2023年11月12日日曜日

第441夜 距離の三段活用(距離比、適性、母集団)(3)母集団


▼スピード指数の功罪
スピード指数の凄いところは、競走条件の違いを超えて比較できるようにしたことである。
今もなお、同じ土俵に競走馬を並べることができるのは、ひとえにスピード指数の登場によるものだとわたしは思っている。
問題は、利用者がこれを万能と思っているところにある。
ある程度揃えることはできても、やはり競走条件の違いは別途考慮しなければならない。
これは適性の問題だけではない、というのが、今夜の主題である。
わたしは、母集団も考慮すべき材料ではないかと思っている。
何の母集団かと言えば、競走条件別のグループである。

比較的疑問を持つことも少ないと思っているのだが、競馬の競走条件はバリエーションに富んでいる。
芝とダート、競馬場、1,000mから3,600mまでの競走距離がある。
このシリーズでは競走距離に着目して考察しているのだが、当然すぎるのか、母集団の大きさの違いを指摘した記述はあまり見かけない。

▼母集団の大小
図表441-1には、出走経験がある頭数を距離別・芝ダート別に集計したものである。
2009-2017
年産駒で2011-2021年中央競馬平地競走の実績である。
その後に走ったものはカウントされていないが、集計結果に大きな影響はない。
参考に延べ出走件数を併載したが、見ていただきたいのは実頭数である。
対象となった46,377頭のうち、例えば1,800mダート競走には43.3%の馬が走ったことがある。
他方、芝3,600mでは僅か74頭しか走ったことがない(競走名は分かるよね)
わたしの中では基幹距離と言っているのだが、20%以上の馬が経験する競走距離(芝ダート別)は、実は僅か9種類なのである。

これは何を意味するかというと、母集団の小さな競走条件は母集団の平均レベルが必ずしも競走馬全体の平均レベルと一致していない可能性があるということである。
競走馬にとっては、競争相手も限られている魅力的な世界だ。
ここでの成績は、基幹距離の競走で通用するかどうか、見てみないと分からないのだ。
実際、レースではひょっこり穴を開けることがある。
ここでは例を挙げないが、興味のある方はぜひ調べてみてほしい。
例えば、2,000m戦に前走2,500mを走った馬が参戦してきた場合、成績上は平凡でも1着や2着になったりする。
もちろんその逆もある。
基幹距離の競走以外はレース数が少なく、競走機会を求めて「転生」してくる。
距離比も馬券検討の目安だが、「前走が珍しい距離組」は注意深く競走履歴を確認したい。
もしかしたら、貴方が「この馬は拾えないな」と思って見逃した馬のうち、何頭かは「異世界からきてチート能力を発揮した」馬かもしれないのだ。

前夜に登場した牝馬レイホーロマンス号は、2,200m121回、3,000m3着の記録がある。
2,000m
が主戦場だったが、わたしは成績を見返して、本当の適性距離は1,800mだったのではないかと思っている。
2,200m
3,000mの好走は間違いなく実力だが、もしかしたら競争相手の手薄な距離だったから比較的容易に成し得たのかもしれない。

競走条件はバリエーション豊かだが、均等にレースを組んでいるわけではなく、大小の母集団を形成して実力比較を難しくしていることを覚えていて損はない。
(SiriusA+B)

(図表441-1)競走条件別経験頭数、延べ出走件数
競走条件 出走実頭数 出走割合 出走件数 割合
ダ1800 20,072 43.3% 62,168 14.2%
芝1600 16,775 36.2% 40,126 9.2%
ダ1200 16,435 35.4% 49,214 11.2%
ダ1400 16,050 34.6% 40,079 9.1%
芝1800 15,883 34.2% 38,956 8.9%
芝2000 13,758 29.7% 39,213 8.9%
芝1200 13,141 28.3% 43,835 10.0%
ダ1700 12,057 26.0% 26,032 5.9%
芝1400 11,871 25.6% 26,098 6.0%
ダ1600 7,923 17.1% 15,073 3.4%
芝2200 4,274 9.2% 8,077 1.8%
ダ1000 4,079 8.8% 7,973 1.8%
ダ1150 3,480 7.5% 4,966 1.1%
芝2400 3,460 7.5% 7,041 1.6%
ダ1300 2,967 6.4% 4,203 1.0%
ダ1900 2,463 5.3% 4,220 1.0%
ダ2100 2,338 5.0% 4,721 1.1%
芝1000 2,259 4.9% 3,978 0.9%
芝2600 2,047 4.4% 3,939 0.9%
芝1500 1,568 3.4% 2,056 0.5%
ダ2000 1,303 2.8% 1,953 0.4%
ダ2400 1,024 2.2% 1,951 0.4%
芝2500 622 1.3% 1,200 0.3%
芝3000 274 0.6% 342 0.1%
ダ2500 248 0.5% 303 0.1%
芝2300 246 0.5% 247 0.1%
芝3200 95 0.2% 127 0.0%
芝1700 88 0.2% 90 0.0%
芝3400 76 0.2% 90 0.0%
芝3600 74 0.2% 94 0.0%
46,377 438,365

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