2026年2月1日日曜日

第547夜 距離短縮の効果

着差+距離
前夜に続き、着差に関する話題である。
調教師(或いは有力な馬主や生産者の意向もあるだろうけれど)は、管理馬のレース振りや中間の調教状況から次の出走条件を決断する。
目標レースまでの日程を考え、無理をすることもあるかもしれないが、概ね、管理馬に適した条件を選ぶ。
相手関係も考慮しつつ、勝ちやすいレースを探していると思われる。
ずば抜けた能力馬など滅多にいないのだ。
距離を伸ばしたり短かくしたり、第3場に遠征したりして勝つ可能性を上げようとする。
特に、前走で着差が開いたりすれば、同条件の出走を躊躇い、いろいろと変更を試みる。
わたしは馬のことは分からないが、前半は良かったものの後半失速すれば距離を短く、スタートでついていけなかったが最後の直線で良いところを見せれば距離延長、次は勝ち敗けになると思えば同条件、といった傾向はあるようだ。
図表547-1は、芝ダート替わりではない場合の今走と前走の距離増減率別に成績を一覧したものだ。
やや大括りにしている。
前走芝1600から今走1800なら1800/1600で増減率1.1に仕分ける。
1
がほぼ同距離、1超なら距離延長、1未満なら距離短縮である。
(図表547-1)前走距離比別成績(2012-2024年中央競馬平地競走)
全体
距離前走比 勝利回数 出走回数 勝率 勝利回数 出走回数 勝率 勝利回数 出走回数 勝率
1.5 92 4,375 0.021 48 1,734 0.028 44 2,641 0.017
1.4 171 5,267 0.032 86 2,210 0.039 85 3,057 0.028
1.3 928 19,876 0.047 618 12,328 0.050 310 7,548 0.041
1.2 2,090 37,241 0.056 914 14,898 0.061 1,176 22,343 0.053
1.1 5,330 69,640 0.077 3,057 38,736 0.079 2,273 30,904 0.074
1.0 20,843 243,555 0.086 9,660 112,494 0.086 11,183 131,061 0.085
0.9 6,411 81,530 0.079 3,364 40,563 0.083 3,047 40,967 0.074
0.8 2,162 32,689 0.066 1,244 17,570 0.071 918 15,119 0.061
0.7 365 7,962 0.046 151 3,020 0.050 214 4,942 0.043
0.6 77 1,769 0.044 38 881 0.043 39 888 0.044
0.5 4 174 0.023 4 137 0.029 0 37 0.000

今走の成績は、
同条件>距離短縮>距離延長
となっている。
競走距離は無闇に変えないほうがいい、と結論付けたくなる。
ところがこれはちょっとしたマジックである、と考えることもできる。
図表547-2である。

(図表547-2)距離前走比10%延長、増減なし、10%短縮で区分した成績
芝距離10%延長 芝同距離 芝距離10%短縮 ダ距離10%延長 ダ同距離 ダ距離10%短縮
前走着差0秒0以下 0.139 0.147 0.158 0.106 0.134 0.133
前走着差0秒1 0.158 0.154 0.185 0.193 0.193 0.188
前走着差0秒2 0.153 0.143 0.167 0.201 0.176 0.188
前走着差0秒3 0.124 0.117 0.122 0.152 0.151 0.164
前走着差0秒4 0.095 0.097 0.110 0.139 0.127 0.145
前走着差0秒5 0.084 0.083 0.094 0.115 0.119 0.118
前走着差0秒6 0.079 0.073 0.081 0.114 0.107 0.117
前走着差0秒7 0.062 0.054 0.080 0.101 0.101 0.098
前走着差0秒8 0.056 0.061 0.071 0.081 0.082 0.090
前走着差0秒9 0.046 0.049 0.058 0.066 0.075 0.084
前走着差1秒0 0.040 0.041 0.052 0.061 0.070 0.084
前走着差1秒1 0.052 0.043 0.045 0.068 0.062 0.065
前走着差1秒2 0.044 0.035 0.046 0.052 0.053 0.063
前走着差1秒3 0.035 0.038 0.038 0.050 0.049 0.055
前走着差1秒4 0.039 0.029 0.034 0.053 0.045 0.047
前走着差1秒5 0.032 0.031 0.032 0.035 0.040 0.047
前走着差1秒6 0.035 0.028 0.039 0.043 0.043 0.042
前走着差1秒7 0.024 0.018 0.032 0.047 0.038 0.045
前走着差1秒8 0.024 0.029 0.021 0.035 0.033 0.042
前走着差1秒9 0.015 0.028 0.016 0.028 0.035 0.035
前走着差2秒0 0.017 0.022 0.018 0.016 0.028 0.039
前走着差2秒1 0.014 0.027 0.026 0.026 0.029 0.035
前走着差2秒2 0.025 0.019 0.029 0.016 0.030 0.038
前走着差2秒3 0.037 0.023 0.021 0.026 0.018 0.028
前走着差2秒4 0.024 0.015 0.020 0.037 0.023 0.033
前走着差2秒5 0.005 0.024 0.035 0.015 0.020 0.030
前走着差2秒6 0.006 0.019 0.027 0.023 0.017 0.034
前走着差2秒7 0.000 0.016 0.041 0.017 0.022 0.032
前走着差2秒8 0.000 0.045 0.006 0.018 0.021 0.030
前走着差2秒9 0.020 0.012 0.035 0.036 0.018 0.019
前走着差3秒以上 0.016 0.020 0.014 0.015 0.016 0.018
全体 0.079 0.086 0.083 0.074 0.085 0.074

少し精密に、前走着差別という条件を加えてみた。
これで同じ着差でグループ分けしたうえで、距離延長、同条件、短縮を比較すると、実は距離短縮が優勢だという結果が出た。
例えば、前走着差が01である場合、今走を同条件で出走するより少し短縮した距離に出走するほうが、僅かながら成績が良い。
この傾向は芝で顕著である。
ダートでは同条件の出走が良いところもあるが、傾向としては短縮が優勢だ。
必ずしも同条件が最良というわけではないのである。

距離適性は手探り
芝ダート替わりや、増減率1.2以上或いは0.8以下は大きな変更なので、このような変更では勝率は高くない。
戸惑いがあるかもしれないし、求められるスピードが違うからかもしれない。
しかし、以前から疑問だったのだが、10%程度の距離の調整は果たして「適性」ばかりなのだろうか。
もちろん、1200m2000m3000mでは適性は大きな理由だろう。
感覚的には短距離、中距離、長距離程度の区切りであれば、適性は分かる。
だが、1200m1400m、或いは1600m1800mを並べたとき、わたしたちは距離適性のひと言で片付けられるほどスッキリしたものなのか。
調教師や馬の声を代弁する騎手さえ、悩むものだとも聞く。
すべてという訳ではないだろうが、多くは陣営の、経験に基づく決断なのだろう。

図表547-3は、3勝以上した馬の1勝目、2勝目、3勝目の距離(芝ダート別)を比較したものである(2009年産駒以降、2024年末までの中央競馬平地競走)

(図表547-3)3勝以上馬の各勝利距離差異組合せ別成績
1勝目・2勝目距離比較 2勝目・3勝目距離比較 1勝目・3勝目距離比較 頭数 比率
同距離 同距離 同距離 1,464 25%
同距離 異なる 異なる 1,058 18%
異なる 同距離 異なる 1,441 25%
異なる 異なる 同距離 677 12%
異なる 異なる 異なる 1,180 20%
5,820

3
勝とも同じ距離だった馬は、5,820頭のうち25%4分の1にすぎない。
2
勝目と3勝目のみ同じ馬も25%1勝目と2勝目のみ同じ馬は18%1勝目と3勝目のみ同じ馬は12%
以上は3勝のうち、ふたつで同じ距離だった馬が55%であるということだ。
これに対し、3勝とも異なる距離だった馬が20%いる。
5
頭に1頭の割合である。
中には1勝目が2000m芝、2勝目が1600m芝、3勝目が1200m芝という馬もいるから、陣営の決断に至る合意形成はたいへんだったろうと想像する。
結果を出せなかった馬たちも同様に試行錯誤していることは間違いない。

翻って、わたしたち馬券投票者は、距離適性を論じることができるほど情報・根拠を持っているのだろうか。
陣営でさえ悩みに悩むのだ。
わたしには自信が無い。
だから、調教師先生はじめ陣営の判断に委ねる、すなわち、出走する距離こそが最適なのだと信じている。
分かっているのは、少々の距離短縮は同距離での出走と差がないか、むしろやや勝ちやすそうだ、ということくらいだ。
距離適性というより、出走馬間の力関係がどう変化するのか、という視点で考える。

(SiriusA+B)

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