2016年11月19日土曜日

第129夜 競走と繁殖は案外連動しない――1990年生繁殖牝馬の「同窓会」(6)


▼サラブレッド・ドリーム
競走馬時代の成績が良かったからといって、その産駒が必ずしも優秀な成績を収めるわけではないという話である。

これまでも説明してきたとおり、1990年生まれの繁殖牝馬670頭をデータベース化し、現役時代の競走成績が優秀な(獲得賞金で計測する)上位20%を「A」、繁殖牝馬の父を繁殖牝馬の賞金の合計で上位20%を「a」として4つの区分に分類してきた。
繁殖牝馬上位20%というのは670頭のうち135頭だが、その競走馬時代の獲得賞金の全体に占める割合は74%に及ぶ(Aa60%+Ab14%)
残り80%の繁殖牝馬は、数でいえば上位の4倍もいるのだが(670頭中535)、競走馬時代の獲得賞金の合計では26%しかないのである。

しかし、競走成績と繁殖活動は、競走馬時代の成績と繁殖初期の成績によって出産のチャンスが少なくなるという差があるくらいで、繁殖能力と産駒の活躍にはあまり関係がないようだ。
下表のように、馬名をもらった登録産駒頭数は繁殖牝馬1頭あたり平均6頭か7頭である。
繁殖牝馬上位20%A馬は980頭の登録産駒数、下位80%の繁殖牝馬B馬は3,304頭の登録産駒数を世に出した。
その比率は23%77%で、少しばかりA馬の勢力が大きくなったに過ぎない。
さらに、その産駒たちの稼いだ賞金の比率は、35%65%である。
母親は74%26%だったのに対し、A馬系産駒とB馬系産駒の差は大幅に縮小しているのだ。
もちろん、A馬系産駒数23%で全体の35%の賞金を稼いでいるので優秀ではあるが、「思ったほどではない」というのが結論である。
これは見方を変えれば、繁殖牝馬の競走成績に関わらず、良い仔を出すチャンスがあるということである。
これこそ競馬のロマンの源泉であり、生産者もファンもドラマを待っているのだ。

なお、表をみればお分かりいただけると思うが、参考までに、繁殖牝馬の父馬(種牡馬)からみた分析について触れておく。
上位20%の「a馬」と下位80%の「b馬」の繁殖牝馬の比率は49%51%である。
登録産駒数は53%(下表の表記では16+36=52%)47%、その産駒賞金は64%(下表表記では65%)36%となった。
字面だけ追えば、母より父の影響が大きいのではないかと判断されるかもしれないが、そこは下表をよくみてほしい。
要するに「Aa馬」が突出しているのである。
各区分で産駒1頭あたりの平均獲得賞金額を出してみれば分かる。

区分
頭数
繁殖牝馬競走成績賞金計
登録産駒頭数
平均登録産駒数
産駒賞金計
Aa
95
14%
9,160,970,000
60%
705
16%
7.4
14,303,280,000
27%
Ab
40
6%
2,176,492,000
14%
275
6%
6.9
4,329,926,000
8%
Ba
234
35%
1,918,308,000
13%
1,563
36%
6.7
20,231,930,000
38%
Bb
301
45%
2,035,614,000
13%
1,741
41%
5.8
15,041,760,000
28%
合計
670
15,291,384,000
4,284
6.4
53,906,896,000
(A)
135
20%
11,337,462,000
74%
980
23%
7.3
18,633,206,000
35%
(B)
535
80%
3,953,922,000
26%
3,304
77%
6.2
35,273,690,000
65%
A,B=繁殖牝馬670頭の現役競走成績(獲得賞金)が上位20%(3,500万円以上)と下位80%
a,b
=繁殖牝馬の父202頭の上位20%(繁殖牝馬の獲得賞金計が1億円以上)と下位80%
(SiriusA+B)

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