2024年7月21日日曜日

第476夜 彼女が飛んできた理由ではなくて、飛んでくると信じられなかったボクらの理由


ふたつの点で難解なレース
2024
623日京都第7競走は、3歳上1勝クラス戦で、ダート1800m牝馬限定競走だった。
馬場状態は不良、天候は雨だった。
出走馬は15頭、下馬評で人気を分け合った2頭のうち、2番人気オーケーカルメン号が勝った。
2
着には11番人気シゲルオトヒメ号、3着に10番人気のスライスヘリテージ号が飛び込んだ。
いわゆる平場のレースで、単勝3.6倍も特異ではなかったが、23着を組み合わせた馬券は、荒れた。
本命馬候補が2頭いたために、馬券人気は分散し、配当以上に難しかった印象だ。
この記事を書くために、事後でも予想を消さない、健全な100人ほどの公開予想者を見たが、「完全に捉えた」とわたしが認定できた予想者はひとりだけで、部分的な的中を含めて当てた人は少ない印象だった。

わたしは予想の復習はしないが、レースを材料に研究するというなら、「何故この馬を拾えなかったか」ではなく、「入着馬は何故人気/人気薄だったのか」に重きを置いてみるのも、得られるものは少なくないと思う。
長期的に黒字を目指す競馬予想の要諦は、馬の勝ち負けではなく、人気との乖離だ。
このレースは特殊なものでもなんでもないけれど、この点で興味深いレースだったのでとり上げた。

本命馬はどちらだったのか
このレースでは、多くの人が、軸馬或いは本命馬として、1番人気と2番人気オーケーカルメン号との選択に迫れられたと思われる。
もちろん別の馬もいるし、本命馬を決めないボックス買いや複数の主軸を取る戦略もあるが、多くの競馬ファンはどちらかを本命、もう一方を対抗かそれ以下に決めたのではないか。
オーケーカルメン号がやや劣勢で2番人気になったが、ここに最初の課題がある。
予想者の下馬評では、オーケーカルメン号を推す評価は多かったように思う。
蓋を開けてみれば2番人気だったわけだが、1番人気馬の最終オッズは3.5倍だった。
牝馬限定戦とはいえ、オーケーカルメン号が410kg台の軽量馬で、追い込みの脚質と見られていた(実際、追い込みで勝った)ことが、1番人気馬との差になったとわたしは考えている。
追い込み戦法では届かないのではないかと思われたのだろう。
軽量馬の追い込み戦法は、実はよく目にする。
他馬との接触を避けることが多いのかもしれない。
この日の京都ダートの馬場状態は不良で、これが稍重か重だったならば、軽量馬優位として1番人気になった可能性もある。
不良は難しいのだ。

▼2
着馬は買えない馬だったか
このレースでは、2着馬シゲルオカリナ号を拾えるかどうかが、次のポイントだろう。
戦績をデビュー戦から眺めてみたが、あまり人気のある馬ではなかった。
新馬戦では9番人気で3着に突っ込んできた。
5
戦目に、7番人気で勝ち未勝利を脱した。
しかし、直近3走は、121313番人気である。
特に前走は13頭立ての最低人気だったが、4着に入った。
今回も11番人気で、前走4着をもっと評価されてもいいのに、と思うのだが、勝ち馬との着差が15もあったことが、評価のあまり上がらなかった理由かもしれない。
こういう馬こそオッズ以上に走る「馬券として美味しい馬」だ。
牝馬で軽量、追い込み馬とくれば、連勝でもしない限り、おそらく生涯1番人気になることはないだろう。
マイナス材料すなわち馬券を購入するのに躊躇いやすい要素が幾つもあるので、人気になりにくいのだ。
ただ、1勝し、未勝利を脱した馬である。
実力がないわけではない。
古馬条件戦では、出走馬間の実力差が小さく、ちょっとしたことで着順が替わる。
実力差が小さい。
この馬は滅多に来ないが、まったく来ないのではないのだ。

▼3
着馬は更に難解で
3
着馬スライスヘリテージ号は2着馬よりひとつだけ人気があった。
10
番人気である。
更にピックアップしにくい気がする。
未勝利馬で、唯一、美浦からやって来た。
ルールが変わって京都で出走できた(以前は第三場でしか走れなかったように記憶する)
西高東低、未勝利で、最高成績は31回。
このときは9番人気だった。
地方競馬遠征もなく、正真正銘の未勝利馬である。
買える?
ちなみに、予想者の下馬評では、2着馬シゲルオカリナ号といずれかをヒモとするくらいだった。
1
着・2着を固定して3連単で完勝した人以外はなかなか難しい結果だ。

スライスヘリテージ号は、どこかに買えるポイントがあるのか。
人気では、3番人気が1回、5番人気が2回あったほかは、かなりの人気薄だった。
着順は既述のように31回である。
ただ、この馬、初戦14着の大敗を喫したあとは、31回を除きすべて456着であった。
比較的前の方で走ることもでき、出遅れても末脚はそれほど悪くなかった。
これまでの9戦のうち、低人気とはいえ、7戦で人気より前の着順で入線した。
安定はしていたのだ。
だからこそ、未勝利戦で勝てなくても厩舎に残ったのだ。
いつかきっと、という馬だと思うと、適性を考え、京都まで遠征してでも勝負になると考えられたに違いない。
1700m
戦にも使わず、1800m戦だけを選んで関東を転戦してきた。
ほとんどのレースがダート1800m(1レースだけ2400m)ということも考えると、脚質を考えて京都にしたのではないか。
マイナス点として、多くのレースで勝ち馬との着差が1秒以上あったから、人気にならなかった。
口悪く言えば「脚の遅い馬」、綺麗に言うと「スピードのない馬」なだけだ。
不良馬場で、勝ち時計は1515と速いほうだが、追い込みした2頭がワンツー、先行馬が崩れるレースだったから、3着に食い込んでも不思議ではなかった。

▼来るか来ないか、より、買えるかどうか、が問題
このレースは、上位2頭が拮抗していたことと、23着馬が人気薄だったこと、のふたつの難解なポイントがあった。
問題は、買えるか、である。
馬券を絞ろうとするあまり、複数のマイナス材料で「切って」しまうのがわたしたちだ。
「能力はあるのだけれど」ではなくて「能力はある」で拾う。
能力があれば、来る可能性は常にある。
来た理由など挙げていても仕方がないのだ、もともと能力があって「ハマった」という理由でほとんど片が付く。
有力馬が多くて皆が手控えた「能力はある」馬こそ、積極的に拾いたい。
このレースの的中馬券は、同じ予想をしても考え方で手にできるかどうか分かれたかもしれない。
レースを振り返るとき、わたしはそんなことを考えている。

(SiriusA+B)

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