2023年5月28日日曜日

第419夜 極端な馬場では


▼クッション値と含水率
前夜のつづきである。
主催者が発表する含水率とクッション値は、比較的新しい情報である。
わたしは未だ掴みどころが分かっていないが、2021年のデータを用いて数値の概観を述べた、というのが前夜であった。

ではレースのデータと組み合わせてみたいというのが今夜の話である。
この記事のため、いろいろなデータと調合してみたのだが、予想ファクターに資するような傾向は見いだせなかった。
例えば、含水率別に勝ち馬の馬体重との関係を調べてみたが、はっきりとした傾向は分からなかった。
ただ、クッション値との相関はあった。
馬場が硬いほど反発力が上がるためと思われる。

クッション値 勝馬馬体重 勝馬件数 平均馬体重 前後1等級勝馬馬体重 前後1等級勝馬件数 前後1等級平均馬体重
6 0 0
7 7,882 17 464 111,148 239 465
8 103,266 222 465 271,914 583 466
9 160,766 344 467 638,370 1,362 469
10 374,338 796 470 647,180 1,376 470
11 112,076 236 475 488,890 1,037 471
12 2,476 5 495 116,490 245 475
13 1,938 4 485

調べた中では、速度と含水率は相関性の高いデータが得られそうだった。
サンプルが少ない調査だったのでもっと対象を拡大すればいいのだが、まあまあ綺麗な相関が期待できそうである。
ただ、これは、「良」「稍重」「重」「不良」をやや詳しくしただけで、新たな知見が得られるものではない。

芝含水率 勝馬件数 平均速度 前後1等級平均速度 前後2等級平均速度
7 7 61.45
8 19 61.07 61.02
9 134 61.00 60.93 60.75
10 149 60.85 60.73 60.59
11 162 60.39 60.46 60.59
12 188 60.21 60.45 60.51
13 315 60.63 60.46 60.45
14 251 60.45 60.52 60.43
15 226 60.43 60.40 60.48
16 101 60.20 60.37 60.40
17 57 60.42 60.29 60.38
18 5 60.56 60.46 60.24
19 6 60.67 59.75
20 4 57.38
ダ含水率 勝馬件数 平均速度 前後1等級平均速度 前後2等級平均速度
2 104 57.88
3 171 58.26 58.22
4 203 58.37 58.38 58.29
5 193 58.51 58.38 58.34
6 161 58.25 58.36 58.38
7 141 58.28 58.32 58.38
8 130 58.45 58.37 58.38
9 129 58.38 58.49 58.45
10 63 58.78 58.54 58.56
11 63 58.64 58.74 58.65
12 89 58.79 58.79 58.82
13 49 58.99 58.90 58.91
14 53 59.01 59.13 59.03
15 29 59.61 59.23 59.21
16 36 59.24 59.41 59.25
17 36 59.42 59.28 59.30
18 30 59.16 59.22
19 34 59.07

▼速度とレースの荒れ具合
クッション値と含水率は、朝イチ限りだし、レースごとに測定されるデータではないから、走破タイムを予想するということにすると、かなり仮定を置かざるを得なくなる。
前項では走破タイム(速度)との相関について述べたが、走破タイムを予想する道具として使うというより、「馬場が原因で着順に影響するかどうか」という視点で考えたいとわたしは思っている。
下表は、勝ち馬の速度(小数点以下を切り上げ)と支持率(オッズに変換したものを併載)の関係を示したものである。
2021
年のデータのみであるが、速い時計の決着ほど支持率が高くなる傾向があった。
もしかすると、遅すぎる時計でも支持率が高くなる可能性もある。
クラスの要素を考慮していないので精査しなければならないが、相関関係はありそうだ。
要するに、「極端な馬場は注意」ということなのだろう。
その点で、速度の変化を予測するためにクッション値や含水率は参考になるのではないかと思っている。
何パーセントくらいの馬場を「極端」というかは予想する人の主観に拠るが、下表を見る限り、全レースの1割とか多く見積もって2割くらいまでがイレギュラーな馬場とわたしは考えている。
では、イレギュラーな馬場になったら、予想を大きく変えるのかというと、どうだろう。
有力馬はことごとく凡走し、人気薄の馬が上位を独占するというレースは、どんな馬場でも稀なことである。
わたしには、「手を広げるくらい」、例えばヒモをいつもより多く追加するくらいが適当のように思える。
(SiriusA+B)

km/h 芝ダ 件数 勝馬平均支持率 オッズ換算
57以下 60 0.201514 4.0
58 139 0.227536 3.5
59 323 0.202347 4.0
60 378 0.216306 3.7
61 294 0.216529 3.7
62 250 0.177996 4.5
63 134 0.166709 4.8
64以上 46 0.142297 5.6
55以下 107 0.208979 3.8
56 235 0.221308 3.6
57 361 0.199261 4.0
58 327 0.203665 3.9
59 323 0.191606 4.2
60 241 0.182507 4.4
61以上 120 0.163346 4.9

2023年5月21日日曜日

第418夜 含水率とクッション値

 

▼比較的新しい情報
中央競馬の含水率は2018年、クッション値は2020年の、いずれも期中から公表されるようになった比較的新しい馬場指標である。
「いずれ研究したい」と、このブログのどこかで書いた気がするが、正直申し上げて競馬予想にどう取り込むかは試行錯誤の段階から抜け出していない。
活用の仕方を未だ掴めないのだ。
ただ、傾向は分かっている。

詳細は主催者であるJRAが丁寧に説明してくれているのでそれを参照いただきたいが、簡潔に言うと馬場の水分が多いか少ないかを具体的な数値で説明したものである。
馬場状態は、伝統的に「良」「稍重」「重」「不良」の4段階で表わされてきた。
わたしたちの知らない時代まで遡れば、「佳良」とか「泥寧」とかあったそうで、今より細分化されていたようだ。
4
段階では大雑把過ぎるという声に応えてくれたのか、含水率という新たな情報が公表されたのである。
含水率は、数値が大きいほど水分が多いということを示す。
追加されたクッション値は、芝コースの硬さを表す指標で、数値が高いほど馬場が硬いということを示している。
傾向として、含水率が高くなるほどクッション値は低下する。

数値で示されるので、誰もが(いや、誰でもというわけではないと思うが)飛びつきたくなる情報なのだ。
ところが、わたしの調査不足でなければ、ネット上を調べていくと意外に取り扱いが少ない印象である。
取り扱いが難しいと思われることや、競馬データには無駄である、という考えもあるようだ。
「無駄派」は、競馬開催前日・当日(たいていは金・土・日)に発表されるデータが朝1回の測定だけだから、刻々と変化する馬場に対応していないということを理由として挙げる。
確かにそうだけれど、要る?
と、わたしは秘かに思っている。
レース直前になって、「芝の馬場状態が、稍重から良に変わりました。含水率は10.1から7.8になりました」とアナウンスがあったとして、含水率はどれほど貴方の予想に影響するだろう。
一方、取り扱いが難しいというのは、複数のデータが公表されることと無関係ではないと思われる。
クッション値、芝コースゴール前、同第4コーナー、ダートコースゴール前、同第4コーナーと5つのデータが示されるのだ。
ちなみに、芝・ダートは2データを平均するか、どちらかを使えばよいと思われる。
ゴール前と第4コーナーでは、確かに数値は違うけれども、傾向は同じであるからだ。
5
つの数値は、小数点以下第1位単位で発表されているから、そのまま受け入れてかえって混乱する人もいるかもしれない。
これも、小数点以下を切り上げるなりして取り扱いやすいようにすればよいと思われる。

2021年のクッション値は平均で9.2
競馬予想者はあれこれと言うけれど、実際のところ、取り扱いで面倒なのはデータの収集と整理なのかもしれない。
データを取り込むというほどの量ではないし、かといって、手入力も毎週毎週手間である。
わたしも面倒臭いなあと渋々と、しかしコツコツと収集してきた。
今回のブログ記事では、2021年の、わたしが夜な夜な手入力した()データを用いる。
多少の誤りはご容赦いただきたい。
これまで公表されているデータをすべて集計するのもよいが、初年度が期中から発表されていることや、2021年は京都競馬場改修工事のため9場で開催され、阪神・中京・小倉のデータが少しでも多く収集できた年だから、1年間に限定した。
先ず、全体像を捉えておきたい。
5
つの指標の平均と分布は図表418-1のとおりである。
例えば、クッション値は9.1以上10.0以下を「10」としたとき、延べ214()あったということを示す。

(
図表418-1)2021年開催前日・当日の主催者公表データの出現回数と年間平均値(出現回数は小数点以下を切り上げ。芝平均とダ平均は、各2指標を平均し、小数点以下を切り上げたもの)

数値 クッション値 芝ゴール前 芝4コーナー 芝平均 ダゴール前 ダ4コーナー ダ平均
1 1
2 31 27 24
3 43 38 40
4 41 47 48
5 46 41 47
6 1 40 46 42
7 4 1 1 1 43 34 37
8 49 10 5 5 33 35 32
9 90 39 23 28 30 32 36
10 214 36 46 45 18 21 18
11 71 54 63 48 27 18 23
12 1 56 45 50 20 25 22
13 2 63 60 77 12 13 10
14 69 79 67 4 6 10
15 54 60 60 13 10 7
16 25 22 33 5 10 10
17 16 19 12 7 7 8
18 7 5 3 10 11 9
19 1 4 2 7 10 9
20 1 1 1
平均 9.2 12.3 12.5 - 7.2 7.5 -

ご覧のとおりで、これに主催者の解説と照らし合わせてもらえればと思う。
クッション値は主催者が強く意識しているものと思われ、幅の狭い釣鐘型の分布になっている。
芝コースは、いずれの集計でも、データが少ないため多少いびつだが、釣鐘型の分布になる。
ダートは特徴的で、数値4(含水率3.1-4.0%)の回数が最も多く、数値が大きくなるにつれ回数は逓減していく。
含水率の分布が幅広いのである。

▼北海道の芝
視点を変えて、季節や開催場の影響に触れておきたい。
図表418-2は、月別と場別にまとめた数字である。
クッション値は、年間を通じて安定した数字なのだが、夏場に低下する(馬場が柔らかくなる)
原因として、競馬場別のクッション値にあるように、北海道開催の影響とみられる。
札幌と函館は洋芝、他場は野芝とエクイターフというJRAなどが開発した洋芝である。
この違いがクッション値に表われているのだ。
芝やダートの月別の数値は、従来言われているもの、例えば冬場のダートは乾燥しているなど、を裏付けるものであった。

こうした数値をどう活かすか、というのは、冒頭に述べた通りで目下研究中である。
ただひとつ、競馬場による差異は大きいと思っている。
同じ計測方法のようだが、この差は季節要因だけでない気がする。

次の夜には、レースのデータと組み合わせてみることにしたい。
(SiriusA+B)
(
図表418-2)開催月別及び競馬場別数値の平均

開催月 クッション値 芝ゴール前 芝4コーナー ダゴール前 ダ4コーナー
1月 9.8 11.8 11.4 5.8 6.3
2月 9.7 10.9 11.0 7.1 7.0
3月 9.6 11.8 12.0 8.7 9.3
4月 9.7 11.4 12.4 6.9 7.1
5月 9.2 13.8 13.8 8.6 8.8
6月 8.9 13.5 13.2 6.9 7.3
7月 8.3 12.3 13.2 6.7 6.9
8月 8.5 12.2 12.6 6.7 7.1
9月 9.4 12.9 13.1 8.4 8.8
10月 9.2 12.9 12.9 6.4 6.7
11月 9.1 12.3 12.6 5.7 6.1
12月 9.5 11.8 11.7 9.2 9.2
競馬場 クッション値 芝ゴール前 芝4コーナー ダゴール前 ダ4コーナー
札幌 7.7 12.9 13.6 4.4 4.6
函館 7.4 13.9 14.2 3.9 4.4
福島 8.4 12.6 14.2 8.2 8.6
新潟 9.3 12.8 14.0 7.6 8.0
東京 9.3 14.8 14.0 6.2 6.3
中山 9.8 11.7 11.9 6.6 6.7
中京 9.6 14.1 13.2 8.4 8.7
阪神 9.5 9.9 10.3 6.7 7.0
小倉 9.1 9.4 10.0 10.9 11.3

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