2023年12月17日日曜日

第446夜 タイムに関する主催者コメント


どの馬が強いのかを決めるのが競馬
スポーツ紙などのメディアが、JRAの関西定例記者会見の質疑を記事にしている。
2023
1211日に大阪市で行なわれた会見である。
タイムに関する2点の主催者コメントは、走破タイムをベースに予想する人には心に留めておきたい内容であった。
わたしなりに要約すると以下のようになる。

・主要国のほとんどは100分の1秒単位、JRAでは10分の1秒単位である。(100分の1秒単位にする)必要性は感じていない。そもそも100分の1秒を競う競技ではなく、どの馬が強いのかを決めるのが競馬である。

・函館競馬場での、トレセン同様の自動計測装置導入は検討に至っていない。


主催者は、どの馬が速いか、ではなく、どの馬が強いか、決めるのが競馬だと記者の質問に答える中でコメントしている。
速いと強いは、似ているようで、違う。
走破タイムは二の次である。
レース成績は、走破タイムの速かった順に並べているのではなく、ゴールした順に並べるとタイム順になっている、と考えたほうがいい。
わたしたちが走破タイムを用いて予想するのは、強さを端的に表わせないから、代替として速さを使っているに過ぎない。
これが主客転倒になり、タイム分析に活路を見出そうとすると迷宮に入り込む。
「だったら何故10分の1秒とか100分の1秒単位の精緻なタイムを発表しているのか」
そんなの決まってる。
わたしたちを惑わすためである(いや、判定に信用を持たせるためだが笑)

▼走破タイムが関係あるか、ないか
では、走破タイムは不要なのかというと、そうでもない。
やはり、速い決着、平凡なタイムでの決着など、速い遅いというのは、レベルを考察する資料になる。
遅いタイムはどの馬でも出せるが、速いタイムはどの馬でも出せるものではない。
図表446-1は、2011-2021年の中央平地競走のうち、中山ダート1200m1着になった馬の次走(中央平地競走)成績をまとめたものである。
1
着になったときの走破タイムで9グループに分けた。
次走成績のある1,287頭を、グループの馬の数がだいたい均等に近づくようにしたもので、1グループあたり130頭から160頭前後になっている。
クラスも季節も天候や馬場状態も一切加味していないので、凡その傾向を知る程度の精度であることを予めお断りしておく。
サンプルが少ないし、その他のコースもあるので興味ある方はご自身で調べていただきたい。
さて、これによると、最速グループ(勝ち時計685すなわち185から707)130頭では、勝率12%、複勝率32%であった。
勝ち時計が遅くなるほど、なんとなく勝率や複勝率が低下しているような感じである。
勝ち時計が最も遅いグループの126頭では、次走勝率が2%、複勝率も8%しかない。
同条件に出走した馬もいるが、勝ち時計が遅いと昇級して苦戦しているのである。

やはり、走破タイムは関係あるよね、はい、おしまい。
と考えていたのだが、戯れに、2着になった馬も同じグループ分けにして次走の成績を調べたところ、「走破タイムは関係ある」という結論を保留にせざるを得なくなった。
図表446-2は、2着馬のバージョンである。
結果は、勝率も複勝率も走破タイムに関係なく、だいたい同じであった。
少々凸凹していて、わたしの早合点かもしれないが、2着馬については、走破タイムと次走成績に大きな相関はなさそうなのである。
まるで「腐っても2着は2着」とでも言いたくなるような集計結果であった。
たまたまなのか、わたしが凸凹を軽視しているのか、他のコースでも同様なのか、3着以下ではどうなのか、謎である。
というか、謎ではなく、単に不精(ぶしょう)して調べていないだけか。
(SiriusA+B)

(
図表446-1)中山ダート1200m競走勝ち馬の走破タイム別次走成績(2011-2021年、次走が2022年以降の馬は含まれていない)

グループ 今走走破タイム(秒) 次走1着頭数 次走2着頭数 次走3着頭数 次走出走頭数 勝率 複勝率
1 68.5-70.7 15 14 13 130 12% 32%
2 70.8-71.2 10 11 12 146 7% 23%
3 71.3-71.5 8 7 6 137 6% 15%
4 71.6-71.9 7 13 8 164 4% 17%
5 72.0-72.2 13 7 17 152 9% 24%
6 72.3-72.6 10 10 10 151 7% 20%
7 72.7-73.0 6 8 12 148 4% 18%
8 73.1-73.4 3 2 5 133 2% 8%
9 73.5-75.4 2 3 5 126 2% 8%

(図表446-2) 中山ダート1200m競走2着馬の走破タイム別次走成績

グループ 今走走破タイム(秒) 次走1着頭数 次走2着頭数 次走3着頭数 次走出走頭数 勝率 複勝率
1 68.5-70.7 24 15 12 108 22% 47%
2 70.8-71.2 26 21 13 117 22% 51%
3 71.3-71.5 20 17 8 103 19% 44%
4 71.6-71.9 43 27 19 170 25% 52%
5 72.0-72.2 24 20 20 132 18% 48%
6 72.3-72.6 46 38 14 176 26% 56%
7 72.7-73.0 37 23 15 146 25% 51%
8 73.1-73.4 33 30 21 142 23% 59%
9 73.5-75.4 44 22 19 207 21% 41%

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