2024年9月15日日曜日

第484夜 ビリーに気を付けろ!(後編)


▼その後、ビリーたちは勝つ馬なのか、そのでないのか
前夜から続く。
この記事では、ビリなってからその後走って1勝以上した馬をV馬、その後走ったけれども勝てなかった馬をN馬と呼ぶ。

ビリになった馬が、単に実力不足か、力を出し切っていなかったか、を考察している。
たとえビリになっても将来勝てる馬が15.8%もいることが分かっている。
同じビリでも、見込みがあるのかどうか知りたいのだ。
今夜はその判断に近づくために、ビリになった馬のうちV馬がどれくらい含まれているかを調べていく。
申しあげたとおり、15.8%いるので、これよりも多ければ見込みのある馬の比率が高い、少なければ見込みのある馬が少ない、ということになる。

最初にクラス別で分けてみた。
実頭数で18,129頭のビリすなわち最下位になった馬を、「最初に最下位になったクラス別」に分けたのが図表484-1である。
クラス別にすると、「金の鉱脈」には偏りがあることが分かるのである。
かなりはっきりした傾向を示している。

同歳戦では2歳・3歳のオープンクラスで初めてビリになった馬のうち、2歳で31.1%3歳では実に49.6%が、その後1勝以上するのである。
ご承知のとおり、古馬戦になると降級する馬も多く、一転して実力上位になるのだ。
2
31勝クラスでも高い割合でV馬がいる。
一方で、新馬戦や未勝利戦でビリになった馬は、その後1勝もしないN馬の割合が増える。
このあたりのビリは、実力の問題が大きいのだろう。
さらに、図表484-2では芝とダートに分けたが、ダートは絶望的な数字、V馬が極めて少ないという結果になった。
若馬たちは初勝利を求めて中央4場・北海道2場→第三場、中長距離→短中距離、芝→ダート、と転戦していく。
ダートで(ここでは示していないが特にダート短距離で)ビリになると、後がないのだ。
この要因もある。
もちろん、実力を発揮できなかっただけの馬もいる。
例えば、前夜に触れたインカンテーション号は、2歳新馬戦()でビリだった。
図表484-1V馬の割合12.9%、図表484-2の芝14.0%に入っている。
インカンテーション号もダートに転向して花開いた。

古馬戦では、クラスによる特徴はあまりない。
全体的に言えることは、概ね平均の15.8%を上回っており、古馬戦でのビリは実力不足より不調が原因という馬が少なくないだろうと推測できることだ。
古い時代には「古馬は調子」ということばを聞いたが、出走馬間の実力差が小さいのでちょっとしたことで着順が入れ替わっているのだろう。
次走以降の期待馬はソコソコ存在するが、簡単に見つからない、ということか。

(
図表484-1)最初にビリになったクラス別その後の勝利馬の割合
最初の最下位クラス V馬 N馬 合計 V馬の割合
2歳新馬 321 2,177 2,498 12.9%
2歳未勝利 281 2,077 2,358 11.9%
2歳1勝クラス 69 231 300 23.0%
2歳オープン 90 199 289 31.1%
3歳新馬 22 491 513 4.3%
3歳未勝利 242 3,812 4,054 6.0%
3歳1勝クラス 319 729 1,048 30.4%
3歳オープン 249 253 502 49.6%
3歳上1勝クラス 455 1,917 2,372 19.2%
3歳上2勝クラス 220 763 983 22.4%
3歳上3勝クラス 56 290 346 16.2%
3歳上オープン 55 276 331 16.6%
4歳上1勝クラス 181 1,063 1,244 14.5%
4歳上2勝クラス 173 565 738 23.4%
4歳上3勝クラス 66 242 308 21.4%
4歳上オープン 45 200 245 18.4%
合計 2,844 15,285 18,129 15.7%

(図表484-2)最初にビリになったクラス別その後の勝利馬の割合(芝・ダート別)
最初の最下位クラス 芝ダ V馬 N馬 合計 V馬の割合
2歳新馬 266 1,630 1,896 14.0%
2歳新馬 55 547 602 9.1%
2歳未勝利 200 1,251 1,451 13.8%
2歳未勝利 81 826 907 8.9%
2歳1勝クラス 46 151 197 23.4%
2歳1勝クラス 23 80 103 22.3%
2歳オープン 89 197 286 31.1%
2歳オープン 1 2 3 33.3%
3歳新馬 14 215 229 6.1%
3歳新馬 8 276 284 2.8%
3歳未勝利 106 1,516 1,622 6.5%
3歳未勝利 136 2,296 2,432 5.6%
3歳1勝クラス 163 389 552 29.5%
3歳1勝クラス 156 340 496 31.5%
3歳オープン 211 222 433 48.7%
3歳オープン 38 31 69 55.1%
3歳上1勝クラス 200 860 1,060 18.9%
3歳上1勝クラス 255 1,057 1,312 19.4%
3歳上2勝クラス 118 384 502 23.5%
3歳上2勝クラス 102 379 481 21.2%
3歳上3勝クラス 37 169 206 18.0%
3歳上3勝クラス 19 121 140 13.6%
3歳上オープン 42 196 238 17.6%
3歳上オープン 13 80 93 14.0%
4歳上1勝クラス 78 399 477 16.4%
4歳上1勝クラス 103 664 767 13.4%
4歳上2勝クラス 78 264 342 22.8%
4歳上2勝クラス 95 301 396 24.0%
4歳上3勝クラス 37 135 172 21.5%
4歳上3勝クラス 29 107 136 21.3%
4歳上オープン 30 136 166 18.1%
4歳上オープン 15 64 79 19.0%

▼昇級馬・降級馬
2019
年春開催までの降級制度を多分に含んでいるので参考に留めていただきたいが、図表484-3は前走で走ったクラス別に仕分けたものである。
昇級はまだしも、降級してもビリになる馬は結構いるようだ。
(
なお、3歳オープンに2勝クラスや3勝クラスからの「降級組」がいるが、これは3歳古馬戦から転戦したもので、例えば菊花賞に出るケースなどがある)
細分化が進んでいるので、ほんとうに参考程度だが、オープンクラスから条件クラスに戻ってきた馬は、たとえビリになってもそのご活躍する割合が高い、という傾向ならあるようだ。
3
歳戦ではオープンに出ていた馬が、古馬になって条件戦になると、いずれ巻き返す。
反対に、昇級初戦でビリになった馬も、いずれ勝ち上がってくる割合はそれなりにあることも分かる。

ほかにも、馬体重や性別、距離、出走回数などいろいろと探ってみたが、傾向はあるものの、これといったV馬を選りすぐる決め手になるものは見つけられなかった。
個々の馬をよく見ていくしかない。

(
図表484-3)前走クラス別その後の勝利馬の割合

最下位になったクラス 前走クラス V馬 N馬 合計 V馬の割合
2歳新馬 321 2,177 2,498 12.9%
2歳未勝利 オープン 0 18 18 0.0%
2歳未勝利 1勝クラス 0 3 3 0.0%
2歳未勝利 新馬未勝利 320 2,695 3,015 10.6%
2歳1勝クラス オープン 22 55 77 28.6%
2歳1勝クラス 1勝クラス 16 114 130 12.3%
2歳1勝クラス 新馬未勝利 40 118 158 25.3%
2歳オープン オープン 25 79 104 24.0%
2歳オープン 1勝クラス 8 21 29 27.6%
2歳オープン 新馬未勝利 58 126 184 31.5%
3歳新馬 22 491 513 4.3%
3歳未勝利 オープン 0 3 3 0.0%
3歳未勝利 1勝クラス 1 4 5 20.0%
3歳未勝利 新馬未勝利 264 4,753 5,017 5.3%
3歳1勝クラス オープン 31 74 105 29.5%
3歳1勝クラス 1勝クラス 211 645 856 24.6%
3歳1勝クラス 新馬未勝利 142 324 466 30.5%
3歳オープン オープン 109 149 258 42.2%
3歳オープン 3勝クラス 2 1 3 66.7%
3歳オープン 2勝クラス 10 9 19 52.6%
3歳オープン 1勝クラス 105 103 208 50.5%
3歳オープン 新馬未勝利 44 55 99 44.4%
3歳上1勝クラス オープン 12 29 41 29.3%
3歳上1勝クラス 2勝クラス 20 43 63 31.7%
3歳上1勝クラス 1勝クラス 519 2,890 3,409 15.2%
3歳上1勝クラス 新馬未勝利 92 567 659 14.0%
3歳上2勝クラス オープン 28 53 81 34.6%
3歳上2勝クラス 3勝クラス 10 20 30 33.3%
3歳上2勝クラス 2勝クラス 212 1,390 1,602 13.2%
3歳上2勝クラス 1勝クラス 60 207 267 22.5%
3歳上2勝クラス 新馬未勝利 1 7 8 12.5%
3歳上3勝クラス オープン 15 34 49 30.6%
3歳上3勝クラス 3勝クラス 73 544 617 11.8%
3歳上3勝クラス 2勝クラス 19 77 96 19.8%
3歳上3勝クラス 1勝クラス 0 4 4 0.0%
3歳上オープン オープン 84 479 563 14.9%
3歳上オープン 3勝クラス 11 43 54 20.4%
3歳上オープン 2勝クラス 0 11 11 0.0%
3歳上オープン 1勝クラス 0 1 1 0.0%
4歳上1勝クラス オープン 2 7 9 22.2%
4歳上1勝クラス 2勝クラス 2 12 14 14.3%
4歳上1勝クラス 1勝クラス 251 1,781 2,032 12.4%
4歳上1勝クラス 新馬未勝利 18 262 280 6.4%
4歳上2勝クラス オープン 5 9 14 35.7%
4歳上2勝クラス 3勝クラス 1 6 7 14.3%
4歳上2勝クラス 2勝クラス 240 1,126 1,366 17.6%
4歳上2勝クラス 1勝クラス 42 145 187 22.5%
4歳上2勝クラス 新馬未勝利 0 3 3 0.0%
4歳上3勝クラス オープン 6 15 21 28.6%
4歳上3勝クラス 3勝クラス 87 480 567 15.3%
4歳上3勝クラス 2勝クラス 18 60 78 23.1%
4歳上3勝クラス 1勝クラス 0 1 1 0.0%
4歳上オープン オープン 65 393 458 14.2%
4歳上オープン 3勝クラス 10 32 42 23.8%
4歳上オープン 2勝クラス 0 5 5 0.0%
4歳上オープン 1勝クラス 0 2 2 0.0%

▼穴馬バイアス
勝負づけ、ということばがある。
今回の調査をして、改めて、下位の成績ほど真に受けてはいけないのだ、ということを感じた。
前夜に、下位成績まで序列化しないとか、参考外にするとかいったレースもありそうだと申し上げたとおり、最下位だからといって軽んじては痛い目に合うかもしれないということがよく分かった。
多少の実力差も、ゲートが開いて走り出しさえすれば、どの馬にも勝つチャンスはあるのだ。
もし、V馬とN馬の判別方法が分かったら、大事にしてほしい。

最後に、残念なお知らせである。
実頭数ベースでビリになった馬のその後の成績を紹介したが、V馬とN馬を合わせてその後の勝率は4.1%である(前夜の図表483-1)
新たにご紹介するのは、その後の出走の単勝オッズから導き出した支持率平均である。
実は、これも4.1%である。
いつものように簡易的に出したものであるが、細かく見ても4.06%4.07%で差異は小さくほとんど同じなのである。
ご存知の人もいようが、人気薄に賭けたがる「穴馬バイアス」というものがある。
誤差レベルだが、勝率<支持率となっていた。
大目に見ても、勝率=支持率である。
わたしたちは、恐ろしいことに、自分たちが作り出したオッズが人気の薄いところまで正確であることが分かった。
人気馬にもバイアスがかかっており、人気薄にもバイアスが(バイアスとまではいかないにしても、かなりの精度で)かかっているのだ。
オッズが高いと「穴馬だ」と嬉々として賭ける人がいるが、それは穴馬ではなく、ただの人気薄なのである。
オッズに見合った、或いはオッズよりやや小さめの勝率しか期待できないということである。
人気馬も、人気薄もだめなのだ。
上級を目指す人に言っておきたい。
ということは、バイアスがかかっていないところはどこ?

(SiriusA+B)

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