2024年9月29日日曜日

第486夜 わたしの考える「ほんとうの投資競馬」


▼“投資”なのに?
マイブームは「投資競馬」である。
サイトをあちこち行って、読み漁っている。
とにかく凄いの、書いてることが。
謎理論や怪しげな勧誘に高確率で行き当たる。
ニヤニヤしながら読むけれど、得てして、こういうものにこそ競馬の本質が描かれていたりするから面白い。

情報化時代より前には「裏情報」と言えば吸い寄せられる人が少なくなかった。
情報が不足しているから当たらない、有力な情報が有れば勝てる、と考える人が多かったのだろう。
情報化時代になり、裏情報系の勧誘は鳴りをひそめたが、今度は、統計や機械学習、今ならAIとか生成AIを駆使して云々みたいな「技術系」?の語句が流行っている。
結果だけ提供することをいいことに、実際にはそのようなツールなど使っていないと思われるものが、わたしの印象では物凄く多い。
幸運にもキチンと予想しているものであったら、計算間違いや勘違いは減るので、貴方がグダグダに酔った勢いで買うよりは良いけれど、平凡な予想法をコンピュータで「正確に計算」しても勝てない。
飛びつかないように願いたい。

投資競馬ということばをこれらと同列に扱うのは失礼かもしれないが、「投資」ということばが持つ「論理的なでプロっぽい」、「勝てそう」な印象を利用した話は多いと思う。
本来、投資競馬とは、簡単に言えば、「ギャンブルではなく投資のように、中長期的に安定して儲けることを目指す姿勢、戦術」と言っていい。
あれ、このブログと同じ?
そうかもしれないが、競馬はギャンブルであり投資ではないというスタンスだけは根本的に違う。

ところが、困ったことに、投資競馬を標榜するにも関わらず、およそ、投資では考えられない指南をするものが目につく。
投資と投機の区分は曖昧なところもあるが、明らかに混同している論調も散見される。
書き手が、本格的に投資をした経験はないと、直ぐに分かる。
「短期的に一喜一憂してはならないって心得しか投資らしくないじゃん」などと思いながら、わたしは読み進めている。

投資の鉄則には幾つかバリエーションがあるが、「長期、分散、積立」あたりが代表的だろうか。
長期とは、目先の市場価格の変動に踊らず短期的売買をしない姿勢とわたしは解釈する。
2024
85日、日本の株式市場における過去最大の急落と、翌6日の過去最大の急騰(日経平均株価)では、慌てた人が痛い目をみたかもしれない。
ごく短期的な動きに合わせて右往左往しているようでは投資にならない(ここで利鞘を稼ぐのが投機である)
分散とは、ひとつに集中せず、できれば相関性の低い投資先(商品)に広く投資する姿勢とわたしは解釈する(大儲けできそうなひとつに集中するなら、それは賭けすなわちギャンブルである)
積立とは、毎月など一定間隔で(そして定額で)投資商品を購入していく姿勢であるとわたしは解釈する。
これは時間分散と言い換えることもできる。
株式が分かりやすいが、日経平均株価が高くても低くても、決まった日に決まった金額でインデックスファンドを購入するようなイメージだ。
このほか鉄則には「低コスト」などバリエーションもあるが、ここでは省略する。
「余計なことをしない」というのもある。
これは、機関投資家の経験がある人なら、吹き出しながら、過去の経験や失敗談を思い出すだろう。

短期的視点で動くな、と要約すれば分かりやすいか。

で、投資競馬である。
えっと、レース毎に一喜一憂しない、くらいしか共通点がなくない? ってのが多いようにわたしは思う。
わたしの考える投資競馬は、
・長期をレースのたびに一喜一憂しない姿勢と解すれば、月単位や年単位で帳尻を合わせる姿勢で馬券を買う。これはなかなか分かりにくいようだが、「8月は250レースで馬券を800点買い、合計で880(110%)の回収を目指す」みたいにするイメージだ。
・分散は、1点買いではなく、券種も買い目も幅広く使う。機会は多いほどよく、できるだけ多くのレースに参加する。
・積立をギャンブルで比定するのは難しいが、資金配分にウェイトをかけない、均一にベットする。1点百円なら、勝っても負けても、次も百円である。
このように考えている。
トリガミを避けるとか、負けたら倍額をベットするとか、レースを絞るとかいった行動は、投資に近づけて考えると不合理、下手をすれば「余計なこと」に該当しよう。

▼わたしの考える投資競馬
投資競馬を謳うなら、投資家像を明確にしておくと良いかもしれない。
工場を建てて生産するような直接投資はイメージ外だと思う。
機関投資家が、間接投資や証券投資でファンド商品を買うようなものを想像している。
「投資競馬」はこの証券投資、とりわけ株式投資をイメージしているのではないだろうか。
巨額の投資では、幾つもの会社を調べて株式を買うようなことはできなくなってくる。
運用してくれるファンド商品を少しずつ買う投資スタイルが多いと思う。
一般向けオープン投信のほか、投資家が指定する運用手法で独自のファンドを作ることもある。
長期運用では、優れていると思われる運用手法のファンドをたくさん選んで資金を分散する。
リスク(成績の振れ幅)を分散によって低減するのである。
投資の実態はこのようなものなので、これを「投資競馬」で似せると、馬券上手な、手法もあまり被らない予想家にベットするのが近いかもしれない。
予想家をファンドの運用マネージャーと考えるのだ。
貴方は投資家、或いはファンドオブファンズのゲートキーパーに例えられる。
これはと思う、できれば手法もさまざまな予想家100人に集まってもらい(もちろん脳内で)、各レースの本命に指名された分を買う(単複をイメージして述べるが、もちろん他の券種でもよい)
例えば、あるレースで63人の本命が馬A21人が馬B……であれば、馬A6,300円、馬B2,100円……などと賭けていく。
1
点百円、100人で1万円である。
これをすべてのレースでやっていく。
18
頭フルゲートでも全馬買うことになるかもしれないが、安定した成績が得られるだろう。
ひとりの優れた予想家にベットするよりもリターンは小さくなるが、負けも少ない。
慣れてくれば、また成績が蓄積されてくれば、予想家に軽重を付けて買うこともできるようになる。
わたしの考える投資競馬とは、このようなものだ。
それなりの手練れの予想家だけで「マイオッズ」を形成する感じである。
100
人にするかどうかはともかく、分散するほど成績は安定する。
そして、悔しいかもしれないが、ほとんどの人の場合、貴方ひとりの予想より成績が良い。
短時間に多くの予想家の予想を集める手間はたいへんだが、貴方が競馬の専門家になるより、はるかに簡単な手法である。
優れた投資家は、個人の能力や時間配分の限界を知っている。
「自分のほうが上手くできる」などとは思わないし、自身の能力や経験で足りない部分を他者に委ねることを厭わない。

わたしは日頃から思っているのだが、自分で予想せず他人の予想に頼る人は、間違えている。
頼ることを否定しているのではなく、頼り方が問題なのだ。
前述のように100人は無理にしても、20人とか30人とか、それ以上の数の予想を収集して組み合わせ、粛々と買うのが、おそらく収支面で最良である。
できれば予想紙や早めに予想を公開する人を選びたい(馬に近い、他人の予想の影響が少ない)
収集に手を抜かないで戦えば、わたしも手強い。

ただねえ、と思う。
試してみないと分からないが、回収率はかなり改善するだろう。
それでも黒字には少しばかり手が届かないように思う。
予想家の的中率や回収率がそれなりに高くないと、やはり勝つのは難しいのだ。
巷間の予想家でも、黒字収支を安定的に叩き出す人は少ない。
投票締め切り直前に予想する人もいて集計時間を取れないソースもある。
投資家が競馬をしないのは、運用できる優れた商品があまりないからかもしれない。
(SiriusA+B)

2024年9月22日日曜日

第485夜 トレンドフォロー戦略は通用するか


▼傾向は続くのか
投資の世界では「トレンドフォロー戦略」というのがあるそうで、風向きをいち早く捉え、その風に乗るものをいう。
上昇相場と見るや、上昇する方向に売買し、下降局面だと判断したら下降する方向で売買する。
まさに、トレンドをフォローする、傾向に付いていく。
わたしたちは未来を予想できないが、だからこそ、同じ傾向が続くと見がちだ。
今日の日経平均が上昇したからといって、明日も上昇するわけではない。
根拠はあるようでないのだが、「いや、下がる」と予想するだけの根拠もまた無いので、結局上昇だと予想してしまう。
この投資戦略は、風を読むところにポイントがあるのだろう。
上昇を察知した途端にそれに合わせた態勢をとる。

競馬と関係ないようだが、予想の仕方で大いに関係ある人もかなりいるのではないかと、わたしは考えている。
オッズの動きを見て、そう感じる人もいるだろう。
前走で人気薄馬が上位に食い込むと、今回のオッズはちょっと良くなる、というあれだ。
わたしたちは、前走の成績を「絶対値」としてみるだけでなく、予想やさらに前の成績と見比べて「相対的にも判断している。
例えば、1番人気に推されて3着に敗れた馬と、ブービー人気で3着に食い込んだ馬の評価を変えているだろう。
1
番人気だった馬のことは「調子を落としているのではないか」と訝しがり、人気薄で差突っ込んできた馬には「上昇気配」などとして期待してしまう。
それでいいのか、という疑問である。
前回好調だったから、今回も好調なのか。
簡単すぎるかもしれないが、ちょっとした作表をしたのでご覧いただきたい。

図表485-1はいくつか条件が入っているので先に説明しておきたい。
2011-2023
年の中央競馬平地競走で、前走着順別の成績をまとめた。
「前々走比」は前々走の着順から前走の着順を評価したものである。
ややこしくならないように、前走または前々走で1着となったレコードは除外した。
前々走がない馬すなわち前走が初戦だった馬も除いた。

例えば、「前走2着↑」とあるのは、前々走が3着以下で、成績が上昇したことを示す。
「前走2着↓」の件数がゼロなのは、前々走で1着となった馬を除いているからである。
ということは「前走3着↓」は前々走が2着だったケースだけということになる。
なお、紙面の都合で10着以下をまとめたが、内部では18着まで着順を求めて分類してある。

「→」(状態維持)は、前々走と前走の着順が同じというもので、サンプルは少ないと思っていた割に結構あった。
また、表の構成は全体と、未勝利戦だけ抽出したもの、未勝利戦以外のものとに分けた表も併載している。
未勝利戦は1着経験馬の存在しないレースなので特異なものが出てくるかもしれないと思ってのことだったが、結果的に数値は違うものの、傾向は変わらなかった。
基本的に全体表をご覧いただければ事足りると思われる。

▼わたしたちを惑わすもの
前走着順を、前々走成績に比べて上昇、維持、下降の3セットで眺めると、どの前走着順でも同じ傾向を示していることが分かる。
前走が成績上昇したケースが今回最も勝率が悪く、次が状態維持、最も良かったのが前回成績が下降したケースであった。
あまりにも明確なので、わたしも驚いた。
複勝率(正確には3着以内率だが)も勝率と同様の傾向を示した。
「え、前走で調子を落とした馬がいちばん成績が良いということ?」
思わず聞き返したくなるが、そのとおりなのである。
わたしは、2着ならはっきり出るだろうと思っていた。
ひょっこり食い込んできた2着馬は、この記事で言えば成績上昇馬だが、思いのほか期待に応えていないのではないかと考えていたからである。
ところが、これがどの着順でも似たような傾向を示すとは予想外だった。
前々走が234着で前走5着馬が、同じ前走5着馬で最も信頼できるとは。

わたしは前走着順がシンプルで、且つ、現時点で最も相関性の高いデータだと考えている。
それでも着順の乱高下は激しく、じゃじゃ馬である。
どうやら、競馬予想において、この単純な形のトレンドフォロー戦略は通用しそうにない(本家本元の投資の世界では別)
競馬では、陣営の「巻き返し」「リベンジ」という要素が入るからかもしれない。
競馬予想の難しさはここにあるのだが、好調→好調と考えたい気持ちを抑えなければならないのではないだろうか。
わたしたちを惑わすものは、わたしたち自身の中にあって、同じ傾向が続くと考えたい気持ちなのである。

人によっては、わたしと違う結論を導き出すことがある。
カラクリというほどではないけれど、今回のポイントは、1着データを除いた点、「→」で示した「維持」を独立させた点、着順別に集計した点にある。
まとめ過ぎると、記事本文と真逆になってしまう。
参考として、図表485-2を末尾につけた。

(
図表485-1)前走着順と前々走着順を考慮した今走成績(前走または前々走で1着となったケースを除く
)
全体
前走着順 前々走比 今回1着 今回2着 今回3着 出走件数 勝率 複勝率
2着 5,003 4,194 3,461 27,635 18.1% 45.8%
2着 1,769 1,281 900 6,526 27.1% 60.5%
2着 0 0 0 0 0.0% 0.0%
3着 2,815 2,908 2,759 24,222 11.6% 35.0%
3着 833 752 616 4,799 17.4% 45.9%
3着 1,055 911 676 5,137 20.5% 51.4%
4着 1,810 2,016 2,179 21,960 8.2% 27.3%
4着 509 467 463 3,998 12.7% 36.0%
4着 1,329 1,170 1,013 8,301 16.0% 42.3%
5着 1,141 1,380 1,662 19,766 5.8% 21.2%
5着 279 367 362 3,672 7.6% 27.5%
5着 1,209 1,241 1,249 10,758 11.2% 34.4%
6着 784 978 1,120 17,428 4.5% 16.5%
6着 198 220 277 3,270 6.1% 21.3%
6着 1,137 1,201 1,267 12,390 9.2% 29.1%
7着 542 717 844 15,800 3.4% 13.3%
7着 131 175 173 3,098 4.2% 15.5%
7着 1,034 1,124 1,174 13,841 7.5% 24.1%
8着 349 479 620 13,771 2.5% 10.5%
8着 98 113 140 2,955 3.3% 11.9%
8着 937 1,010 1,077 15,183 6.2% 19.9%
9着 270 348 433 11,488 2.4% 9.1%
9着 71 91 108 2,485 2.9% 10.9%
9着 812 963 1,012 16,072 5.1% 17.3%
10着以下 418 620 710 29,409 1.4% 5.9%
10着以下 171 211 270 10,895 1.6% 6.0%
10着以下 2,991 3,691 4,360 103,762 2.9% 10.6%
未勝利限定
前走着順 前々走比 今回1着 今回2着 今回3着 出走件数 勝率 複勝率
2着 2,345 1,929 1,498 10,873 21.6% 53.1%
2着 940 660 459 3,078 30.5% 66.9%
2着 0 0 0 0 0.0% 0.0%
3着 1,202 1,278 1,200 9,374 12.8% 39.3%
3着 406 369 289 2,145 18.9% 49.6%
3着 516 428 310 2,265 22.8% 55.4%
4着 713 850 917 8,550 8.3% 29.0%
4着 238 221 226 1,748 13.6% 39.2%
4着 578 537 444 3,508 16.5% 44.4%
5着 424 511 684 7,607 5.6% 21.3%
5着 131 174 160 1,597 8.2% 29.1%
5着 521 573 555 4,479 11.6% 36.8%
6着 265 322 407 6,353 4.2% 15.6%
6着 80 86 120 1,277 6.3% 22.4%
6着 457 486 506 4,724 9.7% 30.7%
7着 182 243 313 5,779 3.1% 12.8%
7着 41 65 67 1,218 3.4% 14.2%
7着 400 442 483 5,185 7.7% 25.6%
8着 113 167 221 5,152 2.2% 9.7%
8着 30 40 56 1,197 2.5% 10.5%
8着 332 348 399 5,517 6.0% 19.6%
9着 78 110 139 4,253 1.8% 7.7%
9着 19 33 43 946 2.0% 10.0%
9着 293 354 350 5,920 4.9% 16.8%
10着以下 109 166 202 11,630 0.9% 4.1%
10着以下 43 69 81 4,376 1.0% 4.4%
10着以下 871 1,128 1,394 38,336 2.3% 8.9%
未勝利除く
前走着順 前々走比 今回1着 今回2着 今回3着 出走件数 勝率 複勝率
2着 2,658 2,265 1,963 16,762 15.9% 41.1%
2着 829 621 441 3,448 24.0% 54.8%
2着 0 0 0 0 0.0% 0.0%
3着 1,613 1,630 1,559 14,848 10.9% 32.3%
3着 427 383 327 2,654 16.1% 42.8%
3着 539 483 366 2,872 18.8% 48.3%
4着 1,097 1,166 1,262 13,410 8.2% 26.3%
4着 271 246 237 2,250 12.0% 33.5%
4着 751 633 569 4,793 15.7% 40.7%
5着 717 869 978 12,159 5.9% 21.1%
5着 148 193 202 2,075 7.1% 26.2%
5着 688 668 694 6,279 11.0% 32.6%
6着 519 656 713 11,075 4.7% 17.0%
6着 118 134 157 1,993 5.9% 20.5%
6着 680 715 761 7,666 8.9% 28.1%
7着 360 474 531 10,021 3.6% 13.6%
7着 90 110 106 1,880 4.8% 16.3%
7着 634 682 691 8,656 7.3% 23.2%
8着 236 312 399 8,619 2.7% 11.0%
8着 68 73 84 1,758 3.9% 12.8%
8着 605 662 678 9,666 6.3% 20.1%
9着 192 238 294 7,235 2.7% 10.0%
9着 52 58 65 1,539 3.4% 11.4%
9着 519 609 662 10,152 5.1% 17.6%
10着以下 309 454 508 17,779 1.7% 7.1%
10着以下 128 142 189 6,519 2.0% 7.0%
10着以下 2,120 2,563 2,966 65,426 3.2% 11.7%

(図表485-2)まとめ過ぎの失敗例2(同じデータを用いても真逆の結論を導き出す)
前々走比 今回1着 今回2着 今回3着 出走件数 勝率 複勝率
13,132 13,640 13,788 181,479 7.2% 22.3%
4,059 3,677 3,309 41,698 9.7% 26.5%
10,504 11,311 11,828 185,444 5.7% 18.1%
前々走比 今回1着 今回2着 今回3着 出走件数 勝率 複勝率
↑+→ 17,191 17,317 17,097 223,177 7.7% 23.1%
10,504 11,311 11,828 185,444 5.7% 18.1%
(SiriusA+B)

ブログ アーカイブ