2016年3月30日水曜日

第73夜 ダートの深い砂を慎重に進む


▼ダートの速度

芝とダートでは芝コースのほうが速い。
少なくとも中央競馬では間違いない事実である。
ただ、第68夜で横道にそれて話題にしたように、盛岡競馬場1600mのレコードタイムでは芝よりもダートのほうが速い。
あくまでレコードタイムであり、馬場状態やダートの深さなど、諸条件が重なってこのような結果になっているのだが、ここでふと考えることがあった。
コースの大きさである。
ご存知の方も少なくないと思うが、盛岡競馬場(オーロパーク)は、芝コースの外側にダートコースがある。
つまり、ダートコースのほうが大きいのである。
一般に、コースが大きいほど速度は上がる。
カーブや坂道、直線距離による影響は無視できないものの、広々としたコースでは走破タイムが速くなる。
京都競馬場が良い例なのだが、同じ距離でも芝外回りコースのほうが芝内回りコースより速い。
競走条件を考慮しても(一般に内回りは下級条件になっている)、内回りは高低差が小さいにもかかわらず、やはり外回りが速いのである。
同じことがダート競走にも言える。
中央競馬では全10場で芝コースの内側にダートコースがある。
ダートは11500mに満たないところが多い。
小回りなのである。
ダートの速度が遅い理由には、「ダートだから」というだけでなく、「小回りだから」ということもあるのだ。
▼バラつき
芝とダートの違いでもう一つ。
芝コースでは、ダートに比べて着差がぎゅっと詰まっている。
スピード指数や速度を計算する人には広く知られている。
芝では着差が小さい分、紛れも多く、的中率がダートより低くなる傾向にある。
その理由として、ダートに出走する馬の実力のバラつきを挙げることが多いように思う。
わたしも同感であるが、それだけではないように思っている。
そもそも実力差ってなんだろうか。
少し突き詰めて考えてみたい。
わたしの考えでは、芝コースの場合はスピードの制御力(折り合い、瞬発力)が問われるのに対し、ダートではいわゆる馬力が問われているように思っている。
その証拠に、第36夜「夏に恋した牝馬はボクたちに本当の姿を見せたのか」(201511)でも少し触れたように、牝馬は年間を通じてダートの成績が良くない、という事実がある。
傑出した馬は別として、一般的に牝馬の筋肉量は牡馬よりも少ないことが影響しているものと推察する。
また、馬格のあるものを有利と考えるのも、この延長線上にある。
この馬力は、走る速さと違って調整が効かない。
レースが進行していくにつれて、どんどんと「脱落」していくのである。
一方、芝コースでは、特に長距離でない限り、「脚を余す」という話は脚の使い方によっては勝てたということであり、全馬が全力を尽くしたというわけではないことを示唆している。
だから、芝では全馬が実力を完全に出し切ったわけではないので着差が接近し、ダートでは力を出し切りやすいので着差が広がる傾向にあるのではないかと考えている。
つまり、実力のバラつきもあるだろうが、むしろ芝コースでは全力を出し切りにくいから、というのがわたしの推察なのだ。
ダート競馬は、ともすれば単調という意見を持つ人もいるが、奥が深いように思う。
中央競馬では、どうしても芝コースばかりに視線が注がれるけれど、ダートの特性もよく研究したい。
(SiriusA+B)

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