2024年9月1日日曜日

第482夜 馬貴族は安くてオイシイ?


▼高貴な生まれ?
人気にまつわる考察は、わたしから見ればとても大切な研究なのだが、副産物として、このブログのネタになるものもある。
同じサラブレッドでも、人間で言えば「銀の匙をくわえて生まれた」ような馬もいれば、そうした背景もなく根性で上がってくる馬もいる。
人気が人気を呼ぶ現象は、馬券市場でよく見かけるから、的中率は高い半面、回収率となると低いだろう、というのが大方の見立てであろう。
ところが、必ずしもそうとは言い切れない結果が出てきたのである。
現役もいるので具体名を出せないが、
・超一流の厩舎
・超一流の生産者
・超一流の種牡馬(父馬)
・超一流の肌馬(母馬)
・超一流の馬主
5項目で競走馬をランク付けしたら、たいへん興味深かった。
どこで線引きするかは人それぞれだが、わたしの基準で5項目を満たす馬(この記事ではこれを「ランク5」と呼ぶことにする。項目を満たした数=ランクとする
)は僅かで、2011-2023年に中央競馬平地競走に出走した2009年生まれ以降の馬のうち94頭しかいない。

超エリート馬である。
馬貴族、いや、もはや馬王族だろ(なんだそりゃ)
この期間での成績は1,078225勝で、勝率は20.9%だった。
1
勝以上した馬は69頭で、勝ち上がり率は73%に達し、だいたい3割ちょっと勝ち上がる平均と比較すれば驚異的な数字である。
そして、勝ち馬の単勝オッズの合計は1,092.4倍で、単勝回収率は101.3%だったのだ。
サンプルが少ないとはいえ、僅かに100%を超えた。
これほどの回収率を叩き出すとは思いもしなかった。

厩舎は、引退した藤沢和雄調教師など、この期間に350勝以上挙げた24厩舎とした。
生産者は頭数で考え、ご存知の大規模生産者上位ふたつとした。
種牡馬も産駒頭数で考え、この期間に800頭以上出走させたディープインパクトら9頭とした。
母馬は、母馬自身が中央競馬平地競走で1億円以上稼いだ534頭としたが、賞金は開催年により上下動することについては考慮しなかった。また、この534頭の仔に、米国産馬1,067頭を加えた。ただし、米国産馬は日本の種牡馬でないため、ランク5の馬はいない。
馬主も頭数で考え、この期間に800頭以上出走させた7馬主とした。5つがクラブ馬主で、個人の場合親子など一族で所有を分けるケースは考慮していない。
なお、途中で馬主が代わったり、転厩したりしてランク5でなくなるケースもある。
最終的に、ランク4またはランク3になった馬は15頭いる。
逆に、途中でランク5になった馬は4頭いた。
1,078
戦は、ランク5で出走したものに限っている。

▼基本的にはエリートほど人気先行
このように「ランク5の超エリート馬は人気が集中して儲からないだろう」という予測は外れたのである。
馬券は安そうに見えて、結構美味しい。
念のため、オッズの逆数で簡易的に支持率を調べたら、勝率>支持率で期待以上に走っていることが裏付けられた。
直近の競走成績が振るわず、人気を下げていることも少なくない。
もちろん、大きい馬券が当たっていることもあるので、回収率100%超えは出来過ぎだが、勝率が支持率を超えており、人気以上に走っていることに変わりはない。

それに比べると、「超」の付かないもののかなりのエリートであるランク4やランク3が過剰人気気味である。
人気すなわち支持率ほど勝っていない。
当然、回収率も良くない。
これが、わたしたちの常識的な感覚だろう。
では、馬貴族(まだ言うか)たるランク5馬は、なぜ回収率が良いのか。
たまたま集計期間中だけ良かったのか。
謎である。
謎だが、エリート過ぎて単勝を買わない人が増え、結果としてオッズが少し甘くなるのではないか、などと想像してみたりする。

貴方もエリート馬を独自に探してみてはいかがだろうか。
思いもよらない美味しい馬券が見つかる可能性がある。
(SiriusA+B)
(
図表482-1)ランク別勝率・単勝回収率・平均支持率(2011-2023年中央競馬平地競走)

ランク 勝利回数 出走回数 勝率 単勝回収率 平均支持率
ランク5 225 1,078 0.209 1.013 0.183
ランク4 1,243 8,725 0.142 0.722 0.152
ランク3 3,659 28,765 0.127 0.750 0.129
ランク2 6,389 62,887 0.102 0.758 0.104
ランク1 10,358 133,513 0.078 0.769 0.078
ランク0 21,440 378,593 0.057 0.704 0.056


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