない。
こちらも、嘘臭い、ではなく、見る力が必要だというだけではないだろうか。
ただ、悔し紛れに嘘臭いというのは如何かと思うが、実際のところ、パドックや返し馬が結果に及ぼす影響は少ない、とわたしは推定している。
調べているうちに、そういうことが分かってきた。
パドックと返し馬は、馬の調子に着目したものと言っていい。
残念なのは、調子と結果が思ったほど相関していなさそうなことである。
基礎能力が高い馬が多少不調でも勝ってしまう。
これは能力が拮抗したレースで勝敗を分けるかもしれないが、全体的には、
能力、適性、調子
という順番でウエイトをかけて考えるほうが説明しやすい気がする。
つまり、結果論だが、勝ち馬の勝因を、能力、次いで適性に求めるのが妥当なケースが多いように思う。
「絶好調だったとしか説明がつかない」というのは滅多にないのだ。
さらに言えば、適性と調子の間に「相手関係、競走内容」を加えることもできる。
ライバルの数、発馬、折り合い、ペースといったものである。
ダラダラ書いただけと思われるかもしれないが(いや、実際そうだが)、載せるに値する作表ができなかっただけで、いつも以上の労力をかけた。
仮説を立てながら膨大な検証を繰り返した。
結果が出なくて悔しいので、今回はボツネタにしなかった(通常はゴミ箱行きレベル)。
こんな記事にも目を通してくれた人には申し訳ない。
(SiriusA+B)