▼降級制度の影響
2022年、2023年の実績については皆さまでお調べいただくことにして、2011-2021年のデータで馬の回転を集計したのである。
近年、馬の回転は速くなっている。
ここで言う馬の回転とは、旋回癖のことではない。
馬の入れ替わりという意味である。
図表452-1にまとめたのだが、中央競馬平地競走に1度でも出走した馬は、4,600から4,700頭台である。
データが2021年の競走までなので2018年産駒や2019年産駒は参考データに過ぎないが、表にはない最新情報まで眺めると、実頭数や延べ出走頭数は踊り場か、やや減少の傾向さえ見える。
勝利度数分布では、未勝利馬が増える傾向にあって、出走する実頭数の増加と連動していることが読み取れる。
レースの数は限られているので、競馬番組の編成で調整されたとしても影響は限定的で、実頭数が増えれば未勝利馬が増えることになる。
気になるところは、2勝馬、3勝馬の増加と4勝以上馬の減少である。
2019年夏の降級制度の見直しにより、古参の古馬がかなり淘汰されたようだ。
早期引退を促す、という目的は達せられていると思われる。
逆に、4歳以上で勝ち星を積み上げることが難しくなり、4勝以上馬が少なくなっているのだろう。
図表452-2には、出走回数の概算を記した。
出走回数を実頭数で割った数字で、これ自体は何も表わしていない数字だが、傾向(トレンド)を知るには役立つと思う。
この数字が年々減ってきていることが分かる。
1頭が平均10回程度出走していたのが、2017年には7.7回にまで下がった。
併せて図表452-3を見ていただきたい。
同歳戦と古馬戦に分解したものである。
ご覧のとおり、同歳戦の平均出走回数は少し減少しているが、古馬戦の減少は著しい。
減っているのは古馬戦なのだ。
降級制度変更の影響は大きかったのだと改めて思う次第である。
出走回数が増えると情報が増えて予想しやすくなるのだが、その点では予想者にとって難しくなったと言える。
半面、降級がほぼなくなって、予想が簡単になった。
予想者により、どちらの影響が大きいかは分かれる。
今夜の分析はこれ以上書かないけれど、さらに深堀すると興味深い傾向も知ることができよう。
▼競馬のルール
競馬は毎週のようにあって、1日12レースで多くて3場、いつもと同じようにレースが用意される。
見通しがちなのは、ルール変更や競馬参加者のトレンドの変化である。
古くは降着制度に始まり、降級制度や負担重量の変更など、ルール変更は大小いろいろと行なわれている。
種牡馬や母馬が入れ替わり、調教や育成技術が進化し、とプレーヤーも変化している。
各レースの予想に熱中するあまり、競馬が変わっていくことに対応しないと予想法はすぐさま陳腐化する。
スポーツでは、例えばマラソンは42.195kmこそ変わらないが、平坦なコースが増え、ペースメーカーが登場し、シューズも進化してタイムがどんどん速くなっている。
以前は駆け引きが醍醐味のひとつであったが、今は淡々と速度を落とさず走るスタイルが主流になってきた。
強い者が勝ちやすい仕組みになったのではないだろうか(詳しくは知らないけれど)。
こうした変化に対応できることが勝利につながる。
競馬も同じである。
レースの予想ばかりが予想ではなく、競馬を知って戦術を立てる。
これは予想者だけではなく、騎手も調教師も生産者も同じである。
(SiriusA+B)
(図表452-1)出生年ごとの勝利度数分布(2011-2021年中央競馬平地競走)
産駒 | 未勝利 | 1勝 | 2勝 | 3勝 | 4勝以上 | 出走実頭数 | 勝上率 |
2009年生 | 3,191 | 625 | 313 | 246 | 313 | 4,688 | 0.319 |
2010年生 | 2,971 | 724 | 288 | 225 | 260 | 4,468 | 0.335 |
2011年生 | 3,023 | 668 | 301 | 257 | 272 | 4,521 | 0.331 |
2012年生 | 3,035 | 674 | 274 | 245 | 276 | 4,504 | 0.326 |
2013年生 | 3,105 | 695 | 299 | 223 | 274 | 4,596 | 0.324 |
2014年生 | 3,172 | 662 | 280 | 251 | 308 | 4,673 | 0.321 |
2015年生 | 3,146 | 693 | 417 | 213 | 194 | 4,663 | 0.325 |
2016年生 | 3,215 | 643 | 447 | 256 | 180 | 4,741 | 0.322 |
2017年生 | 3,233 | 711 | 446 | 232 | 132 | 4,754 | 0.320 |
2018年生 | 3,268 | 927 | 386 | 132 | 28 | 4,741 | 0.311 |
2019年生 | 2,701 | 539 | 49 | 4 | 0 | 3,293 | 0.180 |
(図表452-2)出生年ごとの出走回数の指標
産駒 | 出走実頭数 | 勝利回数 | 出走回数 | 勝率 | 出走回数/実頭数 |
2009年生 | 4,688 | 3,478 | 49,164 | 0.071 | 10.5 |
2010年生 | 4,468 | 3,205 | 47,481 | 0.068 | 10.6 |
2011年生 | 4,521 | 3,345 | 49,007 | 0.068 | 10.8 |
2012年生 | 4,504 | 3,313 | 47,874 | 0.069 | 10.6 |
2013年生 | 4,596 | 3,262 | 47,197 | 0.069 | 10.3 |
2014年生 | 4,673 | 3,427 | 47,433 | 0.072 | 10.2 |
2015年生 | 4,663 | 3,062 | 43,693 | 0.07 | 9.4 |
2016年生 | 4,741 | 3,123 | 41,327 | 0.076 | 8.7 |
2017年生 | 4,754 | 2,871 | 36,766 | 0.078 | 7.7 |
2018年生 | 4,741 | 2,211 | 28,423 | 0.078 | 6 |
2019年生 | 3,293 | 649 | 8,378 | 0.077 | 2.5 |
(図表452-2)出生年ごとの出走回数の指標(同歳戦・古馬戦に分けたもの)
産駒 | 出走実頭数 | 同歳戦勝利回数 | 同歳戦出走回数 | 同歳戦勝率 | 同歳戦出走回数/実頭数 | 古馬戦勝利回数 | 古馬戦出走回数 | 古馬戦勝率 | 古馬戦出走回数/実頭数 |
2009年生 | 4,688 | 1,662 | 24,432 | 0.068 | 5.2 | 1,816 | 24,732 | 0.073 | 5.3 |
2010年生 | 4,468 | 1,676 | 24,209 | 0.069 | 5.4 | 1,529 | 23,272 | 0.066 | 5.2 |
2011年生 | 4,521 | 1,680 | 24,758 | 0.068 | 5.5 | 1,665 | 24,249 | 0.069 | 5.4 |
2012年生 | 4,504 | 1,676 | 24,721 | 0.068 | 5.5 | 1,637 | 23,153 | 0.071 | 5.1 |
2013年生 | 4,596 | 1,682 | 24,610 | 0.068 | 5.4 | 1,580 | 22,587 | 0.070 | 4.9 |
2014年生 | 4,673 | 1,681 | 24,596 | 0.068 | 5.3 | 1,746 | 22,837 | 0.076 | 4.9 |
2015年生 | 4,663 | 1,694 | 24,149 | 0.070 | 5.2 | 1,368 | 19,544 | 0.070 | 4.2 |
2016年生 | 4,741 | 1,688 | 23,481 | 0.072 | 5.0 | 1,435 | 17,846 | 0.080 | 3.8 |
2017年生 | 4,754 | 1,712 | 24,098 | 0.071 | 5.1 | 1,159 | 12,668 | 0.091 | 2.7 |
2018年生 | 4,741 | 1,691 | 23,911 | 0.071 | 5.0 | 520 | 4,512 | 0.115 | 1.0 |
2019年生 | 3,293 | 649 | 8,378 | 0.077 | 2.5 | 0 | 0 | - | 0 |