▼タイム分析に疑問を呈す!?
第6夜、第7夜と続けてタイム分析の話をしたので、この話題はいかがなものかと思ったが、忘れないうちに記しておくことにした。
西田式スピード指数の登場以来、持ち時計は予想法の重要な道具として利用されてきたことは周知の事実である。それまでになかった、少なくとも世間に知られていなかった予想ツールであり、競馬予想に革命をもたらしたことは間違いないだろうと思う。
今夜の話題は、正確に言うと、反旗を翻すのではなく、タイム分析をする人たちに改めて読み返してもらいたいと思ったからだ。世間のブログなどを読んでみると、スピード指数に限らず、指数を算出するタイプの予想法では、指数を絶対と思っている人も少なくないように思える。そのあたりの警鐘と、タイム分析の根本的な問題点について触れることにする。
▼スピード指数
西田式スピード指数の単行本は1992年に発行された。雑誌「競馬 最強の法則」に連載されたものをまとめたものだそうだ。その当時の読者でなかったので真偽は確かめていない。この西田式スピード指数は、アンドリュー・ベイヤー氏の「勝ち馬を探せ」に着想を得て独自に進化させた理論とされている。
スピード指数は予め算出した基準タイムと各馬のタイムのずれを公式で計算することによって、実力を比較する手段にしようとするものである。
優れているのは、基本的な指数の算出方法が斬新だっただけでなく、距離指数、馬場指数、斤量指数など、異なる競走を比較するために必要な補正手段を提示したことにある。さらに、騎手の乗り替わり、スローペース、成長曲線など、指数をベースにしつつ、実践するためのヒントも記されている。
▼指数の算出が目的ではないこと
この指数の問題を挙げれば「美しすぎる」ことである。過去走から、どんな距離でも指数がきれいに並べられ、あたかも、すべて条件をそろえられたように錯覚してしまうことだ。指数の算出が目的となってしまい、その背景を考えなくなる。前走は芝で出された指数なのに、ダート戦でそのまま使用してしまうといったことをしてしまう。1年も前の若駒の時代に出した数字に成長を加味しないで検討してしまう、といった類のことは誰しも経験しているのではないだろうか。指数の高いものが勝利することも少なくないので、こうした数値の背景の分析を怠る要因になっている気がする。
いくらきれいに並べても、やはり異なる条件で出された指数なのである。当たらないのは算出方法に問題があるからではなく、精密でないからでもなく、背景を考えたら同じ指数で走るかどうか考慮していないからなのだ。指数を算出したら、そこが馬券検討のスタート地点だということである。
▼タイムが絶対ではない
もう一つ、根本的な問題点がある。皆さんは重要な思い違いをしていないだろうか。タイム指数をベースにした予想を立てている人は、競走を「どれほど速く走れるか」とみているのではないかという疑問である。わたしも長い間、初期の目的を忘れ「本末転倒」になっていた。走破タイムは結果に過ぎず、1着馬が一番早く走っただけである、ということである。
競馬は、どんなタイムで走ろうが勝ちは勝ちなのだ。全力で走ろうが、手を抜こうが、勝ちさえすればよいのである。記録ではなく、勝負だ。一定の速さで走ると賞金が出たり昇級するのであれば、競馬は違った世界になっていたであろう。
わたしたちは忘れてはならない。「勝負強さ」を測る指標がないから、走破タイムで代替しているだけだということを。このあたりは人間のフルマラソンをイメージしてもらえればわかるだろうか。五輪ではタイムではなく金メダルを狙おうとする、あの戦い方である。
したがって、精緻なスピード指数を出せば的中率が上がるということはあまり考えられない。勝負が優先だからである。西田式スピード指数の本の中でも、第1章には、「競馬はタイムを競うものではないが」と断ったうえで走破タイムの重要性を説いている。
わたしたちは忘れてはならない。「勝負強さ」を測る指標がないから、走破タイムで代替しているだけだということを。このあたりは人間のフルマラソンをイメージしてもらえればわかるだろうか。五輪ではタイムではなく金メダルを狙おうとする、あの戦い方である。
したがって、精緻なスピード指数を出せば的中率が上がるということはあまり考えられない。勝負が優先だからである。西田式スピード指数の本の中でも、第1章には、「競馬はタイムを競うものではないが」と断ったうえで走破タイムの重要性を説いている。
▼きちんと最後まで読みましょう
良い本は、最初から最後まできちんと読んだほうがよい。
西田式スピード指数の単行本でも、最後の最後にこんな著者の言葉がある。
「スピード指数は非常に優れた競走馬の能力判定法であるが、巷間言われているような必勝法の類ではない。一人一人が競馬の本質を知り、競馬に真に強くなるための基本的なデータ、資料でしかない」
著者が、本の中で繰り返し述べているように、指数で各馬の情報を揃えただけではだめだということだ。その指数の背景までよく考えなければならない、と。そして、指数がすべてではないのだ、と。スポーツ新聞の指数も手軽で良いが、指数の背景のわからないものに身を委ねるほど、危険なことはないと思う。他人の作った指数で必勝法を見つけたという話を聞いたなら、おそらく重大な錯誤があるか、検証が不十分か、あなたを陥れようとする罠である可能性がある。
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