2024年12月1日日曜日

第495夜 馬を消す魔法使いとリスク嫌いの財務官


▼初級魔法では歯が立たない
ライトノベルのようなタイトルをつけたが、中身は通常運行である。
「消去法」或いは「消し材料」などという。
「この馬は馬券圏内には入らないだろう」という馬を検討対象から外す予想法である。
本命に鉄板がないように、消し材料で消された馬が3着までに入線する可能性はゼロにならない。
それでも、かなり高い確率で馬券に絡まない馬を探そうという。
この消し材料の使い手は、もっぱら重賞など主要競走の予想に特化しているケースが多いようで、消し材料がどれくらいの効力を持っているのか示してくれるものは少ない。
例えば「ダートの内枠は消し」の確実さはいかほどのものなのか。
そこで、代表的と思われる「消し材料」をピックアップし、その威力を見たのが、図表495-1である。

(
図表
495-1)消し材料別成績
略称 勝ち鞍 対象頭数 勝率 全体頭数 カバー率
1牝馬 1,543 25,230 0.061 91,688 0.275
2高齢 470 13,165 0.036 91,688 0.144
3人気 229 18,343 0.012 91,688 0.200
4着順 623 25,399 0.025 91,688 0.277
5辛勝 117 1,352 0.087 91,688 0.015
6軽量 163 4,067 0.040 91,688 0.044
7後方 933 23,742 0.039 91,688 0.259
8枠番 776 11,512 0.067 91,688 0.126
9連闘 134 2,621 0.051 91,688 0.029

集計範囲は20222023年の中央競馬平地競走である。
2
年間の出走頭数は、延べ91,688頭にのぼる。
このブログ用のデータベースなので、間違いなどはご容赦いただきたい。
消し材料は9項目用意した。
騎手など個人に関わるものについては対象外としている。
消し材料の内容は以下のとおりだ。
1
牝馬=牝馬限定戦を除く牝馬。
2
高齢=3歳上古馬戦の5歳以上馬、4歳上古馬戦の6歳以上馬。
3
人気=前走単勝オッズ80倍以上の人気薄馬。
4
着順=前走10着以下の着順馬。
5
辛勝=前走1着馬のうち、2着馬(同着含む)との着差が0.0秒の馬。
6
軽量=前走馬体重が420kg以下で出走した馬。
7
後方=前走4(コーナー)通過順位が10番手以下だった馬。
8
枠番=芝コース8枠、ダートコース1枠の馬。
9
連闘=「出走日-前走の出走日」=10日以内の馬。
オッズや馬体重は当日のものを使うことができるが、わたしのように当日のオッズを見たくない人もいると思われるので、前走のもので代用した。

ご覧のとおり、該当した馬は消し材料によって大きく違う。
1
牝馬や4着順、7後方は出走馬のうち4分の1が対象になっている。
ここでは緩めに設定したが、活用を検討する人にはもう少し精査してもらったほうが良いと思う。
勝率は全体で7.3%だったので、これを基準に考えると、5辛勝は8.7%の勝率で消し材料にしては成績が良すぎることが分かる。
最も勝率の低い3人気でも勝率は1.2%あり、それ以外は2.5%から6.7%までで、消し材料の威力としては小さい。
もし、貴方が馬を消す魔法を知っていても、初級魔法くらいでは心許ないということだ。
しかし、複数の消し材料を併用するとどうなるだろう。

▼初級魔法だけでも戦いようはある
図表495-2は、消し材料該当数別に成績を出したものである。
9
項目のうち、最大の消し材料数は7項目であった。
延べ6頭いたが、さすがに勝ち馬はいなかった。
厳しく見れば消し材料数4項目以上、多少リスクを承知の上で3項目以上くらいであれば、勝率は2%程度に抑えられる。
馬を消すには強い「消せる魔法」が不可欠と思われがちだが、初級魔法の組み合わせでもそれなりに通用する、ということだ。
なお、表中消し材料数0項目というのは消し材料のなかった馬で、勝率は11.9%であった。
消し材料1項目の馬は勝率が7.9%もあった。
これは消し材料というより「買い」かもしれない。

(
図表495-2)消し材料の数別成績

消し材料数 勝利回数 出走回数 勝率
7 0 6 0
6 1 147 0.007
5 7 1,222 0.006
4 61 4,851 0.013
3 233 11,000 0.021
2 870 18,740 0.046
1 2,264 28,513 0.079
0 3,231 27,209 0.119

▼リスクを取りにいく
図表495-2をさらに細かくしたのが図表495-3である。
延べ200頭以上が該当した消し材料の組合せを参考に記した。
このうち、勝率1%以下のものは勝率を太字で示している。
例えば、整理番号7番は、前走単勝80倍以上の人気薄で2桁着順、4コーナーも後方だった馬だが、2,898頭が該当し、勝ったのは24頭に過ぎなかった。
整理番号37番や44番の組合せでは、調査期間の2年間に勝ち馬は出ていない。
また、消し材料の項目数以上に、組合せ内容によって「消し」の有効性が大きく違っている。
そういうことが分かる。

「よし、こういう消し材料の馬を消していけばいいのだな」と考えるのはいい。
半面、消し材料の数が増えてくると、次第に人気馬に絞られてくることも忘れてはならない。
わたしたちは、馬券を絞り込むことに気がいき過ぎる傾向を持っている。
だから消し材料の馬を買い目から切ろうとする。
しかし、裏返してみると、不安材料ばかりの馬は人気がないから的中すれば高配当をもたらす。
眼前の収支を気にするあまりに、高配当馬券の可能性を自ら放棄してはいまいか。
ここには記していないが、整理番号46番は212頭中勝ったのは2頭、しかし単勝回収率は203%にもなった。
わたしたちは競馬をしに行くと、けち臭くなってしまう。
ついつい絞り込んでしまい、結果として人気馬の組合せばかり買って損をする。
カネを惜しんで短期で元手を取り返そうとするからだ。
しかし、長い目で見たとき、消し材料の多い馬も勝つ可能性はあり、いつもとは言わないが、無一文になることを覚悟で手を広げれていれば思わぬ配当に恵まれ、黒字になることもあるということだ。
そういう意味で、消し材料を安心材料とするのではなく、人気薄のシグナルと捉えることもアリ、とわたしは思う。
消し材料の多い馬は、やはりそれなりの成績になる。
その消し材料が多い馬から、馬券になる可能性を持つ馬を見つけ出すことこそが、予想の醍醐味なのである。
(SiriusA+B)

(
図表495-3)消し材料の組み合わせによる成績
整理番号 該当する消し材料 消し材料数 勝利回数 出走回数 勝率
1 消し材料なし 0 3,231 27,209 0.119
2 牝馬………………………………………… 1 901 9,725 0.093
3 ………………着順………………………… 1 179 3,988 0.045
4 ………………………………後方………… 1 369 3,854 0.096
5 ……………………………………枠番…… 1 400 3,848 0.104
6 ……高齢…………………………………… 1 204 3,189 0.064
7 …………人気着順…………後方………… 3 24 2,898 0.008
8 ………………着順…………後方………… 2 114 2,890 0.039
9 …………人気……………………………… 1 50 2,188 0.023
10 牝馬…………着順………………………… 2 86 1,712 0.05
11 …………人気着順………………………… 2 19 1,606 0.012
12 牝馬………………………………枠番…… 2 129 1,480 0.087
13 牝馬…………………………後方………… 2 83 1,176 0.071
14 …………人気………………後方………… 2 21 1,173 0.018
15 ……高齢……………………後方………… 2 54 1,166 0.046
16 牝馬……人気着順…………後方………… 4 7 1,064 0.007
17 牝馬…………着順…………後方………… 3 29 1,019 0.028
18 ……高齢……着順………………………… 2 26 1,010 0.026
19 ……高齢人気着順…………後方………… 4 4 887 0.005
20 牝馬高齢…………………………………… 2 40 846 0.047
21 ……高齢……着順…………後方………… 3 17 801 0.021
22 牝馬……人気……………………………… 2 13 798 0.016
23 牝馬……人気着順………………………… 3 9 759 0.012
24 ……………………辛勝…………………… 1 64 658 0.097
25 牝馬……………………軽量……………… 2 49 651 0.075
26 ………………………………後方枠番…… 2 67 630 0.106
27 ……高齢人気……………………………… 2 5 629 0.008
28 …………………………………………連闘 1 52 571 0.091
29 ………………着順………………枠番…… 2 23 550 0.042
30 ……高齢人気着順………………………… 3 6 513 0.012
31 …………………………軽量……………… 1 45 492 0.091
32 ……高齢…………………………枠番…… 2 31 457 0.068
33 ………………着順…………後方枠番…… 3 9 405 0.022
34 ……高齢人気………………後方………… 3 6 400 0.015
35 牝馬……人気………………後方………… 3 11 372 0.03
36 …………人気着順…………後方枠番…… 4 5 355 0.014
37 牝馬……人気着順……軽量後方………… 5 0 320 0
38 牝馬高齢……着順………………………… 3 8 308 0.026
39 …………人気……………………枠番…… 2 6 302 0.02
40 牝馬高齢……………………後方………… 3 15 295 0.051
41 牝馬…………着順………………枠番…… 3 6 253 0.024
42 牝馬……………………………………連闘 2 28 240 0.117
43 牝馬高齢人気着順…………後方………… 5 1 237 0.004
44 …………人気着順……軽量後方………… 4 0 224 0
45 牝馬高齢……着順…………後方………… 4 4 218 0.018
46 …………人気着順…………後方……連闘 4 2 212 0.009
47 牝馬………………辛勝…………………… 2 16 212 0.075



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