2016年11月11日金曜日

第127夜 兄弟姉妹でも獲得賞金額にはかなりの差があるということ――1990年生繁殖牝馬の「同窓会」(4)


▼ことばはキツいが「賢兄愚弟」の傾向
1990
年生まれで繁殖に上がった牝馬のデータベースの作成にあたっては、母馬1頭ずつ産駒を調べあげ、それぞれの獲得賞金額を記入する形で進めていった。
実際には、出走できなかったり、サラブレッドとして登録すらされなかったりする馬もいるので、調査するのに予想以上の時間を要することになった。
もっとも、時間をかけて、それこそ1頭ずつ調べ上げるのだから、なんとなくの傾向とか法則のようなものを肌で感じることができたのも確かである。
そうした傾向の中でも、全体として兄や姉が、弟や妹よりも賞金を稼いでいることは、データベースを作成していく中で集計などしなくても感じ取れるほど明らかであった。

平均をとっていくと、最初に生まれた仔から3番目を筆頭に5番目、6番目くらいの仔までは、獲得賞金額が比較的高く、その後の産駒では次第に少なくなっていく。
もちろん平均であって、末っ子がもっと稼いでいたり、後半の産駒の方が良績だったりすることもある。
そりでも、「賢兄愚弟」とは言いたくないが、多産のサラブレッドではこのトレンドははっきりしていた。
(
図表)出産順別平均総賞金(地方競馬の賞金を含む)

仔番号
馬名登録頭数
平均獲得賞金
1
600
13,941,093
2
579
15,839,604
3
544
19,038,294
4
502
12,343,303
5
449
10,035,535
6
394
13,192,772
7
319
8,264,987
8
261
10,581,805
9
209
7,406,947
10
150
6,750,633
11
113
5,869,195
12
75
10,007,893
13
40
6,857,050
14
25
13,503,520
15
16
5,672,500
16
4
8,325,500
17
3
1,753,333
18
1
0
19
0
0



▼血統論者は出産順位なども考慮すべき
実は、欧米の論文でもこの「賢兄愚弟」の傾向が示されている。
その理由ははっきりとわからないが、ひとつ挙げるとすれば、繁殖牝馬の高齢出産の影響はあるだろう。
高齢になるほど受胎率が下がるのは間違いないようだ。
また、産駒の丈夫さといった点でも影響があるようで、馬名登録に至る率は母馬が高齢であるほど低下する。
(
図表)母馬の年齢別「馬名登録率」と「平均獲得賞金」(1990年生まれの繁殖牝馬670)

母馬の年齢
産駒頭数
馬名登録頭数
登録率%
平均獲得賞金
3
0
0
0%
0
4
110
101
92%
6,917,762
5
345
309
90%
15,570,890
6
442
405
92%
11,109,017
7
474
431
91%
15,533,309
8
479
445
93%
18,660,679
9
437
397
91%
15,006,433
10
421
376
89%
12,736,059
11
397
353
89%
14,201,433
12
351
306
87%
8,890,703
13
325
276
85%
10,215,138
14
256
220
86%
9,070,491
15
258
180
70%
9,759,178
16
172
141
82%
7,928,397
17
120
103
86%
9,926,291
18
101
90
89%
7,345,456
19
82
70
85%
8,333,500
20
47
41
87%
7,613,561
21
29
23
79%
3,550,913
22
11
9
82%
6,852,444
23
12
5
42%
1,405,800
24
6
3
50%
0
25
0
0
0%
0
26
1
0
0%
0
27
0
0
0%
0
28
0
0
0%
0

このように、兄弟姉妹でも違いはかなりあるのだ。
血統を重んじる予想者にとっては、兄弟姉妹でこれほど獲得賞金に違いがあることをどう説明するのだろう。
全兄弟であっても、「母馬の出産時年齢」や「出生順位」などの要素は軽視できないと思うがいかがだろうか。
また、母馬の影響の大きさに驚いた人もいるだろう。
父馬に頼った血統理論では不十分で、もっと言えば父馬より母馬の方が重要かもしれないと、データベースに示唆されているのだ。
現在の巷間の血統理論は非科学的だと再三再四お話ししてきた。
付け加えて、母馬の分析や父馬・母馬の血統以外の情報(出生順など)も不足しているのではないか、と指摘しておきたい。
(SiriusA+B)

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