2023年11月5日日曜日

第440夜 距離の三段活用(距離比、適性、母集団)(2)距離適性


▼良績だったから、距離適性有り?
前夜は競走距離を、前走との「距離比」という切り口で考察した。
一般的には「距離適性」に用いられるように思う。
前夜にも触れたとおり、競馬場、コース形態、芝ダートの別など、適性は複合要因である。
正直申し上げて、まったく不可能ではないが、切り分けて分析することは難しい。
もともと、適性を判断するには資料不足というのが実態である。
何十戦も走る馬はいるが、多くの馬は、未勝利馬なら10戦、それ以外でも20戦すればいいところだ。

結局のところ、適性と言っても、成績が良かったところを指すに過ぎない。
1,200m
で好走したら、何度でも同条件で走る。
もしかしたら、2,000mのほうが向いているのではないか、という疑念があっても、1,200mで成績が頭打ちにならない限り、簡単に路線を変更できない。
(
利害)関係者は多いのである。
逆に言うと、成績が頭打ちになった、これ以上この条件では勝てそうにない、というコンセンサスが関係者間で得られると、競走条件を変えられる。
先行できるが息切れすれば距離短縮、上がりはいいけど前に行けなければ距離延長、そもそもスピードがないとみれば芝からダートへ。
関係者でさえ、走らせながらファインチューニング(微調整)を繰り返す。
「もしかして、すべての距離で出走させれば分かるんじゃね?」
貴方はそう言って笑うかもしれない。
確かに、各馬がさまざまな距離で100走くらいすれば分かるかもしれない。
それをしないし、できないから競馬である。
未知の距離を走らせるとき、距離適性を当てられればホンモノの判断者なのだが、たかだか馬券を買う程度のわたしたちが、調教師以上の判断をできるような気はしない。

1,200mから3,600mまで
多くの距離で出走したらどんな結果になるのだろう。
さすがにそんな馬はいないが(競馬は遊びではない)、競走距離の幅広い馬は見つかった。
さて、この馬の距離適性はどこにあるのだろう。

2013
年産駒のレイホーロマンスという牝馬は小柄で、400kgソコソコで最大でも440kgに届かなかった。
新馬・未勝利で勝てず、地方競馬に回って3勝を挙げ、古馬戦線に残った。
2017
4歳時に3勝を挙げ、2018年からオープンで戦った。
その後は20213月まで走って繁殖に上がったが、勝てずとも3着以内に飛び込んでくることもあった。
中央競馬での最終成績は[3-4-3-30]
40
戦して複勝率は25%と立派な成績を修めた。
牝馬では少数派の8歳まで現役で、関係者はオープンでなんとか勝たせたかったのだろうと想像すると胸が熱くなる(が、ブログの趣旨外のところなのでここまで。以下、関係者の皆さんの意図と異なる点があればお赦しください)

彼女の興味深い点は、中央では芝のみだったが、競走距離は1,200mから3,600mまで幅広かったことだ。
器用だったのか、関係者も悩んだのか、わたしは知らない。
経歴を見ていると、マイルでデビューし、長いところ、短いところと試行錯誤し、最終的に中長距離適性と判断されたようだ。
比率は半分ではないが、上がり3ハロンを引いた部分をわたしは「前半」と呼ぶが、この前半で先行したのは第2戦の未勝利戦だけで、ふだんは45番手から後方で競馬をしていた。
振り返れば、小柄な牝馬で先行争いを避けるスタイルだったのかもしれない(先行できなかったのかもしれない)
どの距離でも後ろのほうで走る。
「先行できず上がりはソコソコのスピード」なら距離を延長することがよくあるが、長くしても短くしても変わらなかったようだ。

この競走成績を見て、距離適性はどのあたりだったのか、判断することは難しい。
2,000mだよ」と答えてくれそうな人もいると思うが、確かに12132回と好走しているものの、凡走数もまた多く、それゆえ最後までいろいろな距離で走ったのだろう。
彼女は器用過ぎる。
競走馬は1ハロンの違いでも影響する、と前夜に申し上げたが、真逆である。

ちなみに、上がり3ハロンは引退するまで優秀な部類であった。
もしかして、前半はすべて助走感覚だったか。
上がり3ハロンだけ全力疾走なら、彼女はほとんど同じ距離で勝負していたとも言える。
彼女は、次の夜にも少し触れる(予定)
(SiriusA+B)

(図表440-1)
レイホーロマンス号の中央競馬競走成績(すべて芝、クラス表記は現在に合わせた)
競走日付 競馬場 R 距離 クラス 単勝 人気 順位 前半速度順位 後半速度順位 4角通過順位
2015/11/7 京都 06R 1600 新馬 19.8 5 8 10 6 10
2015/12/12 阪神 04R 1600 2歳未勝利 84.7 10 5 2 8 2
2016/1/11 京都 05R 1800 3歳未勝利 94.1 10 11 6 10 5
2016/3/6 小倉 05R 1200 3歳未勝利 44.2 10 2 9 3 9
2016/3/27 中京 03R 1400 3歳未勝利 37.7 11 10 15 9 15
2016/7/30 小倉 03R 1200 3歳未勝利 19.3 7 11 17 2 16
2016/8/28 小倉 06R 2000 3歳未勝利 23.5 7 10 15 7 15
2016/9/10 阪神 08R 2000 3歳上1勝 241.1 13 8 5 9 6
2017/1/28 中京 08R 2000 4歳上1勝 45.9 9 5 11 1 11
2017/2/19 小倉 07R 1800 4歳上1勝 8.5 2 1 11 1 7
2017/3/20 中京 10R 2000 4歳上2勝 20.9 10 4 8 8 8
2017/4/22 京都 09R 2200 4歳上2勝 7.2 3 2 7 4 8
2017/5/21 京都 09R 2000 4歳上2勝 8.1 4 1 5 1 5
2017/11/19 京都 10R 1800 3歳上2勝 26.9 9 4 11 2 11
2017/12/17 中京 12R 2200 3歳上2勝 2.5 1 1 5 3 4
2018/1/13 中京 11R 2000 4歳上OP 25.1 11 2 12 1 12
2018/3/10 中山 11R 1800 4歳上OP 18.8 9 3 13 1 11
2018/4/21 福島 11R 1800 4歳上OP 5.7 3 5 6 5 6
2018/6/10 阪神 11R 2000 3歳上OP 6 1 6 11 4 14
2018/7/8 福島 11R 2000 3歳上OP 6.7 2 6 7 6 9
2018/8/5 小倉 11R 2000 3歳上OP 23.9 8 4 10 1 6
2018/11/11 京都 11R 2200 3歳上OP 110.7 12 13 11 8 11
2018/12/8 中京 11R 2000 3歳上OP 21 8 4 14 3 14
2019/1/26 中京 11R 2000 4歳上OP 19.8 7 7 10 4 10
2019/3/9 中山 11R 1800 4歳上OP 43.2 13 8 14 1 12
2019/10/21 東京 11R 2000 3歳上OP 94.5 11 10 8 8 8
2019/11/10 京都 11R 2200 3歳上OP 393.7 18 13 15 8 15
2019/11/30 中山 11R 3600 3歳上OP 29 9 8 5 9 5
2020/1/6 京都 11R 3000 4歳上OP 44.1 10 4 15 2 15
2020/1/18 小倉 11R 2000 4歳上OP 40.4 11 3 6 4 5
2020/2/23 小倉 11R 1800 4歳上OP 20.8 6 4 9 4 9
2020/3/14 中山 11R 1800 4歳上OP 25.5 9 5 16 1 16
2020/5/9 東京 10R 2400 4歳上OP 35.9 10 11 11 8 11
2020/6/14 阪神 11R 2000 3歳上OP 18.5 10 13 5 15 5
2020/7/19 函館 11R 2000 3歳上OP 58.9 14 5 13 2 13
2020/8/16 小倉 11R 2000 3歳上OP 20.7 7 9 12 6 12
2020/11/21 阪神 11R 2000 3歳上OP 119.8 12 3 9 3 9
2021/1/5 中京 10R 3000 4歳上OP 15.2 5 2 4 2 4
2021/1/17 中京 11R 2200 4歳上OP 45.1 9 6 12 3 12
2021/3/7 阪神 11R 1800 4歳上OP 21.5 7 11 16 7 16

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