2020年7月26日日曜日

第288夜 馬具と競馬予想


▼馬具
馬具と言えば橋浜保子さん、と即座に連想するくらい詳しいお方がいらっしゃる。
もちろん知り合いではないけれど、競馬最強の法則での連載で初めて知ったことは多かった。
馬具にはさまざまな矯正器具がある。
調教により馬は人の指示に従うようになる、と簡単に考えていたので、自分の浅はかさに呆れるばかりであった。
野生の馬に少年が鞍も着けず颯爽と飛び乗り、しばらくするといいコンビになっている、そんなドラマのような単純なものではないのだよ(誰に言ってるの?)

馬具のうち、遮眼革(ブリンカー)の着用は主催者から事前に公表されている。
専門紙競馬サイエンスではそれ以前から馬柱に載せていたように記憶しているが、その効果を馬券購入者に知らしめた功績は大きいと思う。
競走馬を注意深く見てみると、ブリンカーのほか、ナリタブライアンでよく知られるようになったシャドーロールやチークピーシーズなど外見でも判る馬具でさえ数多くあることに気づく。
メンコもオシャレではないから(オシャレもあるかもしれないが)

この馬具を競馬予想に活かせないだろうか。
そう思うものの、簡単なことではない。
素人が一朝一夕に馬具を見てどのような矯正をしているのか判断できるものではない。
ブリンカーでさえ浅いもの、深いもの、片方だけあるものなど個体別であり、どう整理すればいいのか途方に暮れてしまう。
知識を深めていく間にも競馬は毎週行なわれる。
即戦力の考察はないだろうか。
そこで考えたのが、馬具そのものの研究ではなく、馬具の「量」である。
矯正のための馬具である。
「重装備」ほど難題を抱えていると考えるのである。
矯正するべき点が多いということイコール、コントロールが難しいのではないか。
厩舎や騎手は、ある意味、馬の全力をどこまで引き出せるか、の勝負だと思うのだが、矯正の状況から「引き出しにくい」と考える。

わたしは具体的な統計を用意していないのだが、例えばデビュー時から矯正馬具の多い馬、馬具が増えてきた馬、は勝率・連対率が低いと推定して検証を続けている。
また、初ブリンカーは好例だが、初めて装着して臨む場合は好走する可能性が高いとも思う。
矯正してより速く走ると判断されたものだからだ。
継続しての使用は「それが無いと上手く走れない」ということと推定し、上積み効果に乏しいと考える。
これらを実証できれば競馬予想に実装したいと思うが、実際には情報収集の壁が高い。

この馬具の使用状況は専門紙や主催者によるの公式の発表などなく、専門的に取り扱っているホームページ等に頼らざるを得ない。
テレビ中継で判断できる馬具は多くない(パドックで直接見るべきとする人がいたら他場やコストパフォーマンスについて問いたい)
しかも、土日3場開催では約1,000頭が出走するのだ。
馬具のチェックに130秒掛かるとして毎週500分、8時間20分を費やす必要がある。
そもそも、判断できるだけの知識の習得も長い時間を要する。
馬の世話すらしていないわたしたちが詳しくなるには相当苦労すると思われる。

▼情報収集とオッズの形成
個人的な印象だが、馬具を競馬予想の材料にする人は少ないようだ。
重要かどうかではなく、知識も情報収集も共に難易度が高いからであるとわたしは思っている。
投票者の思考が集約されたのがオッズであるとすれば、馬具というファクターはほとんどオッズに含まれていないのではないだろうか。
重要で多くの者が入手できるファクターがオッズを形成する。
誰もが簡単に入手できないファクターはオッズに反映されにくい。
狙い目はこういうファクターである。
換言すれば情報収集の困難なものほど武器になるということだ。

馬具は狙い目のひとつだ。
ただ、知識を深めれば比例して予想力が向上するというわけではない。
これは血統の知識に似ている。
馬具の知識を深めるのではなく、どれくらい矯正「量」が必要なのか、或いは矯正すれば能力を引き出せるのか、の「厩舎人の視点」で考えると予想に活かせるのではないだろうかということである。
Dハミを着ければ激走するというなら皆Dハミに変える。

そういう視点では馬券には結びつかないだろう。
Dハミでなければ力を引き出せないという条件付きの馬だ、ということなのだ。

もちろん馬具の知識を積み上げていけば、競走距離の適性、騎手の戦術、展開予想に役立ってくる。
もっと広い思考の世界が待っている。
(SiriusA+B)

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