2024年5月26日日曜日

第468夜 「わたしたちの予想技術が向上したのか」「違うと思うよ」


▼穴馬が減った?
長期トレンドを観察すると、「おっ」と興味深い現象に気付くことがある。
たいていは糠喜びである。
近年、単勝人気の穴馬が減少している、という現象も糠喜びであった。
図表468-1は、オッズ別に分けた出走頭数の分布である。
2011-2023
年の平地競走出走馬で、延べ613,561頭に及ぶ。
(
図表468-1)オッズ別出走頭数

オッズグループ 勝利頭数 出走頭数 勝率 出走頭数に占める割合
2倍以下 5,299 11,204 47.3% 1.8%
4倍以下 12,598 47,306 26.6% 7.7%
8倍以下 12,186 88,239 13.8% 14.4%
16倍以下 7,090 95,476 7.4% 15.6%
32倍以下 3,725 99,766 3.7% 16.3%
64倍以下 1,580 89,714 1.8% 14.6%
128倍以下 612 77,981 0.8% 12.7%
128倍超 224 103,875 0.2% 16.9%
上表では「ついでに」勝率を載せているが、この記事では使用しない。
注目いただきたいのは出走頭数に占める割合である。
蛇足だが、こうした分布を示すのに、グループの幅を倍々にしてまとめると、各グループの数がある程度似たものになるので、わたしはしばしば、こうしたグループ分けをする。
今回のグループ分けでも「だいたい」9万頭前後、各グループの割合は15%前後に分けることができた。

この「出走頭数に占める割合」を開催年別に細分化したのが図表468-2である。
(
図表468-2)開催年別オッズ別頭数
オッズグループ 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年
2倍以下 1.9% 1.7% 1.7% 1.7% 1.5% 1.8% 1.9% 2.0% 2.0% 1.8% 1.8% 2.0% 2.0%
4倍以下 7.6% 7.7% 7.3% 7.3% 7.4% 7.4% 7.4% 8.0% 7.8% 7.9% 8.1% 8.3% 8.1%
8倍以下 14.2% 13.8% 13.6% 13.8% 15.1% 13.9% 14.1% 14.3% 15.1% 14.6% 14.9% 14.9% 14.9%
16倍以下 15.7% 15.4% 16.7% 16.5% 15.8% 15.2% 15.3% 14.5% 15.8% 15.7% 15.6% 15.0% 15.1%
32倍以下 15.1% 15.8% 16.7% 17.1% 17.0% 16.6% 16.8% 15.6% 16.2% 16.7% 16.7% 15.3% 15.5%
64倍以下 13.9% 14.8% 14.2% 14.7% 14.7% 15.0% 15.3% 14.1% 14.6% 15.2% 14.9% 14.4% 14.3%
128倍以下 12.4% 13.2% 12.5% 12.9% 12.7% 12.8% 13.2% 12.8% 12.5% 12.4% 12.7% 12.7% 12.3%
128倍超 19.1% 17.5% 17.3% 16.0% 15.9% 17.2% 15.9% 18.7% 16.1% 15.6% 15.4% 17.4% 17.9%
8倍以下 23.7% 23.3% 22.7% 22.8% 23.9% 23.1% 23.5% 24.3% 24.9% 24.3% 24.7% 25.2% 24.9%
8倍超 76.3% 76.7% 77.3% 77.2% 76.1% 76.9% 76.5% 75.7% 75.1% 75.7% 75.3% 74.8% 75.1%
凸凹しているし大きな変化ではないが、各グループを年度別の折れ線グラフにしてみると分かりやすい。
が、面倒臭いという人のために、特別サービスとして「8倍以下」と「8倍超」の、ふたつにまとめたデータを付記した。
人気の高い集団すなわちオッズの低い「8倍以下」のグループは、出走馬に占める割合が増加傾向にあり、「8倍超」のほうは減少傾向にある。
特定の馬に人気が集中するようになってきた、と解釈できそうな数字である。
「もしかして、わたしたち馬券予想者の予想精度が向上しているのか」と、わたしは一瞬そう思った。
参加頭数の増加、斤量の増加、古馬降級制度の見直しなど、予想をするうえで出走馬間の差を広げてもらえると予想はしやすくなる。
こうしたことが頭をよぎり、そのように早合点したのである。

▼出走頭数
ここで落ち着いて、単勝平均配当や平均出走頭数を並べてみると、予想精度が向上しているわけではないことが分かる。
図表468-3は、先ほどの8倍超の割合に、平均頭数・平均配当を追記したものである。
この3つを今度こそグラフにしていただきたい。
いずれも凸凹しているのだが、3つとも、似たようなグラフになることが一目瞭然なのだ。
穴馬の割合が減ったのは、出走頭数による。
平均単勝配当の上下動も、出走頭数による。
わたしたちの予想精度向上の気配さえ感じられなかった。

(
図表468-3)開催年別平均単勝配当、平均出走頭数と、オッズ8倍超の出走馬に占める割合(再掲)
開催年 競走数 出走頭数 平均頭数 平均配当 8倍超割合 1番人気勝率 1番人気敗退率
2011年 3,331 47,389 14.2 10.0 76.3% 31.7% 68.3%
2012年 3,321 48,097 14.5 10.8 76.7% 31.5% 68.5%
2013年 3,324 48,293 14.5 10.6 77.3% 31.9% 68.1%
2014年 3,326 48,560 14.6 10.7 77.2% 32.3% 67.7%
2015年 3,326 48,240 14.5 10.4 76.1% 30.4% 69.6%
2016年 3,326 48,331 14.5 10.7 76.9% 33.0% 67.0%
2017年 3,329 47,585 14.3 10.5 76.5% 33.5% 66.5%
2018年 3,328 46,869 14.1 10.0 75.7% 31.8% 68.2%
2019年 3,325 45,777 13.8 10.0 75.1% 32.6% 67.4%
2020年 3,331 46,564 14.0 10.8 75.7% 32.2% 67.8%
2021年 3,329 46,168 13.9 9.8 75.3% 32.8% 67.2%
2022年 3,331 45,649 13.7 9.7 74.8% 34.1% 65.9%
2023年 3,329 46,039 13.8 9.8 75.1% 33.0% 67.0%
期間計 43,256 613,561 14.2 10.3 76.1% 32.4% 67.6%

▼主催者との闘い?
こうして、毎日のように、糠喜びして、すぐに気付いて、というのを繰り返しているのだが、絶望的に予想精度は向上していない。
図表468-3には1番人気馬の勝率とその逆の敗退率を併せて載せている。
1
番人気の勝率は上がっているように見えても、1番人気敗退率のほうをグラフにすると、やはり出走頭数と相関性の高い曲線になる。
ただ、平均配当や8倍超の割合に比べれば、1番人気敗退率はそれほど相関していないようにも見える。
もしかしたら、予想精度向上の光明が、僅かながら見えているのかもしれない。
競馬予想の難しさとは何なのか、突き詰めてみると、比較の難しさと能力差である。
さまざまな要素の比較が簡単になったり、出走馬間の能力差が拡大したりすれば、予想が平易になり的中しやすくなる。
主催者は、コースのバリエーションや出走頭数、ハンデその他で調整をしているといってもいい。
もちろん、競馬オペレート説とは異なる。
主催者としては、出走馬を均質化し偶然性を一定割合で発揮させる(どの馬にも勝つチャンス)ことが目標なのだ。
その均質化された出走馬でアタマひとつ抜き出ているものを探す。
その点では主催者との闘いであるとも言える。
正確に言えば、予想精度の向上はあるかもしれないが、未だ主催者の掌の上にいる。

(SiriusA+B)

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