▼高貴な生まれ?
人気にまつわる考察は、わたしから見ればとても大切な研究なのだが、副産物として、このブログのネタになるものもある。
同じサラブレッドでも、人間で言えば「銀の匙をくわえて生まれた」ような馬もいれば、そうした背景もなく根性で上がってくる馬もいる。
人気が人気を呼ぶ現象は、馬券市場でよく見かけるから、的中率は高い半面、回収率となると低いだろう、というのが大方の見立てであろう。
ところが、必ずしもそうとは言い切れない結果が出てきたのである。
現役もいるので具体名を出せないが、
・超一流の厩舎
・超一流の生産者
・超一流の種牡馬(父馬)
・超一流の肌馬(母馬)
・超一流の馬主
の5項目で競走馬をランク付けしたら、たいへん興味深かった。
どこで線引きするかは人それぞれだが、わたしの基準で5項目を満たす馬(この記事ではこれを「ランク5」と呼ぶことにする。項目を満たした数=ランクとする)は僅かで、2011-2023年に中央競馬平地競走に出走した2009年生まれ以降の馬のうち94頭しかいない。
超エリート馬である。
馬貴族、いや、もはや馬王族だろ(なんだそりゃ)。
この期間での成績は1,078戦225勝で、勝率は20.9%だった。
1勝以上した馬は69頭で、勝ち上がり率は73%に達し、だいたい3割ちょっと勝ち上がる平均と比較すれば驚異的な数字である。
そして、勝ち馬の単勝オッズの合計は1,092.4倍で、単勝回収率は101.3%だったのだ。
サンプルが少ないとはいえ、僅かに100%を超えた。
これほどの回収率を叩き出すとは思いもしなかった。
厩舎は、引退した藤沢和雄調教師など、この期間に350勝以上挙げた24厩舎とした。
生産者は頭数で考え、ご存知の大規模生産者上位ふたつとした。
種牡馬も産駒頭数で考え、この期間に800頭以上出走させたディープインパクトら9頭とした。
母馬は、母馬自身が中央競馬平地競走で1億円以上稼いだ534頭としたが、賞金は開催年により上下動することについては考慮しなかった。また、この534頭の仔に、米国産馬1,067頭を加えた。ただし、米国産馬は日本の種牡馬でないため、ランク5の馬はいない。
馬主も頭数で考え、この期間に800頭以上出走させた7馬主とした。5つがクラブ馬主で、個人の場合親子など一族で所有を分けるケースは考慮していない。
なお、途中で馬主が代わったり、転厩したりしてランク5でなくなるケースもある。
最終的に、ランク4またはランク3になった馬は15頭いる。
逆に、途中でランク5になった馬は4頭いた。
1,078戦は、ランク5で出走したものに限っている。
▼基本的にはエリートほど人気先行
このように「ランク5の超エリート馬は人気が集中して儲からないだろう」という予測は外れたのである。
馬券は安そうに見えて、結構美味しい。
念のため、オッズの逆数で簡易的に支持率を調べたら、勝率>支持率で期待以上に走っていることが裏付けられた。
直近の競走成績が振るわず、人気を下げていることも少なくない。
もちろん、大きい馬券が当たっていることもあるので、回収率100%超えは出来過ぎだが、勝率が支持率を超えており、人気以上に走っていることに変わりはない。
それに比べると、「超」の付かないもののかなりのエリートであるランク4やランク3が過剰人気気味である。
人気すなわち支持率ほど勝っていない。
当然、回収率も良くない。
これが、わたしたちの常識的な感覚だろう。
では、馬貴族(まだ言うか)たるランク5馬は、なぜ回収率が良いのか。
たまたま集計期間中だけ良かったのか。
謎である。
謎だが、エリート過ぎて単勝を買わない人が増え、結果としてオッズが少し甘くなるのではないか、などと想像してみたりする。
貴方もエリート馬を独自に探してみてはいかがだろうか。
思いもよらない美味しい馬券が見つかる可能性がある。
(SiriusA+B)
(図表482-1)ランク別勝率・単勝回収率・平均支持率(2011-2023年中央競馬平地競走)
ランク | 勝利回数 | 出走回数 | 勝率 | 単勝回収率 | 平均支持率 |
ランク5 | 225 | 1,078 | 0.209 | 1.013 | 0.183 |
ランク4 | 1,243 | 8,725 | 0.142 | 0.722 | 0.152 |
ランク3 | 3,659 | 28,765 | 0.127 | 0.750 | 0.129 |
ランク2 | 6,389 | 62,887 | 0.102 | 0.758 | 0.104 |
ランク1 | 10,358 | 133,513 | 0.078 | 0.769 | 0.078 |
ランク0 | 21,440 | 378,593 | 0.057 | 0.704 | 0.056 |