▼どの馬が強いのかを決めるのが競馬
スポーツ紙などのメディアが、JRAの関西定例記者会見の質疑を記事にしている。
2023年12月11日に大阪市で行なわれた会見である。
タイムに関する2点の主催者コメントは、走破タイムをベースに予想する人には心に留めておきたい内容であった。
わたしなりに要約すると以下のようになる。
・主要国のほとんどは100分の1秒単位、JRAでは10分の1秒単位である。(100分の1秒単位にする)必要性は感じていない。そもそも100分の1秒を競う競技ではなく、どの馬が強いのかを決めるのが競馬である。
・函館競馬場での、トレセン同様の自動計測装置導入は検討に至っていない。
主催者は、どの馬が速いか、ではなく、どの馬が強いか、決めるのが競馬だと記者の質問に答える中でコメントしている。
速いと強いは、似ているようで、違う。
走破タイムは二の次である。
レース成績は、走破タイムの速かった順に並べているのではなく、ゴールした順に並べるとタイム順になっている、と考えたほうがいい。
わたしたちが走破タイムを用いて予想するのは、強さを端的に表わせないから、代替として速さを使っているに過ぎない。
これが主客転倒になり、タイム分析に活路を見出そうとすると迷宮に入り込む。
「だったら何故10分の1秒とか100分の1秒単位の精緻なタイムを発表しているのか」
そんなの決まってる。
わたしたちを惑わすためである(いや、判定に信用を持たせるためだが笑)。
▼走破タイムが関係あるか、ないか
では、走破タイムは不要なのかというと、そうでもない。
やはり、速い決着、平凡なタイムでの決着など、速い遅いというのは、レベルを考察する資料になる。
遅いタイムはどの馬でも出せるが、速いタイムはどの馬でも出せるものではない。
図表446-1は、2011-2021年の中央平地競走のうち、中山ダート1200mで1着になった馬の次走(中央平地競走)成績をまとめたものである。
1着になったときの走破タイムで9グループに分けた。
次走成績のある1,287頭を、グループの馬の数がだいたい均等に近づくようにしたもので、1グループあたり130頭から160頭前後になっている。
クラスも季節も天候や馬場状態も一切加味していないので、凡その傾向を知る程度の精度であることを予めお断りしておく。
サンプルが少ないし、その他のコースもあるので興味ある方はご自身で調べていただきたい。
さて、これによると、最速グループ(勝ち時計68秒5すなわち1分8秒5から70秒7)の130頭では、勝率12%、複勝率32%であった。
勝ち時計が遅くなるほど、なんとなく勝率や複勝率が低下しているような感じである。
勝ち時計が最も遅いグループの126頭では、次走勝率が2%、複勝率も8%しかない。
同条件に出走した馬もいるが、勝ち時計が遅いと昇級して苦戦しているのである。
やはり、走破タイムは関係あるよね、はい、おしまい。
と考えていたのだが、戯れに、2着になった馬も同じグループ分けにして次走の成績を調べたところ、「走破タイムは関係ある」という結論を保留にせざるを得なくなった。
図表446-2は、2着馬のバージョンである。
結果は、勝率も複勝率も走破タイムに関係なく、だいたい同じであった。
少々凸凹していて、わたしの早合点かもしれないが、2着馬については、走破タイムと次走成績に大きな相関はなさそうなのである。
まるで「腐っても2着は2着」とでも言いたくなるような集計結果であった。
たまたまなのか、わたしが凸凹を軽視しているのか、他のコースでも同様なのか、3着以下ではどうなのか、謎である。
というか、謎ではなく、単に不精(ぶしょう)して調べていないだけか。
(SiriusA+B)
(図表446-1)中山ダート1200m競走勝ち馬の走破タイム別次走成績(2011-2021年、次走が2022年以降の馬は含まれていない)
グループ | 今走走破タイム(秒) | 次走1着頭数 | 次走2着頭数 | 次走3着頭数 | 次走出走頭数 | 勝率 | 複勝率 |
1 | 68.5-70.7 | 15 | 14 | 13 | 130 | 12% | 32% |
2 | 70.8-71.2 | 10 | 11 | 12 | 146 | 7% | 23% |
3 | 71.3-71.5 | 8 | 7 | 6 | 137 | 6% | 15% |
4 | 71.6-71.9 | 7 | 13 | 8 | 164 | 4% | 17% |
5 | 72.0-72.2 | 13 | 7 | 17 | 152 | 9% | 24% |
6 | 72.3-72.6 | 10 | 10 | 10 | 151 | 7% | 20% |
7 | 72.7-73.0 | 6 | 8 | 12 | 148 | 4% | 18% |
8 | 73.1-73.4 | 3 | 2 | 5 | 133 | 2% | 8% |
9 | 73.5-75.4 | 2 | 3 | 5 | 126 | 2% | 8% |
(図表446-2) 中山ダート1200m競走2着馬の走破タイム別次走成績
グループ | 今走走破タイム(秒) | 次走1着頭数 | 次走2着頭数 | 次走3着頭数 | 次走出走頭数 | 勝率 | 複勝率 |
1 | 68.5-70.7 | 24 | 15 | 12 | 108 | 22% | 47% |
2 | 70.8-71.2 | 26 | 21 | 13 | 117 | 22% | 51% |
3 | 71.3-71.5 | 20 | 17 | 8 | 103 | 19% | 44% |
4 | 71.6-71.9 | 43 | 27 | 19 | 170 | 25% | 52% |
5 | 72.0-72.2 | 24 | 20 | 20 | 132 | 18% | 48% |
6 | 72.3-72.6 | 46 | 38 | 14 | 176 | 26% | 56% |
7 | 72.7-73.0 | 37 | 23 | 15 | 146 | 25% | 51% |
8 | 73.1-73.4 | 33 | 30 | 21 | 142 | 23% | 59% |
9 | 73.5-75.4 | 44 | 22 | 19 | 207 | 21% | 41% |